「うみゃー、入るよー。」
その声とともに瀬芦里お姉ちゃんが入ってきた。
と言っても、いつも言う前に入ってるんだけどね〜。
「ねぇ、『C3-MILD』ってもう使わないの?」
「う〜ん、だってクロウには太刀打ちできなかったからね〜。
 雛乃お姉ちゃんも、もうやめとけって言ってたよ〜。」
「そっかー、じゃ仕方ないね。
 そう言えばさ、アレはどうなったの?」
「う〜ん、せっかく瀬芦里お姉ちゃんにテストしてもらったけど、やっぱりダメだよ〜。
 あんな危険なもの、ヘタしたら空也が死んじゃうよ〜。」
「やっぱダメかー。ま、アタシもありゃ危険だと思ったしね。」
そう…今は封印してるけど、そのうち完全にバラさないとね〜。
アレは…『C4』だけは…。
どたどたどた!
やかましい足音を出して部屋の戸をあけたのはくーやだった。
「お姉ちゃん!」
「あぁ、くーや、くーや、くーや〜。」
すりすり。
「お姉ちゃ〜ん…ってそれどころじゃないって!クロウが出てきたんだよ!」
「しぼむ〜。」


クロウが出てきたっていうけど、今日のアタシは仮病でパス。
今日は深夜営業の焼きソバ屋、それも時間がメチャ限られているレア屋台のチェックをしないと。
助手席で瀬芦里姉さんのサポートするだけだし、そんなもん誰でもできるでしょ。
ていうか大体、最近あのイカがアタシに対して生意気になってきたのが悪いのよ!
この前だって買い物の荷物持ちをさせたげるって言ったのに、
「ヤダよ。姉貴一人で行ってこいよ。」
あいつアタシのこと何だと思ってんの!?
さーて、イヤなことはほっといて、みんなが出かけたみたいだし、私も行きますか。
下に降りて海の部屋の前を通ると、部屋の戸が開いてることに気がついた。
ちらりと中を覗くと、変な張り紙を発見。
『PROJECT【C4】開封ヲ禁ズ』
何かしら、これ?
張り紙を無視して中を見ると、空也が身に着けている『C3-X』に似たものがあった。
カラーリングは青ではなくて黒、そして何かとてつもない迫力を感じた。
あの『C3-X』よりも強そうな、威圧感みたいなものがある。
「そうだわ!これを身に着けて空也の戦いに割って入るのよ!
 で、空也ではなくアタシが倒せばアイツも文句言わなくなるでしょ!
 ヤキソバは大事だけど、こっちのほうがおもしろそうね。」
アタシはさっさとこれを身に着けることにした。
どうやらある程度サイズが合わなくても装着できるみたい。
いわゆるフリーサイズってことね。
最後にヘルメットを装着すると、クロウの現在地が指定された。
「すごい!ヤツらの居場所がわかるってことね!
 よーし、見てなさいよ、空也!ついでに猫にメガネ!」
ブゥ…ン…
「何かしら今の音?まいっか。」


「なんなんだよ、この数!」
恐ろしいほどのクロウの数。
しかも、いくらふっ飛ばしても手ごたえがない。
「ど、どうしよう、ともねえ。」
「こいつらはどうやら実体のある幻みたいだよ。幻を作っているやつを叩かないと…。」
さっき打ちまくったせいで弾も残り少ない。
ともねえも長時間の戦闘で疲弊している。
ついには、こいつらに取り囲まれてしまった。
「くそ…こうなったら当たって砕けろだ!」
特攻しようとした途端、ドォン!という大きな爆発音が鳴り響き、クロウが一気に消滅した。
透子さんか!?いや、そんな感じじゃない。
俺たちがその方向を見ると、俺に似た黒い戦士が現れた。
手には大きなバズーカみたいなものを持っている。
「そ、そんな〜!なんでアレが動いてるの〜!?」
通信マイクの向こうから、海お姉ちゃんが珍しくうろたえているのがわかる。
「お姉ちゃん、アレは何なの?」
「アレは『C4』…強力すぎて、余りにも危険な代物だよ〜!」
『C4』!?そんなものがあったなんて…。
突然、その『C4』から声が届いた。
「空也、ちょっとどきなさい!まとめてブッ飛ばすわよ!」
「姉貴!?」
そう言うと姉貴はバズーカをクロウの大群に向かって構えて、俺たちは危険なので退避した。
「くたばれ、カラス野郎!『スパークランチャー』発射!」
強烈な大型のエネルギー弾が発射され、10匹近くいたクロウはまとめて消え去ってしまった。
「フフン、こんなもんよ!」
得意げになると姉貴は俺たちに
「見たかしら、空也に巴姉さん!もうこれからは、このアタシが戦ってみせるわ!
 別に二人が戦う必要なんてないわよ!」
と言い放った。


トラックが到着すると、中にいた海お姉ちゃんとねぇねぇが一目散に駆け寄ってきた。
「高嶺お姉ちゃん、すぐにそれをはずして!」
「何言ってんのよ、こんなに清々しい気分なのに。ストレス解消にもってこいね、コレ。」
「タカ、うみゃの忠告を聞いたほうがいいよ。アタシもそれは危ないってわかってるんだから。」
珍しくねぇねぇが注意している。
そんなに危険なのかな?見た目はそうでもなさそうだけど…。
そう思っているとき、急に姉貴の様子がおかしくなった。
「な、なんなのよこれ〜!」
やたらと混乱しているが、俺からじゃヘルメットの中の様子なんてわかりっこない。
そして何を思ったのか、いきなり姉貴は俺たちに襲い掛かってきた。
「うわぁ!」
「高嶺、やめるんだ!」
ともねえの声に、姉貴は反応を示さない。
ただ俺たち二人に向かって攻撃をしてくる。
「なんとか食い止めて〜!私は『C4』のシステムをカットするよ〜!」
「ともねえ、姉貴を止めよう!」
「うん!」
お姉ちゃんはトラックにもどり、『C4』のコンピューターにアクセスしてシステムカットをし始めた。
しかし、動きが止まるどころかますますこっちを攻撃してくる。
凄まじいパワーの前に俺たちはなす術もなく、それでいてこっちの攻撃は簡単に受け流されてしまう。
「そんな〜、カットできないよ〜!なんで〜!?」
「空也、なんとかして高嶺を押さえ込みなさい!」
「そんなこと言ったって…ぐわぁ!」
強烈なキックをまともに受け吹っ飛ばされてしまった。
「高嶺、やめ…グハッ…」
ともねえもボディーからアッパーの連携攻撃を受け、さらに連続蹴りをくらって昏倒した。
「うう…姉貴…」
俺たちを一蹴した姉貴はそのままどこかに逃走、俺はその姿を見届けた後、意識を失った。


俺が気づいた頃にはもう昼になっていた。
ともねえはダメージが大きかったのか、まだ布団の中で眠っている。
その傍では、ねーたんが必死の看病を続けていた。
俺はお姉ちゃんたち(ねぇや含む)が揃っている居間に行って、今後の対策を考えることにした。
「とにかく、高嶺がああなって行方をくらましている以上、我らも全力をもって探さねばならん。」
「そうですね…ところで海、あなたが開発したんだから、簡単に『C4』についての説明をお願い。」
「うん、アレは元々『C3』の強化体として作ったんだよ〜。
 結構前からできてたんだけどね、瀬芦里お姉ちゃんにテストしてもらったんだけど…」
「どういうことなの?」
「そもそも、アレは人間の限界を超えすぎているんだよ〜。
 性能はビックリするぐらい高いけど、全身にかかる負担も尋常じゃないの〜。
 巴お姉ちゃんが纏身した後の空也でも、無事ではいられないよ〜。
 昨日の戦闘では、まだ100%の力を出していないみたいだけど、それはAIが制御してるんだよ〜。」
俺たちの時はともかく、少なくともクロウと戦っていた時は全力じゃなかったのかな…。
「昨日の急に暴走した件は?」
「実はこのAIが厄介なの〜。それが前の起動テストの時、急に自我に目覚めちゃったんだ〜。
 多分AIが自分のような力は自分だけでいいと考えているのかも…。
 危険だからすぐにカットをして、もう大丈夫と思ってたんだけど…」
「まだ自我が残っていた、というわけね。」
「このままじゃ高嶺お姉ちゃんの体がボロボロになって、最悪の場合…」
「海よ、それ以上は申すでない。」
雛乃姉さんがぴしゃりと止め、部屋はしーんと静まりかえった。
一刻も早く見つけて止めないと…。
少ししてから要芽姉様が口を開いた。
「見つける方法は?」
「レーダーに反応が無いことを見ると、どこかで潜伏している可能性が高いよ。
 『C4』は強いエネルギー、すなわちクロウの存在をキャッチすることができるから、その時なら…」
高確率で出くわすってことか。
しかし、あんな強力なやつをどうやって捕まえるっていうんだろ。
「とにかく、昼夜問わず高嶺の探索におのおの全力を注ぐように。」


「しかしお前と探すことになるとはなぁ。」
「ギュンパルス(訳:ひなのんの頼みだからしょうがねえだろ。)」
夜中の探索に俺は珍獣・マルを連れていた。
雛乃姉さんが行く時に、役に立つからと連れて行くことになったんだけど…
こんな覗き魔が役に立つっていうのかねぇ。
実際、何か発見したのかと思えば風で飛んできたパンティやブラだったりするわけで。
「お前なぁ、探してるのは姉貴なんだぞ。こんなんじゃないっての。」
「ギュイア(訳:まあそういうなよ。ほら、ひとつやるよ。)」
「む、これはどうもどうも。」
すぐに手にした下着をポケットの中にしまいこむ俺。
ダメ珍獣とダメ人間のダメダメタッグが完成してしまった。
「あいかわらずね、このイカ。」
「な…姉貴!?」
いつの間にか姉貴が俺たちの背後にいた。
もちろん『C4』は身に着けたままだ。
その迫力は、もはや姉貴とは違う別の人間のようにさえ感じる。
「ちょうどよかったわ。マルを渡しなさい。」
「な…なんでだよ。」
「さすがに『C4』も永久稼動じゃなくってね。それでデータからマルの放電能力の高さに目をつけたの。
 マルからエネルギーを供給すれば、とりあえずエネルギー切れの心配はなくなるし。
 公共機関でもいいけど、海がもし各地の電力消費をチェックしていたらアシがつくものね。」
「わ…渡すわけないだろ!こいつを危険に晒せるような真似はさせない!」
「わかってないわねぇ…アタシが命令してるの。
 アンタはそれに黙って従えばいいのよ!」
「どわぁぁ!」
俺は軽々と投げ飛ばされ、マルも少し抵抗はしたがあっさりと捕まってしまった。
「さて、マルには頑張ってもらわないとねぇ…。空也、ごきげんよう。」
「く…くそぅ…みんなに知らせないと…。」
俺は立ち上がると、家へと全力疾走した。


「何!?マルが捕まってしまっただと!?」
「す、すみません…俺が頼りないばっかりに…。」
しかし、この訃報を聞いて雛乃姉さんはそれほど取り乱さなかった。
いや、そのように努力しているだけなのかもしれない。
悪い事の上からさらに悪い事が重なってくるような感じだな…。
「大ニュース大ニュース!高嶺お姉ちゃんを見つけたよ〜!
 町外れの廃工場にいたよ〜!」
どたどたと大きな足音とともに、海お姉ちゃんが血相を変えてやってきた。
「ほう、本当か海よ。」
「うん、偵察機からの情報だよ〜。その偵察機は潰されちゃったけど。」
「なるほど、潰されたことが何よりの証拠だな。
 今からでも遅くはない、高嶺とマルを救出しに行くぞ!」
みんながそれに賛同するものの、要芽姉様だけは少し暗い表情だった。
「ちょっと待ってください、雛乃姉さん。
 行きたいのはもちろんですが、どうやって救出するというのですか?
 それが一番大事なことではないのでしょうか?巴も起き上がってこれない状態ですし…。」
「むむ…しかし…」
ここで突然、ねぇやが割って入ってきた。
「な〜に言ってるの、かなめちゃん!」
「なんなの…この単細胞女!」
「アン、そんなに怒らないで。確かにかなめちゃんが言うのはもっともよ。
 でも、だからと言って手の届くところに目標があるのに、そのまま見過ごすの?
 ガンガンぶつかっていかないと!ね?」
「く…なんでこんなやつに…」
ねぇやの割には珍しくまともなこと言ってるな…間違いなく明日は天気が荒れるな。
でも、確かにそうだよな。すぐにでも行動に移さないと、取り返しのつかないことになっちまう。
「姉様、俺は一生懸命やるからさ。とにかく助けに行こうよ、ね?」
「…仕方ないわね。それじゃあ行きますか、雛乃姉さん。」
「うむ、出動するぞ!」


「えっ!?みんな行ったの!?」
「うん…」
マルが捕まったっていうのは聞いていた。しかもクロウの存在を感じる。
空也も出撃したんだろうけど、私が纏身していない限り『C3-X』を限界まで使うことはできない。
「私も助けに行かないと…うぅ…!」
「だめ!巴さんはここで休んでないと…今行ったら巴さんが死んじゃう!」
ぽえむちゃんは私のことを本当に心配してくれているんだ。だけど…
「…ありがとう、ぽえむちゃん。でも、私は高嶺とマルを助けないと。
 今、高嶺もマルも…自分の居るべき場所にいないと思うんだ…」
「自分の…居るべき場所?」
「うん。高嶺もマルも、この家が自分の居るべき場所なんだ。
 それに…家族やみんなを守るために戦うなら、それが私の居るべき場所なんだ!」

「あらあら…何かしら、この嫌な予感は…。」
クロウの存在を知らせる耳鳴りのような感覚。今回はかなりの数がいるような感覚を覚えた。
その中に、力の強い存在が二つもある。
「やれやれ…今回は骨が折れそうね。」

「雛乃姉さん、大丈夫ですか?」
「これしきのこと、なんでもないわ。」
俺は『クーヤチェイサー』の後ろに雛乃姉さんを乗せ、現場まで急行していた。
雛乃姉さんは霊力でマルのある程度の位置を把握できるらしく、発見にはとても頼りになりそうだ。
不意に要芽姉様から通信が入ってきた。
「空也、現場でクロウの姿を別の偵察機が捉えたわ。それもかなりの数よ。注意して。」
「げ…そんなに沢山いるんですか?」
「大丈夫よ、空也ちゃんなら問題ナッシング!」
「こら馬鹿女!勝手に通信に出るな!」
通信機の前でも喧嘩してるのか、あの二人は。
そのやりとりに思わずふきだしてしまった。なんだか緊張がほぐれたぞ。
「まったく、あの二人は相変わらずよなぁ…空也よ、気を引き締めていかねばならんぞ。」
「はい、わかってます。」

(作者・シンイチ氏[2004/12/06])


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※3つ次 姉しよSS「みんなのために(前)
※4つ次 姉しよSS「みんなのために(後)
※関連 姉しよSS「行け空也!C3、起動!


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