−−探した。
「おぅ!どうしたんだよ空也?やっぱり森の廃屋探検行く気になったのか?」
「イエヤスっ!ここらへんで小鳥、見なかった?」
「小鳥?ああ………俺のカワイイ小鳥ちゃんならいつでも募集中だぜ………!」
「はぁ……わかった、もういいよ………」
−−−−探した。
「先生っ!学校内で小鳥、見ませんでしたっ!?」
「おー、女装転校生。元気?」
「うわぁん!な………なんで知ってるんですかぁっ!?」
「なんでって………保健室の魔女、アタシのダチだから。まぁ、喋んないどいたげるから安心しなさいな」
「うう………ありがとうございます……」
「小鳥ねぇ………たぶん校内にはいないと思うよ?勘だけど」
「勘ですか」
「失敬な。アタシの勘は当たるんだぞ。ん……ホラ、当たった。これやるから信じなさい、ガリガリ君の当たり」
「いらないですよぅ……」
−−−−−−探した。
「く・う・や・く・ぅ・ん!?修行の旅から帰ってみれば歩笑ちゃんの愛鳥は逃げてるわ、
帆波ちゃんは再起不能でリタイアしてるわで……どーなってるのかなぁっ!?」
「わーん!若葉さん!なんてタイミングの悪いっ!今は説明してるヒマがないんでまたあとでー!」
「あっ!?こらまてぃっ!!やっぱり翔の息子は油断ならぁーーーんっ!!」
−−−−−−−−探して、探して、探して。
「はぁ………ふぅ……はぁ……」
だめだぁ………見つからない。
「俺は甘えるだけでお姉ちゃんの役には立たないのかな……」
お姉ちゃんに甘え放題の俺がちょっと真剣にやったところでうまくいくはずがないのかもしれない。
………うう、この考えもまた甘えだなぁ。
あ、ヤバい。ちょっと泣きそうかも。
ぐっ………っとこらえてまた歩き出す。探してるうちにもう辺りは暗くなってしまっていた。
さすがにもう歩笑ねーさんもあきらめて家に帰ってるよね……


ねぇやにこれ以上ストレスかけるわけにもいかないし。俺も一回家に帰ろう。
はぁ……。落ち込みながら帰り道を進んでいく。………すると。
「ふたり〜を〜ゆ〜うやみがぁ〜♪」
変な歌が聞こえてきた。
「つ〜つむ〜〜こ〜のまどべに〜〜♪」
この声は………?そっちの方へ行ってみる。
「(セリフ)幸せだなぁ………僕は友達と"カワイイと思う女の子のセリフって何?"って話題で盛り上がってる時が一番幸せなんだ………」
うーん。これだけで誰だか分かるのがスゴイなぁ。
「団長、何やってるんだよぅ」
「よぉ、空也じゃないか。俺は嬉しい事があったんで喜びの歌を歌ってたんだ。ほら、この鳥見てくれよ」
………っ!?まさかそれって!?
「人なつっこい奴でさぁ。俺のとこに来るとは飛んで火にいるなんとやらさ。このまま焼き鳥にして食べちまおうかと………」
…………あんですと!?(ビキッ!?)
「団長………いつからここにいたの?」
「ん?日が暮れる前からずーっと。ここで釣りしてたんだけど全然かからなくってなぁ」
つまり、アレですか。俺が市内中走り回ってたってーのに………コイツはぁっ!!(ぷっちん)
「………………お前が捕まえてたんかーーーーいっ!!!!」
「いやしかし、ここで見逃してやればいつか美少女に変身して恩返しに来てくれるかも………はぐぅぅぅっ!!」
ボッチャーン!!
団長を海に叩き込む。


ちゃらららっちゃっちゃー♪

だんちょう をたおした!

だんちょう はたからばこを おとしていった

くうや はたからばこを あけた
なんと ぽえむねーさんのことり をてにいれた!

「ブラボーだよ、団長。この鳥は飼い主に返却しておく」
うわぁ………ドッと疲れた………。
「はぁ……やっと歩笑ねーさんの役に立てた……よかった……」
なにはともあれ任務完了!ダッシュで帰って姉妹の絆を修復しなければっ!!

………………
「歩笑ちゃーん………出てきてよぅ………今回はお姉ちゃん、本当に反省してるからぁ………」
「……………」
ドアの向こうから帆波姉さんの声が響く。
わたしは自分の部屋で電気も付けずに落ち込んでいた。
外を探し回ってた所をお父さんに見つかって連れ戻されてしまったのだ。
「ぽーえーむーちゃーん………うぅぅ………」
とたん………とたん………
遠ざかる姉さんの足音を背にばふっと布団をかぶる。
今は………ダメ。
頭では姉さんのいつもの悪気のない事故だってわかってるんだけど、心の方は全然ダメで。
今顔見たらまたさっきみたいにヒドい事を言っちゃいそうな気がする。
だから今は出られない。
………姉さんの事本当に嫌いになりたくないし………
……このまま寝ちゃって明日になればすこしは落ち着けるかなぁ………と思ったその時。


だだだだだだだあぁぁっっ!
誰かが廊下を走ってくる。
「歩笑ねーさん!小鳥見つけて来たよーっ!!」
……えっ!?
「あーけーてー!!歩笑ねーさんの小鳥、見つかったよーっ!!」
どんどん。どんどん。空也くんがドアを叩いている。
わたしは驚いて飛び起き、急いでカギを開けた。するとそこには………
「えへへ……はいっ……これ」
ピュルィ…ピッ……ピィッ……
泥だらけの笑顔で両手でネフェルを抱えた空也くんがいた。
「ぁ………」
「う……も……もしかしてちがう鳥だったりする!?」
………
……………
…………………………しーん。
ぽろり……ぽろり……
「あ……あぁっ!歩笑ねーさんが泣いてるっ!や……やっぱりちがうんだぁっ!?」
くるっと後ろを向いて走り去って行こうとする空也くん。
「待って……!!」
それを服のスソをつかんでひきとめる。
「ぐすっ……空也くん……あ………あり……あり……がと……」
全然話した事もないわたしなんかのために、こんなになるまで探してくれたのに。わたしはそれだけを言うのがやっとで。
なんだか恥ずかしくて、申し訳なくて。空也くんの前でぽろぽろと泣いてしまったのでした。


………………………
「うわぁん、イタタタ……しみるよぅ……」
「動いちゃダメ……うまく塗れない」
鳥を無事カゴにベントインし、歩笑ねーさんが落ち着くまで待つ事30分ほど。
「はい、おしまい。……次はばんそうこう」
で、今は歩笑ねーさんたっての希望で傷の手当てをしてもらってる。
「ここと……ここ……ここも……」
ぺたぺたとばんそうこうが貼られていく。
「これでOK……」
「ありがとー!歩笑ねーさん!」
「あっ………」
歩笑ねーさんはうつむいてしまった。
でも、普通にしゃべってくれるし……いつもみたいに避けられてるわけでもない……のかな?
………うん。これはいいチャンスかもしれない。思い切って聞いてみよう。
「あの……歩笑ねーさん………俺の事……嫌いかな?」
「………!?」
あ、びっくりしてる、びっくりしてる。
「いつも話しかけようとすると逃げちゃうし……ごはんの時もテーブルの端と端だし……」
そう言うと歩笑ねーさんは首をぶんぶん横に振りながら
「ち、ちがうの。わたし……空也くんが話しかけて来てくれるのはすごく……嬉しい」
おぉっ。
「わたし、すごい人見知りで……姉さんと違って………お父さんに逆らうのも怖かった」
そ……それはねぇやが特殊で歩笑ねーさんが普通なんじゃないでしょーか?
「趣味も……話が合う友達とか全然出来なくて……家に閉じこもりがちだったの」
うーん。確かにこの部屋のセンスは独特かも。俺は好きだけどなぁ。
「だから……同じぐらいの子と話すのなんて初めてで……どうしていいかわからなかった」
ということは………もしかして……


「じゃ……じゃあ!」
「う……うん。わ…わたしも話したかった」
その言葉を聞いて一気に気が抜けた。
「はぁ〜〜〜〜〜。よかったーーー。嫌われてたんじゃないんだぁ…………」
「ごめんね。どうしても勇気が出なくて……」
「それじゃあしょうがないよね。じゃあ今日から………普通に話してもいいかな?」
「うん……頑張ってみる……」
あー、よかった。ずいぶん回り道しちゃったけどこれでやっとねぇやと歩笑ねーさん。二人のお姉ちゃん達と仲良くなれた。
「よぉしっ!いっぱい話そうねっ、歩笑ねーさんっ!それじゃあ改めてよろしく!歩笑ねーさん!」
「わたしもよろしく……」
ぎゅっ……と。
差し出した俺の手を握り返してくれた歩笑ねーさんの手が心地よくて。しばらく二人で手を握りあっていた。

………………
「え……えっと……空也くん?」
「何?歩笑ねーさん?」
「一つ………お願いがあるんだけど………」
「うんうん!いいよー!なんでも言ってみて!」


「……………………クー君って…呼んでいい……?」


(作者・愚弟氏[2004/10/10])


※2つ前 姉しよSS「犬神家の夏 〜第3話〜 「クー君と呼ばれた日」前編
※1つ前 姉しよSS「犬神家の夏 〜第3話〜 「クー君と呼ばれた日」中編
※関連 姉しよSS「犬神家の夏〜第1話・前編〜
※関連 姉しよSS「犬神家の夏〜第1.5話〜 空也ちゃん観察日記
※関連 姉しよSS「犬神家の夏 〜第2話〜 「全ては妄想のために」前編


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