雨が降りしきる中、スバルの父親の葬儀が行われた。
俺となごみ、カニは勿論、それに加えてフカヒレが忙しい中、ずぶ濡れになって駆けつけてくれた。
乙女さんも仕事を休んで、こっちに来てくれた。

花輪には俺たちの名前や、陸上関係者の名前が連なっていた。
他には親類の人たちの名前が少々。

死因はアルコール中毒に起因する心血管系の異常だという話だ。
近所の人が数日間、音沙汰が無かった事を気にして部屋に入ったところ、
倒れているのが見つかったらしい。死後1日以上経過していたようだ。

そして数時間が過ぎた。
スバルは表情一つ変えず喪主としての勤めを果たした。

そして次の日――
対馬、伊達両家の総出でスバルの父親の部屋の片付けが行われた。
今日も暗い雨が降りしきっていた。
「ここがおじいちゃんが住んでいた部屋なんだ」
「わー、いっぱいメダルがある――♪」
隼人とのぞみは物珍しそうにキョロキョロしていた。
スバルは子供達が生まれても父親のことは一切話さなかったらしい。
死後、初めてスバルはお祖父さんがもう一人いることを教えたというわけだ。
カニによれば、隼人とのぞみはその事実を隠していたスバルに何も言ったわけでは無く、ただ事実を受け入れたという話だ。
棚にはメダルやトロフィー、賞状が並んでいた。それはスバルの物ではなかった。
なごみもカニもせっせと荷物をまとめ、俺とスバルで外にあるトラックに運び出した。おかげでビショビショに濡れた。
吼太、ほのか、隼人、のぞみもふざける事なく小物を箱に詰めていた。
スバルの意向で遺品は全て持ち帰らずに処分することになっている。


荷物が片付き、掃除も終えて、帰ろうとしたが、スバルの姿が見えないのに気が付いた。
「あなた、どうしたの?」
「いや、スバルがいないんだけど」
「ん? 奥の方にいるんじゃねーの? ボクが見てくる」
なごみもカニも既に靴を履いていたので、俺が見に行く事にした。
「いや、俺がいくよ」

奥の部屋にいくと、スバルがただ立ったまま、何もない部屋を見渡していた。
とても広い背中を俺に向けて、スバルは肩を少し震わせていた。
その時、暗い部屋の中で光った雫が一つ、滴り落ちた。
泣いている。あのスバルが。
声を押し殺して泣いているのか、それとも声を出して泣いているのか。
雨はさっきにも増して強くなり、声らしいものは全く聞こえない。
「……スバル」
すると、スバルは目の周りを袖で拭い、こっちを向いた。
「さーてと、帰ろうぜ? レオ」
いつもと同じスバルだった。
俺はこの事をカニにも誰にも話す事は出来なかった。


あれから何年も経ったが、雨になるとあの部屋での出来事を思い出す。
雨が降る日、俺は2人きりで杯を酌み交わした時は、決まってあの事を聞いてしまう。
だが、何度もあの日、その時の事を聞いても、何も答えてはくれなかった。
その度に、親友はただ笑って返すだけだった―――


(作者・TAC氏[2006/09/01])


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