「歩笑ねーさーん……今日、学校から帰ってきたら一緒に遊ぼうよーぅ」
ささっ。今日もまた隠れてしまう。
……ダメだなぁ……わたし。
今年の夏。うちに新しい家族がやってきた。
………正直わたしはすごく困った。大人の男の人はお父さんがいたけど………同じぐらいの男の子って……はじめてだし。
でも、ほっそりしてて女の子みたいだったし………話しやすそう。
いつまでもこのままじゃいけないし……頑張って仲良くなろう。
空也くんはわたしより年下なのに明るくていい子で、わたしにも遠慮せずに接してくれる。
わたしとしてはすごく嬉しいんだけど……
話しかけられるとドキドキしちゃってどうしていいかわからない。
そう。もう二ヶ月もたってるのにまだわたしは空也くんと話せなかった。
恥ずかしいなぁ……わたしのほうがお姉ちゃんなのに。
何かキッカケでもあれば話せるのかなぁ………
ずーん。落ち込みながら家を出る。
うぅ……学校も……行きたくないかも………
………でもお父さんが泣くから頑張って行こう……。

「……ただいま」
………………買い物してたら遅くなっちゃった。
姉さんと空也くんがお腹を空かせてるかもしれない。あとネフェルにエサもあげないと。
ネフェルって言うのはわたしが飼っている小鳥。去年の誕生日にお父さんに買ってもらった。
人なつっこくてすごくかわいい。姉さんにも触らせてあげたいんだけど………逃がしちゃいそうでちょっと怖い。
とりあえず野菜を冷蔵庫にしまって………
「きゃあああああああっ!?」
………!?今のは……姉さんの声………?
わたしの部屋の方から聞こえた。………姉さんっ!?
わたしは急いで部屋へ走った。


………………うーん。
ねぇやが歩笑ねーさんを呼びに行ってもう30分。これはもうアレだね。
歩笑ねーさんの部屋まで行ったけど、いなかったんでそのまま居間でプレステ2とかしてるなぁ………絶対。
ねぇやと付き合って早二ヶ月。もう大体行動パターンが分かってきた。
ふぅ………とりあえずおふろでも沸かしにいこうっと。
犬神家では若葉さんが家にいない事が多いので家事はみんなで分担なのだ。
ねぇやだけは担当決めのくじ引きでいつも勝ってるんで全然やらないんだけどね。
お風呂か………お湯ためて今のうちに入っちゃおうかなぁ………
ご飯食べた後だと、「空也ちゃ〜ん!ワタシと一緒に入りましょっ♪」
みたいな事になるのだ。ねぇやと一緒に入るとドキドキしてきてなんだかおちんちんがヘンになっちゃうんだよぅ………
なーんて事を思いながら廊下を歩いてたその時。
「きゃあああああああっ!?」
………!?今のは……ねぇやの声………?
歩笑ねーさんの部屋の方から聞こえた。………ねぇやっ!?
俺は急いで歩笑ねーさんの部屋へ走った。
階段をかけ降り、部屋へとたどり着く。すると、そこには!
「あ………」
ボーゼンと立ちつくす歩笑ねーさんと
「えっ……えっとね?窓と遊ぼうと思って歩笑ちゃんの小鳥を開けたら部屋のカゴが開いてるの忘れててそのまま廊下のドアから飛んで行っちゃってっ!?」
パニクってるねぇやがいた。
そしてねぇやの後ろには扉が開いた鳥カゴがひとつ。
もしかしなくてもこれは………
「ほ、ほらねぇや。深呼吸して……。何があったの?」
まずはねぇやに落ち着いてもらわないと。
「そっ……そうね!すーはーすーはー………ううっ!?」
「ねぇやっ!?」
「ごほごほ……深呼吸しすぎてくるしいー」
「だあぁっ!!」
あーもうっ!
「ううっ……歩笑ちゃん………お…怒らないで聞いてね……?」


ねぇやが人差し指を付き合わせながら恐る恐る切り出す。
……無理だと思うなぁ。付き合いの浅い俺から見てもこの空間に怒りのオーラが渦巻いてるのはわかるし。
「歩笑ちゃんの小鳥と遊ぼうと思って鳥カゴを開けたんだけど………部屋のドアが開いてるの忘れてて………
そのまま窓から飛んでっちゃって………」
………やっぱり。期待を裏切らないと言うかなんとゆーか。ねぇやらしいといえばらしいんだけど。
「ぽ、歩笑ちゃん。ごめんなさい。今度ばかりは反省してます」
今までは反省してなかったんデスカ、やっぱし。
で、当の歩笑ねーさんはと言うと………ふるふると震えている。
あ。これって………どっかで見たような………思い出したっ!ともねえが姉貴にぬいぐるみ壊された時にっ……!!
「帆波姉さん……嫌い(ボソ)」
「がーーーーん!!!!」
ショックのあまり帆波ねぇやが固まる。
やっぱりぃっ!?
たっ………。それだけ言って歩笑ねーさんは走り去って行った。
「ぽ……歩笑ねーさんっ!!」
だめだ!このままだと姉妹の絆にヒビがはいっちゃう!これは食い止めないとっ!
歩笑ねーさんを追って家を飛び出す。小鳥さえ見つければなんとかなる。歩笑ねーさんの役に立つんだっ!
と、俺がそんな決意を胸に走り出したそのころ。
部屋に取り残されたねぇやはというと、
「ポエムチャンニキラワレタポエムチャンニキラワレタポエムチャンニ……」
部屋の隅で床に”の”の字を書いていた。


(作者・愚弟氏[2004/09/30])


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※関連 姉しよSS「犬神家の夏〜第1.5話〜 空也ちゃん観察日記
※関連 姉しよSS「犬神家の夏 〜第2話〜 「全ては妄想のために」前編


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