『a foreign・・・』


前書き。

カルロ×蘭世の異世界編です・・・

なお、カルロ×蘭世以外の絡み(俊でもありません)や レイプ要素が途中含まれます
さらにはカルロ様の神聖なイメージを大きく損ねる表現も含まれると存じます。
それをふまえた上で 大丈夫ですと言う方のみ お進み下さい。
だめかも。。と思われたら 速攻でここから立ち去って下さい。
読後のクレームはご容赦願います。

「冬馬の棺桶へ戻る」

ココに気づかれた方でご感想が有る御方は掲示板ではなくメールにて
もしくはメインページにあるWeb拍手にて
お願いします。

−柚子様イラスト「異国の花」によせて このお話をつくりました−
 晴れてこのお話を完結することが叶い ご報告申し上げましたので
 ここに隠し部屋から地下の通常リンクへ変更いたします・・・

(1) (2) (3)  (4)   (5) (6) (7) (8)  (9) (10)* (11)*(完結)

「冬馬の棺桶へ戻る」

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(1)


・・・ある日、ある都会の真ん中で。

いまどきのご時世らしく、とある日本の会社が外資系会社に合併されることになっていた。
そこの社員達は冷静な行動を心がけつつも、やはり心の動揺は隠せない。
仕事場で休み時間ともなると あちこちで、皆が、自分たちの会社のこれからを案じている。
「・・・どこの国の会社だって? やっぱりアメリカかい?」
「いいや、それが・・ユーロだって」
「へ?」
「ほれ、だからさ、EC加盟国が共同出資している会社なんだってさ」
「へえ〜そんなの聞いたこと無いぞ」
「おい、お前もっと新聞読めよ・・・最近出来たばっかりだけど規模は大きいらしいぜ」

合併計画は着々と進み、やがて、日本人ばかりだったその会社の事務所に、ちらほらと
大柄な異国人が目立ち始める。

そして・・・。



「・・・氏は今日からしばらくこちらに滞在されます。目的は査察でありますから、
 業務内容について問われたときは積極的な対応をお願いいたします」

ある日の職場内朝礼でのひとこま。
部長自ら皆の前に立っての伝達事項であった。
社員は皆自分の席で起立し部長の言葉に耳を傾けている。
部長が紹介している人物の姿はそこには見あたらない。
火急の用事で席を外しているらしかった。
「こんどはどんな人かしらねぇ・・」
「こないだの コメディ俳優みたいなのはごめんだわぁ」
「そうよ!外人さんなんだから、もっと格好イイ人を期待しちゃうわよねぇー」
(・・・)
同僚達のひそひそ声が耳に入ってくる。
(きっと、昨日の あの人のことだわ・・・!)
OL蘭世の胸はさっきからドキドキと早鐘をうち続けていた。
手元には昨日自分が”あの人”を手伝ってコピーした書類がある。
それは朝礼の前にそこの社員皆に1部ずつ配られた物と同じものだった。

どきどき、どきどき。
胸の鼓動が周りの人に聞こえやしないかと思うほどだ。
顔もきっと真っ赤に違いない。
書類に目を落とすたびに、頭の中では・・
誰もいない職場に響く自分の睦声。
視線の先でぴくん、ぴくんと弾むストッキングの細いつま先。
そして・・そして。耳に残るあの人の熱い息づかい・・・
蘭世はあわてて自分の表情を隠そうと、後ろでひとつに束ねていた長髪の
大きなバレッタを外し俯いた。さらさら、さらさらとつややかで黒いカーテンが
蘭世の恥ずかしげな顔を皆から隠していく。
(落ち着こう、落ち着かなくちゃ・・!みんなに変に思われちゃう)

「なお、カルロ氏は日本語には卓越しておられるので今回は大丈夫だが、
これからは英語での会話能力も要求されることは言うまでもなく・・」
まだまだ部長の連絡事項は続いている。それも呼び起こされた昨日の記憶にかき消され、
次第に蘭世の耳からは遠く、小さくなっていった。

(昨日の、あの出来事は・・・)

昨日。
蘭世は、彼女らしくなく休日に出勤をしていた。
(明日お買い物に行きたいから、今日早めに片づけとこーっと)
今日の段取りを考えながら、いそいそと事務所のある建物へ向かう。
(・・・あれ?)
建物を見上げると、蘭世の仕事場のある階に明かりがついている。
(今日は私以外誰も出勤しない予定だったのに・・・誰かしら)
蘭世は部長秘書見習いで、雑用も色々こなしている。
各課の勤怠、休日出勤届などもまとめ作業をしているから色々と知っていることが多い。
(まっ、いっかー。行ったら判るよねー ・・来てるのは親会社のお偉いさんかもしれないし。)
蘭世は女子更衣室へはいる。
いつ ふいの客が来ても良いように休日であっても制服に着替える。
そして、元気良くぱたぱた・・・と事務室に入り自分の席に向かった。
(・・・あっ)
席のそばまで来てふと視線を上げると・・・。
古い会社のせいか、つい立てなどはなく一度に見渡せるような広い仕事場の向こうの隅に
見慣れない真新しい机が一つ運び込まれており、そこでノートパソコンを広げる
人影が見えた。
金髪の・・・
やはり・・・親会社から派遣されてきたらしい・・外国人であった。

(あのひと・・・どこかで見たような・・・)
蘭世はじろじろ見るつもりは毛頭なかった。
それでも・・・その男から視線が外せないのだ。
見覚えのある男で、どこで会ったのだろう・・と考え込んでもいたが、
それ以上に彼の放つオーラにとりこまれてしまったようだ。
もうそれは10メートルは離れていそうな距離だったが・・・
遠目にも、その男は涼やかなオーラを放っている。
いつも見慣れているその会社の社員とはそれは明らかに違っていた。
男物のスーツの流行に疎い蘭世だったが、それでも彼が身につけているそれは
明らかに洗練されていて、見慣れた男達のそれとは別格であることを示している。

眼鏡のその奥に、凛々しい瞳が見え隠れしている。
蘭世は思わず今日の仕事も忘れ、ぼぉっと 右手の先で口をおさえ、
その男の姿に釘付けになっていた。

・・・やがて彼もその視線に気づいたようだった。
その男はふいに顔を上げると・・・ばちっ と こちらを見ている娘の視線と目が合った。
その途端、男はスッ、と立ち上がり、つかつか・・とこちらへ向かってくる。
(しまったっ・・・怒られる!?)
蘭世は思わず身をすくめて嵐を待ちかまえた。・・・だがしかし。
至近距離までやってきた彼の口から出たのは穏やかな口調で・・
そして、欧米人とはとても思えないような流暢な日本語であった。
「・・君、丁度いいところへ来た。私を手伝ってくれないか?」

それから1時間。
蘭世とコピー機との戦いが繰り広げられていた。
手伝った仕事、というのは書類数枚を200部コピーし、1部ずつステープラで止めるという、
まあいつものありがちな作業だった。
蘭世はいつも会社でやっている通りに左2カ所止めていると、男が横やりを入れる。
「ステープラは左上に1カ所で十分だ・・針穴が開いて不細工だ。コピーからやり直してくれ」
・・・そして、どんな些細な仕事にも完璧を要求する男であるようだった。
「印刷が薄い。やり直し」
挙げ句の果てに紙が機械に挟まり・・蘭世は半泣きである。
(あーんもういやー!)
誰か助けて・・と思っても、この機械について知っている人物は今、自分しかいない。
必死に過去の記憶をたどってああでもないこうでもないとやりながらなんとか機械の蓋を開け、
薄かったインクを補充し、挟まってる紙をえいえいと取り出していく。
(裏紙がこんなにできちゃったよぉ・・・)
古紙入れに山積みになった今日の遺物を横目に見ながら、再び作業に取りかかる。
・・・そしてさらに1時間後。
それは、漸く完成した。
眼鏡を光らせながら、男はできあがった資料を何部かぱらぱらとめくっては確認していく。
蘭世はその様子を緊張した面もちで見つめている・・・。
「・・・よし」
ようやく、待望の返事が返ってきた。蘭世は嬉しくて思わずにっこり!と満面の笑顔だ。
「よかったあああ・・!お茶入れてきますっ」
蘭世はぱたぱた・・と、また小走りで給湯室へ向かった。

(あー!っもう さんざんだったわぁ〜)
こういった良くある作業でこんなに手こずらされたのは久しぶりだった。
(・・でも、あの人とお話しできちゃったから ま、いっか。)
ちょっとしたことではなかなかへこまない蘭世。

(・・・そういえば・・・)
蘭世はちょっと考えて・・いつも入れるコーヒーをやめ、紅茶に。
そしてティーバックではなく茶葉の缶を開けた。
母、椎羅に教えてもらったコツを思い出しながら、紅茶を淹れた。

「お疲れさまでした。」

蘭世は男の座る席の机にそっと紅茶を置いた。
「・・ありがとう」
その言葉を聞いて、蘭世はほっと胸をなで下ろす。
ただ、男は画面から目を離さないで作業を続けている。
蘭世は・・思い切ってその横顔へ声をかけてみた。
「私・・思いだしたのですが、先週こちらへ会議で来られてましたよね?」
「・・・」
「私、その時もお茶くみしたんでお見かけしたんです」
蘭世がそう言ったところでその男はふいに作業の手を止め、こちらを見た。
視線が合うと、また蘭世はその涼やかな顔に、凛々しい姿にどきっ としてしまう。
(そう、そうよ!それ以前も何度か私見かけてるわ!
 スーツのよく似合う人だなって ぼおっと思っていたっけ・・)
会議でなんとなく見かけたときも今も、きちっとスーツを着こなしている印象は変わらない。
そして、その席で皆がコーヒーを飲む中ただ一人紅茶を頼んで飲んでいたのを覚えていたのだった。
「・・・私も君を覚えているよ。」
「えっ!?」
思いがけない男の返事に蘭世の鼓動は淡い期待と共に更に跳ね上がる。そこへ彼は真顔で答えるのだ。
「椅子の足につまづいていた」
「きゃー!なんて事を覚えてるんですかぁ・・・!」
蘭世はもうがっかりだ。そんな恥ずかしい場面で覚えていられるのは非常に心外だ。
真っ赤な顔で慌てる蘭世を見ながら男は ふっ と楽しそうな表情を一瞬浮かべ、
瞳を伏せティーカップを手に取り口をつける。
そうして実に優雅な仕草で紅茶を飲んでいる。
蘭世はこんなに美しい仕草で紅茶を飲む人物を初めてみたような気がしていた。
「・・・美味しい」
「ありがとうございます!うれしいなっ」
蘭世は真っ赤になって困っていた顔から一変して得意げに、にっこり笑う。
(えへっ がんばっていれてよかった!)
「それじゃ、失礼します。」
蘭世はもう少し男と話がしていたかったが・・・笑顔を残し、その場を離れた。
(さっ 私も自分の仕事しなくっちゃだわ!早く帰ろうー。)
軽い足取りで、蘭世はお盆を返しに給湯室へ向かう。
(・・・)
男はその娘の後ろ姿をじっと見つめていた。


蘭世は給湯室でティーポットを洗っていた。
「ちょっと怖いけど、やっぱり素敵な人だなぁ・・」
水音を立てながら、そんなことを一人つぶやいていた。
(そうだぁーあの人に出したティーカップ、後で片づけに行かなくちゃ。)
そこで蘭世は気が付く。
(あ・・れ。私 あの人の名前聞いてなかった・・)
「ま、いっか。今度誰かに聞こう〜っと」
そのとき、ふいに向こうの方で給湯室の入り口が開き・・閉まる音がした。
(?)
蘭世は一瞬あれ? と思ったが さして気にも留めず、洗い終わったポットを
ふきんで拭いていた。

だが・・
衝立の向こうからこちらへ現れた人影は・・先ほどの外国人だった。
なのに何故か別人のような雰囲気だ。
(!・・なんだろ さっきと印象が・・・ちがう・・)
数秒考えて蘭世は気づいた。 いつもスーツをキッチリ着こなしている彼が・・
背広を脱いで・・ワイシャツにネクタイ姿だったのだ。
薄手のワイシャツにネクタイ姿になると、背広姿では気づかなかった・・彼の、
逞しい身体のラインが男の色気をはらんでなまめかしく見えてくる。
そして濃色のシャツは給湯室の薄暗い中へ色と共に溶け込んでしまいそうだ。
・・どこか、闇の住人がそこに出現したような 妖しい印象だった。
そして、いつもかけていた眼鏡は外され・・涼やかな翠の瞳がこちらを見ている。
(わっ・・なんだかすごく・・そのっ 格好いい というか・・色っぽい! どうしてぇ???)
蘭世はその男の放つ、魅惑のオーラにうろたえてしまった。
男は壁に肩肘を付いて、なにやらこちらをじっと見ている。
見つめる視線に蘭世はどぎまぎだ。
蘭世は冷静になろうと、慌てて他ごとを考えようとする。ふきんを持つ手が・・・小刻みに震える。
(・・・使ったカップ、持ってきてくれたのかしら?)
そう思ってもみたが、彼の両手には何も持っていないようだ。
いたたまれなくなった蘭世は、思い切って自分から彼に声をかけてみた。
「あのあのっ、まだお手伝い残っていますか?」
「・・・そうだな・・・」
カルロは壁から肘を降ろすと、ふっ、と微笑み蘭世の方へと歩いてくる。
(え?・・・ええっ?!)
もう、ふれあいそうな距離まであの男が近づいてくる。それだけで蘭世はじいん・・と
身体が痺れるような感覚に襲われていた。
「以前見かけたときから お前のことが気になっていた」
「!?」
「・・・名前を聞いていなかったな。・・・私はダーク=カルロだ」
「カルロ、様・・」
蘭世の目はもう潤み、翠の瞳に引き寄せられて視線を外すことすら出来ない。
「お前の名は?」
「江藤、蘭世 です。」
「ランゼ・・」
名前を呼ばれただけなのに。その声に心臓がどきどきと高鳴ってしまう。
「ランゼ。良い名前だ・・」

ふいに、カルロ、と名乗った男は片手でネクタイを緩めた。
その仕草も優雅なのに・・開いたシャツの首筋からもむせかえるような男の色気がこぼれ落ちる。
その視線は・・・獲物を狙うしなやかな豹のようにも思える。
蘭世はもう眩暈を起こしそうだ。
「あのあのっ、私・・だめですっ」
いけない。
今頃になって鈍感蘭世は気が付いた。
この人が何をしようとしているかを・・・。
不意に片思いの彼の事を思い出す。
そして残っている仕事のことも・・・。
さらに、自分が壁際へ追いやられて退路を手で阻まれていることにもやっと気づいた。
(ブルガリ・・・?)
彼によく似合う香りが自分にもあまやかに降りてくる。
(そっ、そんなこと考えてる場合じゃないわっ)
蘭世は残っている理性に必死にしがみつきながら首を横に振った。
「だめなんです・・私はっ」
「ランゼ・・・」
寂しげな彼の声色にハッとし、蘭世はつい、その顔を見上げてしまった。
真剣な顔で自分を見つめる緑の瞳。
蘭世はその瞳に再び釘付けになってしまった。
「・・・」
「・・・」
大きくてひんやりした手が蘭世の頬に触れてくる。
そして・・・
気が付くと、蘭世はその男に唇を奪われていた・・・。


つづく


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