ミドル好きに25のお題 21-25


21.最後の番人

22.永遠

23.子供たちへ

24.ルーザー / キンタロー→ルーザー

25.twenty five years


21.最後の番人

22.永遠

23.子供たちへ

24.ルーザー ――キンタロー

今でも時々は親父のことを考える。そんな時、俺は無意識に胸に手を当てている。

顔を見たのはほんの少しの間だけのことで、それも本来ならば見るはずのない姿だった。
俺の父は俺が生まれてすぐに死んでいて、俺は俺じゃない奴に身体を乗っ取られて、
俺の父ではない人間を父と呼んで、長い年月を過ごしていた。
まったくとんでもない話だけど、それが俺なのだ。

今では全てがあるべき所に収まったはずなのに、時にふとこれでいいのだろうかと思ってしまう。
俺はどうやらあるべきでない状態の方に、すっかり慣れてしまっていたらしい。
そんな時、俺が俺であることを思い出させてくれるのは、
南の島で本来ならばあり得べきでない邂逅を果たした父の姿だった。

そうして俺は親父を殺し、親父は俺に「進め」と言った。だから今の俺がある。
混乱しきった俺の意識の中でも、それだけは確かなことなんだ。

島から帰って、父が遺したモノを片っ端から紐解いた。
その多くは彼が進めていた研究の記録だった。
やっと手にした本来の人生を、科学者として歩むことに決めた俺は、学ぶにつれて
父であった男の偉大さを改めて噛みしめている。
俺の父は天才だった。

胸に手を当てて想う。
この身体の中にはあの男の血が流れている。
この細胞の中には、彼の遺伝子が遺されている。
俺は生まれると同時に父を殺したが、未だに父を乗り越えてはいない。
知るべきことは沢山あって、やるべきことはそれ以上に多い。
だが迷わずにいられるのは、道を指し示してくれた人がいたからだ。

遙かなる天才、白き太陽。俺もいつかそこへと辿り着くことを願いながら。
胸に手を当てて心の中で彼の名を呼ぶ。我が父、ルーザーと。

2004.7.17


25.twenty five years

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