10話 夢の通い路
「蛍!!」
うちに帰ったらやっぱりお父さんに怒られた。
今日はよく怒られる。
もう二度とさぼりませんと言ってあたしはやっと解放された。
自分のベットの上で、キュウをみる。
見直した。
目をこすって、また見る。
……見間違いじゃない。
キュウの上に大きく書いてあった文字が消えている!!!
「嘘……!」
あたしは立ち上がった。
いても立ってもいられず、うちの小さな対戦場にそのカードを入れる。
ぽわん。
可愛い音を立てて、柴犬がでてきた。
キュウだ。
「キュウ!!」
キュウは首をかしげてこっちを見た。つぶらな瞳。
生きてる!
キュウ!! キュウが生き返った!!!
信じられない。沼で何か起こったというわけでもないのに。
「っっきゃー!!」
あまりに嬉しくてはしゃいでいたらお父さんにまた怒られた。
でもいい。嬉しい!!!
古沼に狐がいる。
何をするわけでもなく佇んでいる。
「狐さん!」
「生き返ったじゃろ?」
狐はほっほっほと笑った。
「すごい! 狐さんってもしかして裏技!!?」
「裏技とは何じゃ?」
「ええと……ゲーム会社が作ったものだよ」
「ほっほ。違うの。あのものたちは、余達を利用しているのじゃ」
「……え?」
「世界は、それを悪用しているものによって壊されつつある」
「それって……?きつねつるぎの事?悪用してるの?」
「うむ」
「じゃあもしかして世界の危機?」
「そうじゃ」
「……それであたしが伝説の勇者として選ばれたとか?」
「いや。違う」
「……違うんだ」
ちょっと残念。
こういうシチュエーションに憧れないでもないし。
やっぱり世界を救う勇者ってRPGじゃ基本だし。
「世界を救う伝説の勇者はもう他にいる。世界を救うのはそやつらにまかせて娘は遊んでいるがいい」
……なんだか馬鹿にされている気がする。
「遊べって言われても……。そういえばなんでキュウは生き返ったの?」
「余が宿った」
「え!」
あたしはさっと青ざめた。
「なんじゃ不満かえ?」
「え! だって、あたし狐に憑かれてるって事!? 狐憑き!?」
「……失礼な娘じゃの。余の宿る剣は狐つるぎ。
おぬしの柴犬は狐の加護を受けた。はっきり言って強いぞ。
そして見てみるが良い。剣の名が変わっておるぞ」
「へぇ……。でもなんでキュウに?」
「簡単に手に入るものではないといったじゃろ? 狐つるぎは。
狐が宿ったつるぎが狐つるぎになる。しかしの、我ら狐族も宿りにくいものと宿りやすいものがあるのじゃ。一番宿りやすいのが死んだばかりの忠実なつるぎ。
出来れば主人以外に従わぬのが良い」
「そうなんだ」
丁度条件に合ったって事なんだ。
あたしはやっと納得した。
「……狐さん。あなた、強いのよね?」
狐はすうっと目を細めた。
「もちろんじゃ」
「じゃあ、やりたいことがあるんだけど……いい?」
狐はすうっと目を細める。笑っているのかな?
「ほっほっほ。わかっておる。手伝おうぞ」
「ありがとう」
明日は朝早く起きよう。
行くところがあるから。
11話 きつねつるぎ
1話 夢の出会い
2話 日常
3話 新製品
4話 大会前
5話 ライバル?
6話 ネオドランス
7話 とりかえしのつかない戦闘
8話 夢のなかで
9話 剣を求めて
10話 夢の通い路
12話 その後
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