「うー。まだふらふらするよ…」 
数分後。三人は再び、絨毯の上に座っていた。 
勿論千佳は着替えて、今は膝下まである短パンを履いている。 
「私は約束してからやったんだから悪くないよ。それより―」 
二人はじと、と麻美を見る。 
「だ…だって、由美ちゃんすっごく楽しそうだったし、麻美も千佳ちゃんのこと気持ち良く 
させてあげたかったし…」 
千佳は無言でずいっと詰め寄り、麻美の言葉を遮る。 
「うー…」 
それでも、千佳が「怒っている」という感じではなかったので、麻美はひとまず落ち着きを取り戻した。 
「ね、由美ちゃんてばさ。由美ちゃんも何かフォローしてよ」 
麻美が千佳の視線から逃れるように話を振ると、由美は「ん?」と顔をあげる。 
由美はじゃれあう(麻美はかなり必死だが)二人に構わず、 
マイペースにトレイに盛られたクッキーを頬張っていたのだ。 
「千佳。まぁ、麻美も最後の方までは我慢してたんだし。 
情状しゃくりゃ……しょ…酌量の余地はあるかな」 
由美は塾で習ったばかりの四字熟語を噛みつつも、一応麻美のフォローをする。 
麻美はよく分からなながらも、自分を弁護しているらしいとは理解した。 
しかし、由美がその後に続けた 
「まぁ、さっき千佳が言ってたので許してあげればいいんじゃない?」 
という台詞の意味は全く分からなかった。 
「『千佳ちゃんが言ってたの』って?」 
「さっきの内緒話だよ。私の電気あんまが終わったら教えるって言ったでしょ」 
「あー。ところで千佳ちゃん…質問があるんだけど」 
麻美の額を、一筋の汗が伝う。 
「内緒話の内容でしょ?ちゃんと教えるから、そんなに焦らないでよ」 
勿論それもあるが、もう一つ。 
「いや…あのさ。麻美、なんでだっこされてるのかなーって」 
そう。千佳はごく普通に会話しつつ、麻美に近づき、ひょいっとお姫様だっこしたのだ。 
「まぁまぁまぁ。両方ともすぐに分かるから」 
千佳は麻美の軽い体をベッドにぽすんと置き、自分も腰を降ろす。 
「由美ちゃん」 
「分かってるー」 
由美もベットに乗り、ついさっきまでと似たような形になった。 
違うのは、千佳と麻美の位置関係だけ。 


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