「はぁ?」 このぶっ飛び天使は今度は何を言い出すのでしょうか。 「だってだって、ちえりちゃんには聞いちゃいけないんでしょ!?」 「それはそうだけど、何も人に訊いてまで読む本じゃないでしょうが」 ドクロちゃんは僕のもっともな言い分にも耳を貸さず、じりじりと詰め寄ってきます。 「もちろん、桜君が責任を取ってくれるんだよね?」 追い詰められ、僕の背中が壁に当たりました。 「いや責任って言葉の意味分かってる?僕には何の責任も…」 ゴガァッ! エスカリボルグが僕の右頬すれすれを通過して、壁にめりこみました。 ドクロちゃんはエスカリボルグをそのまま放置し(せめて抜かないんでしょうか)、ぺらぺらと本をめくりました。 「さぁ桜君、まずはこれから読んで―あれ?」 どうしたのでしょう?彼女から発せられていたどす黒いオーラが消えました。 「ふりがな…入ってる」 「えぇっ!?あ、ホントだ!思いっきり振り仮名がながってええぇぇ!?」 僕も既に読破した一冊目にも載っていた、「前立腺」はまあギリギリセーフとしましょう。 けれどドクロちゃんが開いたそのページには、少年誌にはとても載せられないような 単語がびっしりと書いてあるのです。それもリアルなイラスト付きで! 「ド、ドクロちゃん…振り仮名ふってあるんだから、一人で読めるよね?」 「…うん」 よし、これはいけそうです。純情な僕はなるべく本を見ないようにしながら続けました。 「だったら僕に一定の間合を保持する権利をくれないかなぁ。 何かまた意味不明な理由で撲殺されそうだし」 言いつつ僕はにじりにじりとドクロちゃんの横を通り過ぎあべし。 足を掴まれ、成す術も無く床と接吻しました。 「痛たたた…何するのドクロちゃん!」 俯せに倒れたままドクロちゃんを見上げると、彼女は物分かりの悪い息子を叱りつける 母親のような表情をしています。 「それはそれ、これはこれ。桜君はまだ自分の責任を取ってないでしょ?」 と、僕の足を掴んだままベッドに歩いていくドクロちゃん。