「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
ともねえの拳が光り輝き、クロウを貫いた!
「グギャァァァァァ!!」
凄まじい爆音と共に、消え去っていくクロウ。
やっと倒したともねえは纏身を解き、少し苦悶の表情を浮かべた。
「大丈夫、ともねえ?」
「あは、大丈夫だよ。
 でも、最近になってクロウも数が増えてきたな。」
「うん…」
そう、ともねえの言うとおり、最近になってクロウが出てくることが多くなった。
そのたびに俺たちは夜中に出かけ、クタクタになって帰り、そのまま眠りこけてしまう。
俺の投石によるサポートも限界が来ていた。
「ごめんね、ともねえ。
 もっと俺が1対1でも戦えるぐらい強かったら…」
「空也…いいんだよ、そんなこと考えなくても…」
俺たちはゆっくりと帰ろうとした。
ふとその時、ともねえが何かに気づいたようだった。
「ん…?」
「どうしたの、ともねえ?」
「いや、何か音がしたような…気のせいかな?」
「虫が何かじゃないの?
 さあ、帰ろう。」
「うん…」
こうして俺たちは『ラスカル』で帰ることにした。

…一方、柊家の一室では…
「くーやに巴お姉ちゃん、夜中に出て行って帰るのが遅いと思ってたら、こういうことだったんだね〜。
 あんまり怪しいものだから『メカ高嶺・ミラージュコロイド装備型』で見張ってたけど…
 くーや、そのお願いはお姉ちゃんがかなえてあげるよ〜。
 もうちょっとで完成のアレを装備すれば、これでくーやもヒーローの仲間入り〜。」


1週間後の夜、俺とともねえは雛乃姉さんに呼び出された。
その席には要芽お姉様たちもいた。
「空也に巴よ、お前たちは我らに何か隠し事をしているだろう?」
「あぅ…そんなことは…ないよ。」
「巴、正直におっしゃいなさい。
 調べはついてるのよ?」
「あぅ…」
「だ、誰が最初に知ったんですか?」
そう聞くと、明らかにわかりやすい反応をした人が一人。
なるほど、海お姉ちゃんか。
「ふむぅ、やはりな。
 もうよい、お前たちの口から言ってもらいたかったんだがな。」
「す、すみません。
 でも俺たちはみんなを巻き込みたくなくて…」
「何を言っておる。
 お前たちがいなくなれば、一番悲しむのは我らなのだぞ。」
「巴姉さんたちがいなくなったら、誰が掃除とかをするっていうのよ。」
「そうそう、遊び相手もいなくなっちゃうしね。」
「くーやが戦っているなら、お姉ちゃんも黙っていられないよ〜。」
「み、みんな…」
感激のあまり泣きそうになるともねえ。
俺ももらい泣きしてしまいそうだ。
俺たちがここまでみんなに大切にされ、愛されているなんて。
「そこでね、くーや。
 ちょっと見せたいものがあるの〜。
 お姉ちゃんについてきて〜。」
案内されたのは海お姉ちゃんの部屋だった。
その秘密基地のような部屋に入ると、そこにはゴツゴツしたスーツのようなものが
たてかけられてあった。


「こ、これは何なの、お姉ちゃん?」
「これはくーや用に開発された強化装甲服だよ〜。
 その名も『C3システム』!
 これを着ればあんな化け物なんて目じゃないよ〜。」
ハッキリ言って頭がついていかない。
『C3システム』?何ソレ?
「ど、どういうことなんですか、雛乃姉さん?」
「うむ、我が海に頼んで作らせておいたのだ。
 まあ、我が言う前にほとんど完成しておったのだがな。
 巴ばかりに無理をさせるワケにはいかんからな。」
「へぇ〜。
 確かにこれさえあれば俺も戦いに参加できるね。
 ありがとう、お姉ちゃん!」
しかし、ともねえは困った顔をしていた。
そりゃ、ともねえの性格からすればそうだろうけど。
「雛乃姉さん、私は別にいいんだよ…
 戦うのは、私一人で十分だから…
 空也、別にこれを着て戦う必要はないんだよ。」
ともねえはこう言っている。
でも、俺は…
「戦うよ。」
「え?」
「俺だって戦うよ、ともねえ。
 クロウがどんどん出てきて危ないってのに、いつまでもサポートばかりじゃどうにもならないよ。
 だから俺、戦う。
 みんなを守るために。」
「空也…ありがとう…」


次の日の夜…
キンキンキンッ!
「はっ!」
「こ、これは!
 出やがったな!」
いつものクロウの気配を感じ取り、俺たちにとてつもない緊張が走る。
俺は居間に飛び出して、みんなに知らせに行った。
「みんな、奴が出たよ!」
「…その前にイカ、パンツぐらいはきなさいよ!」
「へ…?…おわぁぁ!!」
しまった、風呂に入る直前でした。
シリアスなムードだってのに、しょうもないことをしてしまったぜ。
さっさと服を着て、いざ出陣!
「クーヤ、こっちこっち!」
「ねぇねぇ!?
 このトラックは一体…?」
「説明は後!
 みんなもう乗っちゃったよ!
 クーヤも早く!」
そのまま俺はトラックの後ろに乗った。
運転席にねぇねぇ、助手席には姉貴が乗り、あとの3人は『C3システム』と共に
後ろのコンテナの中に乗っていた。
どうやらともねえは先に出発していたらしい。
「準備はいい?そんじゃ、行くよ!」
ねぇねぇの声と共に、トラックは出発した。
「発信機の動きが止まったわ、瀬芦里姉さん!
 わりと遠いわよ!」
「オッケー!まかしとき!」


移動の間、俺は『C3システム』を装着することにした。
専用の防護用タイツを着て、その上から強化服を身につけていく。
「ところで、どこに行けばいいかわかってるの?」
「安心しなさい、空也。
 巴のバイクにはあらかじめ発信機をつけてあるから。」
「空也よ、今は自分を落ち着かせておくのだ。
 戦に行くのに、余計な事を考えてはならん。」
「は、はい。」
そうこう話している間に、残る装備はヘルメットのみとなった。
「くーや、このヘルメットに内蔵されたスピーカーから指示を聞く事ができるからね〜。
 小型マイクで、くーやの声もこっちで聞く事ができるよ〜。」
「うん、わかったよ。」
不意にトラックが止まった。
どうやら目的地付近まで来たらしい。
コンテナ内のスピーカーからねぇねぇの声が聞こえた。
「そろそろ到着するよ!」
「うむ。
 空也は到着してからすぐに出撃、瀬芦里は空也が出撃した後、
 トラックを我らごと安全なところへ。
 空也よ、指示はそこから出すぞ。」
「わかりました。」
「空也、気をつけなさいよ。」
「危なくなったら、逃げていいからね〜。」
「う、うん。」
背中のバッテリーパックのスイッチをONにしてもらい、『C3システム』が起動を開始した。
俺は颯爽と改造原チャリ『クーヤチェイサー』に乗る。
「準備ができたました、雛乃姉さん。」
「うむ。
 『クーヤチェイサー』発進!」


「くっ…こんなにいるなんて…」
「さすがにこれはOKじゃないわね…」
まさかこんなにも隠れていたなんて。
完全なワナだった。
クロウに人が連れて行かれそうだったから、途中で一緒になった透子さんと一緒に追っていたのに…
まさかその人もクロウだったなんて。
気づいた時はもう遅くて、5匹ぐらいに囲まれていた。
「ねえトモちゃん、降参する?」
「そうしたいけど…」
それは無理だ。
最近のクロウは目の色が違う。
怒りとか、憎しみとか、そういうのに狂っている目だ。
話し合いができればいいけど、もうそれが通用する相手じゃない。
少なくとも、私たちの目の前にいるクロウたちは。
「グァァァァァ!!」
2匹が一斉に襲い掛かってきたその時、一筋の光線がクロウを襲った。
「ギャァァァ!」
「な、何なの?」
クロウは吹っ飛び、他のクロウも慌てふためいている。
一体何があったのかわからなくて慌てていると、ガシャンという足音と共に、
装甲服を纏った一人の戦士がやってきた。
「ともねえ、透子さん、お待たせ!」
「え…あれってもしかして…空也君?」
「う、うん。
 そうなんだ…」
それは、海の部屋に置いてあった『C3システム』を装備した空也だった。
手には銃のようなものを持っている。
「さあ、クロウはまだいるよ!
 一気にやっつけちまおうぜ!」


ともねえが叩き、透子さんが切り裂き、俺が撃つ。
初めてなのに、これほどまで息の合ったコンビネーションができるとは、俺自身も驚いていた。
しかし、クロウたちは全然息切れする気配がない。
これじゃ消耗戦になるだけだ。
「海お姉ちゃん、何かドカンと一発ってのはないの!?」
スピーカーからお姉ちゃんの声が聞こえた。
「くーやの使ってる『ライトニングボルト』の設定を変更するよ〜。
 これでチャージショット『ライトニングプラズマ』が撃てるけど、
 一回で5発分のエネルギーを使うから慎重にね〜。」
俺は銃の残弾表示を見た。
『残り5』
「1回だけかい!
 しかももう無駄撃ちできないじゃん!」
そんなツッコミをしているとクロウが俺の横っ面にパンチを食らわせてきた。
「ぐわぁ!!」
見事に吹っ飛んでく俺。
ああ情けない。
今度は要芽姉様からの通信が来た。
「いい、空也?
 一度しか撃てないから、その瞬間が来るまで使ってはダメよ。
 発射の瞬間を私が指示するから、あなたは『エクスカリバー』を使いなさい。」
確かあれは…そうだ、原チャリの後ろにセットされていたんだったな。
「空也をよくも!はぁぁぁぁぁぁ…!」
ともねえが怒りの声を上げ、必殺の一撃を打ち出した!
「グギャァァァァァ!!」
クロウが爆発する最中、俺は乗ってきた『クーヤチェイサー』の後ろから取り出した
『エクスカリバー』を右腕にセットした。


「銃はとっておきだ!
 今は肉弾戦でいくぜ!」
しかしこれが扱いづらい。
パワーはあるはずなのに、腕にかかる負担が大きくて、満足に当てることもできやしない。
すると、目の前から襲い掛かってきたクロウの動きがとたんに鈍くなった。
「空也君、あいつの動きを止めたわ!
 一緒にいくわよ!」
「そうか!よぉぉし!」
透子さんの僕がクロウの動きを鈍くしてくれたから、この重い武器でも簡単にしとめられるぜ!
「おりゃぁぁぁ!」「つぇぇぇい!」
動けないクロウに俺たちは十字に切り裂いた!
クロウは苦悶の表情を浮かべた後、爆発していった。
「見たか!必殺『ブラッディークロス』!」
うーむ、やっぱりこれを着ていると、不思議とヒーロー番組の主人公になった気分になるぜ。
とにかく、2匹を倒したからあとは3匹だ!
一気に仲間が倒されたから奴らもかなり動揺している。
すると、要芽姉様から通信が入った。
「空也、敵はひるんでいるわ。
 撃つなら今よ。」
「わかりました、姉様!
 ともねえ、透子さん、行くよ!」
「うん!」
「ええ、いいわよ。」
俺はエネルギーチャージを開始し、ともねえと透子さんは必殺技のための力を溜め始めた。
「パープル・ストライク!」「ジェノサイド・フロウジョン!」
「よし、エネルギーチャージ完了!いっけぇぇ〜!!」
3人のそれぞれの技が、3匹のクロウを捉えた!
「グワァァァアァ!!」
凄まじい爆音と共に、クロウは完全に消え去った。
周囲にも、敵の気配はしない。
安心した俺たちは、ともねえと透子さんは纏身を解き、俺はヘルメットをとりはずした。


「まさか空也君がこんな姿で戦うなんて、思ってもみなかったわ。」
「いや、俺も急にこれをつけることになって…」
「空也、怪我がなくてよかったよ。」
そんなことを3人で話していると、急に俺の体が重たくなった。
歩くのもかなりしんどい。
おかしいと思った俺は、連絡を入れてみた。
「なんか急に重たくなったんだけど。」
「う〜ん、多分巴お姉ちゃんが元に戻ったからだと思うよ〜。
 トラックがそこに行くまで、もうちょっと待っててね〜。」
「だってさ、ともねえ。」
「うん、聞こえた。」
どうもヘルメットはいざという時のために取り外しができるけど、それ以外は無理みたいだ。
仕方なく、俺はその場に寝転がってみんなの到着を待つことにした。
さっきの戦いがウソみたいに、夜空は綺麗だった。
「さてと、今日はさっさと帰って寝るわ。
 それじゃ、バイ。」
「おやすみなさい。」
透子さんが帰って、しばらくしてからトラックがやってきた。
俺たちはそのまま家へ帰る。
これからはともねえだけが戦うんじゃない。
みんなで、一丸となって戦うんだ。
全員がそう心に決めた夜だった。


(作者・シンイチ氏[2004/11/08])


※1つ次 姉しよSS「蒼き閃光C3-X
※2つ次 姉しよSS「新たなる纏身
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