別に戦うのが好きじゃない。
でも、最近になって自分がわからなくなってきた。
本当に嫌いなのか。
実際、私は今もこうしてクロウと戦っている。
「ふっ!はっ!たぁ!」
そして私は、クロウの命を奪っているのだ。
「パープル・ストライク!」
「グギャァァアァ!」
そう、こうして…。
「そりゃあ、くらえ!」
空也もそうなんだろうか…。
私と一緒に戦ってくれるけど…。
「ゲゲッ…」
空也が戦っているクロウが笑ったように見えた。
おかしい、何かが…。
クロウは岩の上に飛び乗り、空也をじっと見つめている。


「このー!下りてこいコノヤロー!」
するとクロウは小さく飛び上がり…
「はっ!まさか…空也、逃げて!」
「へ?」
「ガァァァァァァ!」
勢いよく岩を蹴りつけた!
破壊された岩が散弾銃のように空也に襲い掛かる!
「うわぁぁぁぁ!!」
「う…く、空也!」
そしてクロウは、岩で痛めつけられた空也の頭上から襲い掛かってきた。
手に持った岩を思い切り空也に…
「がっ…!」
叩き付けた。
ガチャンという大きな音が鳴り響き、空也はガクリとその場に倒れこんだ。
ヘルメットが破壊され、そのあとから空也の顔が見える。
「空也!空也!」
近くに寄って何度も声をかけたが、返事をしない。
まさか…まさか…。
「…お前…」
「ゲッ…?」
「許さない…絶対に許さない!
 うわぁぁぁぁぁぁあぁぁあ!!!!」
その後のことは、全然覚えていない。
私の体が暴走し、勝手に動いたような感じだった。
ただ、私が気がついた時、クロウはすでに死んでいた…。


「…!…ここは…」
どこだろう?
白い天井の部屋で、俺は目を覚ました。
「おお、気がついたか、空也よ。」
「おはよう、空也。
 体調はどう?」
「よかった〜。
 3日も寝てたんだ、心配したよ。」
「まったく、油断してんじゃないわよ、イカ。」
雛乃姉さんに要芽姉様、ねぇねぇに姉貴がそろって俺のそばにいた。
ずっと看病していてくれたのだろうか。
「医者の話では、骨とか脳には異常がないらしいわ。
 いつ退院しても大丈夫だそうよ。」
「そ、そうなんだ…。
 あれ?ともねえとお姉ちゃんは?」
俺の質問を聞くと、みんなが少し暗い顔になった。
あれ?俺何か変な事聞きました?
しばらくして雛乃姉さんが、
「海はあれから部屋にこもって『C3』の修理をしておる。
 巴は…ちと、な…。」
どうしたんだろう?
まさか、俺が怪我をしたことに責任を感じているのかな?
「そうですか…
 俺、とりあえず家に帰りたいんですけど。」
「わかったわ。
 手続きをしてきましょう。」
要芽姉様はそう言うと、足早に病室を出て行った。


俺は家に帰ってきたけど、ともねえはいなかった。
お姉ちゃんは出迎えをしたかと思えば、すぐに部屋に戻ってしまった。
部屋には『立ち入り禁止』の張り紙がされ、中からは不思議な音がしている。
「ご飯の時は呼んでね〜。」
と言っていたが、ちゃんと食べてるかどうか怪しいものだ。
なんだか少しやつれていたし。
「空也よ、ちょっと我の部屋に来い。
 話がある。」
雛乃姉さんに呼び止められ、俺は姉さんの部屋にお邪魔することにした。
「何なんです、話って?」
「うむ、巴のことだ。」
俺もそれが聞きたかった。
この体が無事だということは、ともねえが俺をかばって、クロウを倒してくれたからだろう。
でも、なんで俺の前に姿を見せないんだろうか?
「あれから巴の元気が無くてな。
 飯を作る姿を見ても覇気が感じられぬ。
 これを打開するのは空也、お前をおいて他にはおらぬ。」
「はぁ…。」
「巴は買い物に行っているはずだ。
 そばにいて、話を聞いてやるがよい。」
さすがは柊家の長女。
みんなの事を誰よりも心配してくれている。
こういうところは、他のお姉ちゃんたちには真似できないだろう。
「わかりました、早速行って来ます。」


「巴ちゃん、これはオマケだ!
 持っていきな!」
「ありがとう…。」
魚屋のおじさんはいつも笑顔だ。
でも、私は笑顔でいることができない。
とぼとぼと海沿いを歩いていたら、空也に呼び止められた。
「ともねえ!探したよ!」
「空也…もう大丈夫なのか…?」
「この通り、ピンピンしているよ。」
「よ、よかったな…。」
いつもなら、空也と話していると自然と笑顔になる。
でも、今の私は…。
「ともねえ、責任を感じているの?」
「え…?」
痛いところを突かれた感じだった。
「う、うん…。
 だって、空也を戦いに巻き込んだのは私だし…。」
それだけじゃない、私は今や柊家全体を戦いに巻き込んでしまった。
「空也はなんとか無事だからよかったよ。
 でも、ひょっとしたら今度は雛乃姉さんたちが…。」
自然と、涙がこぼれてしまった。
弟の前なのに…。


「いいのに、そんなこと。」
「え…?」
「ああなるのが嫌なら、今よりもっと頑張ればいいことじゃないか。
 俺みたいなことに、お姉ちゃんたちがならないように。」
「だ、だって…。」
「俺たちはともねえが戦っているのを知って、何か手伝える事はないか、
 自分にできる事は何なのか、それを考えて戦っているんだよ。
 ともねえと同じで、ともねえがいなくなったら、俺たちだって悲しいんだ。
 いなくなってうれしい人なんて、一人もいないよ。」
「く、空也…。」
「ともねえは俺たちを守る、俺たちはともねえを守る、それでいいんじゃないか。
 それが、今俺たちにできる事なんだから。」
自分にできる事…。
私は空也をぎゅっと抱きしめた。
「空也、ありがとう。お姉ちゃんが悪かった。
 私は自分に出来る事をするよ。
 誰も悲しまないように…空也、協力してくれるか?」
「もちろん!それはお姉ちゃんたちだって同じだよ!
 さ、家に帰ろう。」
「うん!」
そう、私は逃げない。
誰かが悲しむ顔なんて見たくない。
だから私は戦うんだ。
でも…あの力は…一体…。
あれは憎しみが生んだ力なのか、それとも…?


退院してから4日が過ぎた。
相変わらず海お姉ちゃんは部屋にこもったままだ。
「一体何をしてるんだろう?」
しかも、昨日はご飯の時に呼んでも返事がなかった。
ただ、中で音はしているから生きてはいるらしい。
晩ご飯も済ませ、食器を洗っていると…。
キンキンキン!
「ともねえ!」
「うん!」
「ど、どうやらあいつらが出てきたらしいね〜。」
クロウの存在をキャッチすると、海お姉ちゃんがげっそりした顔でやってきた。
「お姉ちゃん大丈夫なの!?」
「へ、平気だよ〜。間に合ってよかった〜。
 くーやはトラックに乗ってて〜。」
本当に大丈夫なのか?
とりあえず俺はみんなと一緒にトラックに乗り込み、ともねえは『ラスカル』で出て行った。
よく見ると、中にある『C3』の形が変わっている。
肩は横に突き出し、胴体はその形状が見事に変更され、カラーリングも一新されていた。
「お、お姉ちゃん、これは?」
「くーやは強い子だから、絶対戦うと思ってね〜。
 『C3』の修理をするついでに、大幅な改造をしたんだよ〜。
 名前は『C3-X』って言うんだ〜。」
蒼く光り輝くボディから、その力強さがひしひしと伝わってくるようだ。
「お姉ちゃん、これのために今まで…」
「えへへ…。くーやには頑張ってもらいたいからね〜。」
ああ、お姉ちゃん、俺なんかのために…。
「お姉ちゃ〜ん!」「くーや〜!」
ガシッ!
みるみるうちに海お姉ちゃんは生気を取り戻した。
「やれやれ…相変わらずだのう、お前らは。
 それでは出陣するぞ。空也はそれを身に着けい。
 瀬芦里、出発じゃ!」


俺が到着したころ、ともねえは苦戦していた。
2対1だし、何より敵のクロウが結構強い。
その戦いの中に、俺は猛然とダッシュして行った。
「ともねえ、お待たせ!」
「うん、空也はそっちをお願い!」
「さぁ、お前の相手はこの俺だ!」
なかなかすばしっこいやつが相手だ。
しかし、力比べではこっちのほうが上とみたぜ!
「そらそらぁ!」
「ガッ!!」
連続パンチを浴びせ、隙を見て掴みかかる。
「むんっ!」
俺は軽々とクロウを放り投げた。
すげぇ、確かにパワーアップしている。
クロウの攻撃を少しうけたけど、特に大きなダメージにもならない。
頬リ投げたクロウめがけて、即座に『ライトニングプラズマ』の発射体勢をとった。
「くらえ!」
しかし、ひらりとかわすクロウ。
当たらなければどうということはないってことか。
撃てども撃てども、全く当たる気配がない。
スピードを利用したヒットアンドアウェイで攻めてくる相手に、かなりの苦戦を強いられた。
接近戦ならパワーで勝るこっちのほうが圧倒的に有利なのに…。


「空也、新兵器の『ガトリングスマッシャー』を使いなさい。
 ロック解除コードは『98』よ。」
「よ、よし!」
要芽姉様からの通信が入り、俺は言うとおりにした。
『クーヤチェイサー』から『ガトリングスマッシャー』を取り出す。
こいつは大きいから折りたたみ式になっていて、組み上げるにはロックを解除しなければならない。
「9…8…と。」
コードを入力し組み上げた俺は、ヘルメットの『ロックオンモード』をONにして大型銃を構えた。
「ようし、避けれるものなら避けてみろ!!
 うおおおおおおお!」
放たれた無数のエネルギー弾になす術もないクロウ。
一度当たったらもう逃げることは不可能だ!
「ガガッ…グァァァァァァ!!!」
断末魔の悲鳴をあげ、クロウは爆発した。
「よっしゃあ!どんなもんだい!」
「倒したんだな、空也。」
「ともねえ。」
どうやらあっちも終わったらしい。
少し苦しそうだったが、無事で何よりだ。
それにしても、いつの間に倒したんだろう?
全然そんな気配が感じられなかったけど…。
ま、戦闘中にそこまで気が回るわけないか。
「作戦終了、であるな。
 今から迎えに行くぞ。」
雛乃姉さんからの声を聞き、俺たちは帰るべき場所に帰る。
海お姉ちゃんはさらに部屋で作業を進めていたが、今の俺はゆっくり休むことにした。


巴は布団の上で仰向けになりながら考え事をしていた。
自分の中で始まりつつある異変。
「新しい力、か…。
 私は…私でいられるのかな…。」


(作者・シンイチ氏[2004/11/17])


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