振り回される手足は何度も弘毅の体に当たるが、所詮は子どもの力だ。特に妨げにはならない。
弘毅は由香の左腕を離し、右腋も同じようにくすぐった。
脇腹から腋にかけては人さし指と中指で、階段を登るような動きで。
綺麗な腋のくぼみは指先で丹念になぞり、時には爪で軽くひっかく。
「う゛ぅぅぅっ!あっ……あは…はははははっ!」
額に汗を浮かべて悶える由香は、少しでも指から逃れようと、激しく左右に身をよじる。
ワンピースが乱れ、肩や脇腹の日焼け痕が見え隠れした。
小麦色になった部分と日に当たらない白い部分が、線を引いたようにくっきりと分かれている。
随分と焼けていたので弘樹は気付かなかったが、もとの肌の色はかなり白いようだ。
弘毅は腋への責めを止めると、由香を俯せに寝かせた。
起き上がる暇を与えず、その腰のあたりに体重をかけないように注意して座る。
「っ…はぁ…」
由香は弘毅の意図を読めないながらも、乱れた呼吸を整え、腋をぎゅっと締める。
「今のはちょっとキツかっただろ?今度はちょっと優しいのにするからな」
弘毅は言いながら、由香の髪を纏めているゴムを外した。
「えっ……なんで…?」
量の多い髪は、重力に従ってパサッと広がる。
弘毅は返事をせずに、両手にそれぞれ由香の髪をいくらか纏めて持った。
そして、髪の先を由香の背中へと近づけていく。
「…っ!?ぁ……やっ……ぅぅんっ!」
弘樹は束ねた髪を筆のように使い、なめらかな由香の背中に這わせた。
指で触るのとはまた違うくすぐったさに加えて、むず痒いような疼きが広がる。
肩甲骨のあたりを覆い尽くしたかと思えば、先の方で肩の日焼け痕を丁寧になぞる。
「ぅ……ひぁっ!…これ…やだぁっ…!」
由香はいいようの無い感覚に翻弄され、たまらず悲鳴を上げる。
別に自分が何かしている訳ではないのだが、
自分の髪でくすぐられていると意識すると、何故か妙に恥ずかしい。


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