「また明日なー!」
「うん!また明日ー!」
みんなに手を振って夕暮れの歩道を走り出す。
そろそろ暗くなってくるから急いで帰らないと。
こっちに来てからもう二ヶ月。

団長たちと探検隊結成してみたり。

「南海の怪物、キジムナーを追え!」
「このタイトルでいいよな、団長!」
「いや、それじゃあインパクトが足らないなぁ。俺はこんなのがいいと思うんだが」
「怪奇!日本最南端の島に妖怪は実在した!!夜毎響き渡る怨念の叫び声!!ガジュマルの木の下で特派員が見た物は!?」
「おぉっ!!スゲェ!それだとグッとミステリー感が出るなぁ、団長!」
「………あのさ。さっきから探検テーマのタイトルばっかり考えてるみたいだけど実際に探検には行かないの?」
「ははは。何言ってるんだよ空也。もし行って本当に出てきたら怖いじゃあないか」
「意味なーーーーい!!」

若葉さんにシゴかれたり。

「空也くん!ほらココにもソコにもホコリがたまってるぞっ!!ウチはペンションなんだからなっ!!掃除やりなおしっ!」
「どこの姑よっ!お父さんはっ!!」
どげしぃっ!!!
「ぐぉっ………腕を上げたな……帆波……さすがにパパ三十二文ロケット砲が来るとは思わなかったよ………ぐふっ」
「いつもだったら清掃の業者の人呼ぶくせにっ……もうっ……なんで空也ちゃんイジめるのよっ」
「だってさぁ!だってさぁ!最近空也ちゃん空也ちゃんって、パパの事全然構ってくれないしさぁ!」
「もぅ……お父さん、ホントに大人………?」


ねぇやにいろいろ連れてってもらったり。

「ほらほら!空也ちゃん!ちんすこう!ちんすこうよ〜♪おいしいから食べてみてっ!」
「なんかクッキーみたいだね……もぐもぐ………あ、おいしい」
「材料は大して違わないしね〜。味もいろいろよっ。黒糖、紅いも、パインにマンゴ味っ☆」
「うわぁ……いろいろあるんだねぇ………」
「で、こっちがウコン茶、ウコン茶よー。体にいいから飲んでみて」
「う、うん」
ごくりとお茶を飲み干す。
「ーーーーーーーーっ!?に………にがぁ………」
「あははははーっ!!ひっかかった〜♪ホントはそのままだと苦いから他のお茶と混ぜて飲むのよね〜」
「うわーん!ひどいよねぇや!」
「あの………」
「ゴメンねっ☆ちょっとイジワルしてみたかったのよ〜。スキンシップスキンシップ」
「うぅ……」
「あのっ!!」
「はいっ!!」
ビックリして振り向く。
「お店の中で騒がないでもらえます……?それに……試食品なんだから………バリバリ食べないで………!!」
うわっ!?店のおねーさん!?しかも体から怒りのオーラが立ちのぼってる気が………
「あのっ……そのっ………」
「空也ちゃんっ!!ダッシュよっ!!」
う、うわぁっ!!」
……………………………
「はぁ………はぁ………あはは……しばらくあのおみやげ屋さん行けないわね………」
「しばらくどころか二度と行けないよぅ………」
「これで国際通りは大体回ったわね……うん、今日はそろそろ帰りましょっか」
「じゃあまた後ろ、乗ってね」
「うんっ!」


ねぇやの自転車の後ろにぴょんと飛び乗り、いいにおいのするねぇやの腰にぎゅっとしがみついた。
「レッツゴーっ!しっかり捕まっててねーっ!」」
ぐん、と風を切って自転車が走り出す。
「明日はどこ行こっか?首里城とか見てみる?」
「うん!いろいろ見てみたいー!あ、ねぇや。そーいえばこっちに来る時におっきなみずうみあったけど、あそこはなんて言うの?」
「えっ……!?あ………あそこはね……うーん」
「あ。あそこのカンバンに書いてある……えっと……漢字分かんないけど………漫……湖……?まんみずうみでいいのかな?」
「うー………ホントはそうじゃないんだけどね………今はそう覚えてて……(出来ればずーっと知らないままでいてほしいけど………男の子だからムリよね〜)」
結局ねぇやはホントの読み方を教えてくれなかったけど。
うん、いろいろあった。最初は不安だったけど友達もできたし今は毎日楽しいなぁ。
でも………まだ一つだけ悩みがある。それは………
……っと。気がついたらいつの間にかもう家の近く。取りあえず部屋にランドセル置いてゆっくり考えよっと。
表はペンションの入り口なので裏口から家に入る。そして階段を上がって自分の部屋へ。
扉を開ける。…………うーん、素敵に違和感。少しゆっくり考えさせてくれないかなぁ………
「出てきてよ、いるんでしょ?ねぇや」
返事はない。けどもうバレバレなので押し入れを開ける。
そこにはクラッカーを持ってスタンバってるねぇやがいた。
「わっ!?く、空也ちゃん………何故ワタシが押し入れの中にいると分かったのっ?」
やっぱり頭脳がマヌケだったりするんだろーか、この人は。
「ねぇや……さすがにこれはわかるよー。押し入れの中身を外に出して片付けてないじゃないかよぅ!!」
部屋の中洋服とかマンガとかでぐちゃぐちゃになってるってーのに分からないはずないでしょーに。
「あン♪よくぞ見破ったわねっ!ポルポルくぅ〜ん」
「それはいいから。どうしたの?ねぇや。別に今日は俺、落ち込んでないしイジメられてもないよ?」
「うん………でも空也ちゃん……最近なんか悩んでるみたいだし……元気付けてあげたいかなぁって……」
あ……ねぇやに分かるぐらい悩んでたんだ……俺。
「もしかして……歩笑ちゃんのコト?」


!?
ズバリ言われたのでビクっとする。そう。こっちに来てから二ヶ月もたってるのにまだ歩笑ねーさんと一言もコミュニケーションが取れてないんだ。
「そっか……やっぱり………まだダメ……?」
「うん……話しかけようとすると逃げられちゃう……でも結構視線は感じるから嫌われてはいない……のかな?」
「空也ちゃんの事は嫌いどころか多分好きよ。もう……歩笑ちゃんの恥ずかしがり大将軍っ!………我が妹ながらいくじなし〜」
そのまま二人でう〜んと考え込む。
………五分後。
ポン!とねぇやが手を打った。
「よし!ここはお姉ちゃん権限を発令します!」
?何を思い付いたんだろう、ねぇや。
「姉の威厳で歩笑ちゃんに空也ちゃんと二人っきりでお話するように言うのよっ♪」
わー、力技だよぅ。ねぇや!
「そうと決まれば急いで歩笑ちゃんを呼んで来るわねっ☆」
ねぇやが歩笑ねーさんの部屋に行こうと立ち上がる。
………!ちょっと待った。がしっとねぇやの腕をつかむ。
「……どうしたの?空也ちゃん。まだ心の準備が出来てない?」
「ねぇや……気持ちはうれしいんだけど………押し入れの物しまってから行ってよぅ」
「ちぇ〜……バレた……」


で、結局ワタシは空也ちゃんの部屋の片づけを手伝わされてしまった。
「あははっ!コーレ面白〜い!」
「ねぇや!マンガ読んでないで手伝ってよぅ〜」
………まぁ、ちょっとだけサボったりもしたけど。
そのせいで大幅に遅れちゃったけど、今ワタシは歩笑ちゃんの部屋の前にいる。
コンコン。
「歩笑ちゃ〜ん………いる?」
返事がない。いないのかな?
ノブを回してみる。
…………かちゃり。あっけなくドアが開いた。
珍しい。歩笑ちゃんはキチッとしてる子だから外に出る時は大体ちゃーんと部屋に鍵をかけて出る。
という事は……
「歩笑ちゃ〜ん。寝てるの?」
中を見回してみても歩笑ちゃんの姿はどこにもない。
「あらら……ほんとに珍しいわね………カギかけないで行くなんて」
ぴんっ!
「あっ!でもこれって………チャンスかも〜……」
そう。歩笑ちゃんの部屋には去年の誕生日にお父さんに買ってもらった小鳥がいるのだ。
ワタシには触らせてくれないのよねー。歩笑ちゃんったら。
「帆波姉さん……逃がしちゃいそうだし……」
とかなんとか言ってくれちゃってるのよね〜、この妹ったらもう。
ふっふっふ〜。と、言うワケで。歩笑ちゃんが帰ってくるまで小鳥と遊んで待ってよーっと。
まず、エサでもあげてみましょっか。
ピッ……ピュルィ?
ポッキーを鳥に向けて差し出す。
………あっ!食べた食べた!チョコの部分はダメだけどビスケット部分は食べるのねー♪
あー………かわいー………やっぱり直に触りたいなぁ………でも逃げちゃうかもしれないしぃ………
でもでも!ちょっとだけなら………
ワタシは誘惑に負け、部屋のドアを開けっ放しなのも忘れてカゴの出入り口を開けた。


(作者・愚弟氏[2004/09/18])


※1つ次 姉しよSS「犬神家の夏 〜第3話〜 「クー君と呼ばれた日」中編
※2つ次 姉しよSS「犬神家の夏 〜第3話〜 「クー君と呼ばれた日」後編
※関連 姉しよSS「犬神家の夏〜第1話・前編〜
※関連 姉しよSS「犬神家の夏〜第1.5話〜 空也ちゃん観察日記
※関連 姉しよSS「犬神家の夏 〜第2話〜 「全ては妄想のために」前編


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