ピリリリリリリ―! 
「たぁっ!」 
電子音が鳴ると同時に、加奈は先手を打って早苗に飛びかかった。 
技術ではどうやっても敵わないので、力技で無理矢理押さえ込むつもりなのだ。 
しかし、そう簡単にはいかない。 
タックルはあっさりとかわされ、加奈は不様にマットにつっぷした。 
「ぐっ…」 
お腹から着陸してしまい、息がつまる。 
「残念でした〜」 
早苗はその隙を見逃さず、加奈の腰にちょこんと馬乗りになる。 
そして加奈の両手首を掴み、後ろに引っ張る。 
「あぅっ……!」 
加奈の背骨が弓なりにしなり、腰に痛みが走る。 
「いたた……くうっ…」 
「加奈ちゃん、体固いよー。運動得意なんだから、もっとストレッチとかもしなきゃ」 
早苗に腕を捻られているので、肩に力が入らない。 
ぐっぐっと両腕を引っ張られ、腰の関節が悲鳴をあげている。 
だが、早苗は二・三分攻めると腕を離して加奈の体から立ち上がった。 
「加奈ちゃんはこれでギブする訳ないもんね。まだまだやるでしょ?」 
基本的に、同じ固め技でずっと攻め続けるのは無しになっている。 
強いて言えば「ギャラリーが退屈するから」というのが理由だが、早い話が暗黙の了解というやつだ。 
けれどこうあっさりと技を解かれると、手加減されているようにすら感じられてしまう。 
「当たり前だよっ!今日は立派な作戦があるんだから」 
加奈は腰をさすりながら起きあがった。 
そう。今回は特に、簡単にギブアップする気はない。 
一旦自分のペースに持ち込みさえすれば、 昨日姉に教わった戦い方で勝つ自信があるのだ。 
…とは言っても、そこまでも難しいのだが。 


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