罰ゲーム 4
 次の土曜日。その日も空は晴れていた。
この日の放課後、俺は1週間前と同じようにナオと2人で帰宅の途に着いた。5月の風は先週より少し温かくなったような気がしていた。
学校を出て10分後。幅の広い通りへ出ると、俺たちは横断歩道の手前で立ち止まった。
目の前の信号は赤々と光っていた。そしてたくさんのバスや車が道路をビュンビュン行き交っていた。
俺はこの時、ナオの立ち位置に注目していた。 彼が立っている位置はランドセルを背負った少年がおもらしした場所とまったく同じだった。
それにしても、ナオはちゃんとその事を意識してその場所に立っていたんだろうか。
1週間前、あの少年はたっぷりおもらしして灰色のアスファルトを真っ黒な色に染めた。思えばあれがすべての始まりだった。
「お昼ご飯を食べたら、すぐ智行の家に行くからね」
ふいにそう言われ、俺はナオの大きな目を見つめた。その目は優しく微笑んでいた。
この時俺は、ナオが来るまで1人きりでゲームに勝つ訓練をしようと思っていた。

*   *   *

 ナオが俺の家へ来たのは午後1時半頃の事だった。
彼は先週よりも30分早く俺の所へやってきた。 ナオのおもらしを待ちわびている俺にとって、30分でも早く彼が来てくれるのは歓迎すべき事だった。
彼が俺の部屋へ入ってきた時、すでにゲーム対戦の舞台は整えられていた。 明るく照らされる床の上には2枚の座布団が敷かれ、ゲーム機とコントローラーはその手前に置かれていた。 そして20インチのテレビにはゲームのスタート画面が映し出されていた。
この時2つあるコントローラーのうち1つはかなり温まっていた。 それはもちろんナオを待つ間に俺が1人でゲームをしていたためだった。

 この日のナオは薄い水色のジーンズをはいていた。膝のあたりが白くなっていて、わりとぴったりしているジーンズだ。 そして彼が羽織っているパーカーは、先週と同じく高級なブランドものだった。
俺はナオのそんな姿を見ただけでもう股間が膨らみ始めていた。 薄い色のジーンズが濡れて黄色いシミができる様子を想像すると、どうしても興奮せざるを得なかった。
俺たちはなんとなく黙ったまま座布団の上に腰掛けた。すると午後の日差しが背中を照りつけて体がすごくポカポカした。
その後先にコントローラーを手にしたのはナオの方だった。
彼はキャラクターを作る画面をテレビに映し出し、コントローラーをゆっくりと操っていつものように自分とそっくりなキャラクターを作り上げていった。
痩せ型で、顔は面長で、大きな目をした柔道着姿の男。 テレビ画面に映るバーチャルなナオは、気合を入れるようにぎゅっと黒帯を腰に巻きつけた。
それから俺もようやくコントローラーを握った。手にした黒いコントローラーは温かかった。
この日の俺はキャラクターを作り出す作業が上の空だった。
気づくとテレビ画面には丸顔で相撲取りのようなボディーを持つ男が映し出されていた。それは決してかっこのいい男とは思えなかった。 でも俺はテレビに映るバーチャルな自分になどまったく興味がなかった。俺の興味は、ナオのおもらしだけだった。
「ナオ、今日の罰ゲームは何にする?」
俺は丸顔の男に趣味の悪い銀色のガウンを着せ、テレビを見つめたままでナオに例の問い掛けをした。するとナオは一瞬口ごもった。
俺はその一瞬の間がすごく怖かった。ナオが俺の気を削ぐような罰ゲームを提案する可能性がないとは限らなかったからだ。
たった10秒足らずの沈黙が、俺には永遠のように感じられた。
だからこそ、彼が沈黙を破った時はほっと胸を撫で下ろした。
「僕、この前のリベンジがしたい。今日の罰ゲームは先週と同じだよ!」
俺の心配をよそに、彼の言葉はきっぱりとしていた。
隣にいる彼に目を向けると、ナオの目尻がつり上がっている事に気づいた。彼はしっかりと前を見つめ、前歯で下唇をきつく噛み締めていた。
戦闘モードに入ったナオは座布団の上に正座して長く伸びた横の髪をサッと耳に掛けた。 それから真っ直ぐにテレビ画面を見つめ、がっちりコントローラーを握りしめた。
「絶対負けないからね!」
自分に言い聞かせるようにそう言ったナオは、更にきつく唇を噛んだ。
俺はナオの並々ならぬ気迫に押されそうになり、気持ちを落ち着かせるために小さく深呼吸をした。

 バン、ドカッ、バン…
テレビ画面の中でバーチャルな俺たちの戦いが始まると、明るい部屋の中にゲームの効果音が続いて何度も響き渡った。
気迫十分なナオは最初から積極的な動きを見せた。
白い柔道着を着たバーチャルなナオは自由自在にフィールドの中を動き回り、効果的な飛び蹴りを繰り出して少しずつ少しずつ俺を追い詰めようとしていた。
ゲーム開始当初、俺は防戦一方だった。
ナオの腰に巻かれた黒帯が揺れ、丸顔の俺は逃げ惑う。そんな事を繰り返していると、俺のスタミナはゆっくりと減り始めた。
しかし俺はこのまま逃げ続けるつもりなんか毛頭なかった。俺はこの時ナオがどんな作戦で戦うかを見定めていたのだった。
ナオは得意の飛び蹴りを連続して繰り出すのではなく、キックの後はすぐ後ろに下がって俺の攻撃を回避しようとしていた。
続けて何度も蹴ろうとすると、その間に必ず相手のパンチを2度は食らう事になる。 それが分かっているナオは、できるだけ俺の攻撃を避けてスタミナを温存するという作戦に出たのだった。つまりそれは長期戦だ。

 彼の動きを読んだ俺は、やがて反撃を開始した。
俺は太目の体を低くしてナオの飛び蹴りをよけ続けた。 するとナオのキックは俺の体にかする程度になり、相手に効果的なダメージを与える事が難しくなった。
繰り出したキックが相手にうまく命中しなかった時、体勢を立て直すのにわずかな時間がかかる。俺はその隙を狙って小さなキックを繰り出す事にした。 これを繰り返す事によって、ナオのスタミナは少しずつ減っていくという寸法だった。
この戦い方は、ナオが来る前に1人で訓練してあみ出した必勝法だった。

 ドカッ…
ナオにキックを浴びせた後、俺は後ろに下がって体を左右に動かした。 そしてナオが追いかけてくると飛び蹴りを食らう瞬間に体制を低くする。これを何度も繰り返すと、ナオはしだいにイライラしてきたようだった。
彼は普段はおとなしいけど、小さな事でムキになる癖がある。 ナオは自分の戦い方を封じられる事が我慢ならなかったようで、何回飛び蹴りを外してもまた同じようなキックを繰り出してきた。
俺はちゃんとナオの性格を読んでこの作戦を開始したのだった。
やがて彼はムキになってどんどん前へ出てくるようになった。 どんな事をしてでも自分の得意技である飛び蹴りを使って俺を倒したい。ナオの心の中にその思いが充満している事は手に取るように分かった。
でも接近戦になると俺の方が断然有利だった。接近戦ではいかに早く多くのパンチを繰り出すかが重要だ。 でも元々キックが得意なナオは、パンチを使うのがあまりうまくはなかったのだ。
ナオは1つの事に考えが及ぶと他の事はどこかへ飛んでいってしまう。この時ナオは、恥ずかしい罰ゲームの事などすっかり忘れていたに違いなかった。
彼が我を失うと、ゲームに勝つ事はいとも簡単だった。
ナオが飛び蹴りを繰り出すと、彼の腰に巻いた黒帯が躍る。俺が紙一重でナオの飛び蹴りを避けると、銀色のガウンがヒラヒラと揺れる。
長い時間それを繰り返していると、画面上部に表示される2つの赤いバーのうち1つだけが徐々に短くなっていった。 それはもちろんナオのスタミナが減っている事を表していたのだった。
俺はゲームの決着が着く随分前から勝ちを確信していた。冷静さを失ったナオに勝ち目などないからだ。
ナオのスタミナは静かに確実に減り続けていった。俺は画面上部に表示される赤いバーを見つめ、すでにナオがおもらしする瞬間へ思いを馳せていた。
すると頭の中が妄想でいっぱいになり、ゲームの効果音などまったく耳に入らなくなった。
午後の日差しに照らされる床の上に水たまりを作って頬を染めるナオ。水色のジーンズにシミを作って恥ずかしそうに俯くナオ。
その時彼は泣いてしまうだろうか。それともただじっと水たまりを見つめているだろうか。
俺はナオのスタミナがゼロに近づくにつれて股間を更に膨らませた。
下半身はムズムズしていたけど、それでも指はしっかりと温かいコントローラーを操り続けていた。

GAME OVER

真っ黒なテレビ画面にその黄色い文字が躍ると、ナオは呆然としたようにピクリとも動かなくなった。
彼は後半頭に血が上って自分のスタミナの数値を確認する事さえ忘れていたようだった。

*   *   *

 それから5分後。ナオはベッドに寄りかかって床の上に体育座りをし、両手で膝を抱えて俯いていた。
やがて俺は彼が泣いている事に気づき、ナオの隣に座って軽く頭を撫でてやった。太陽に透けるナオの髪はとても柔らかくて温かかった。
「ナオ、泣くなよ。元気出して」
そうは言っても、彼はすぐには泣き止まなかった。声も立てずに泣いている彼を見ると、俺はナオがかわいそうになってしまった。
「おもらしするの、恥ずかしい?」
俯くナオに問い掛けると、彼は小さくうなずいた。 俺はこの時、先週ナオがおもらしした時の姿をリアルに思い出していた。
あの時彼はベッドに仰向けになり、明るい日差しの下でしっとりと紙オムツを濡らした。 ナオは赤ちゃんのように小指をしゃぶり、気持ちよさそうな顔をして放尿しているように俺には見えた。
でも本当は少し違っていたのかもしれない。あの時ナオは恥ずかしくてたまらなかったのかもしれない。
今彼が泣いているのはそのせいなのかもしれない。ナオはあんな罰ゲームを提案した自分を悔やんでいるのかもしれない。
俺は時々鼻をすすって泣く彼を愛しく思っていた。ナオの気持ちが落ち着くまでは、ずっとそばにいてやりたいと思った。
遠慮がちに彼の肩を抱くと、ナオは少しだけ顔を上げて俺に身を任せた。彼は両手で顔を覆ってそれからしばらく泣き続けていた。

 なかなか泣き止まないナオの肩を抱いていると、太陽が少し低い位置へ移動した事に気づいた。
夕日に変わる前の日差しはやっぱり温かく、腕に感じるナオの温もりも同じようにポカポカしていた。
俺はナオが落ち着くまでずっとそばにいてやりたいと思っていた。でも…長い時間がたつとそのうちおしっこがしたくなってしまった。
こんな時にトイレに立つのは不謹慎だ。それは分かっていたけど、差し迫る尿意を堪えるには限界がある。
電源を切ったテレビのブラウン管を見つめると、そこには並んで床の上に腰掛ける俺たちの姿が映し出されていた。
ナオは顔を覆って泣いていて、その体は斜めになって俺に寄りかかっていた。
俺に身を任せて泣いているナオを手離すのは本当に気が引けた。でも、こればっかりは俺にもどうしようもなかった。
股間の膨らみは収まっていたけど、膀胱の膨らみは爆発しそうだった。 腹に力を入れても、両足をきつく閉じても、差し迫る尿意はまったく引いていく気配がなかった。

 もう限界だ。今トイレに立たないとおもらししてしまう。
そこまで切羽詰った俺は、遂にナオを抱き寄せる手を離して床の上に立ち上がりかけた。 するとその瞬間に、延々と泣き続けていたナオがパッと顔を上げて俺の目を真っ直ぐに見つめたのだった。
「ねぇ、おしっこ」
甘えたようにそう言うナオが、俺を再び興奮させた。
俺を見つめるナオの大きな目は潤んでいて、白い頬にはまだ涙の粒が光っていた。そして体育座りをするナオの両足は小刻みに震えていた。
「智行、オムツして」
ナオはそう言って俺の手を握った。今まさに床の上に手をついて立ち上がろうとしていた俺の右手を、強い力でぎゅっと握った。
体の全神経がきつく握られた右手に集まり、体のすべての血液が股間に集中し始めた。 俺は自分に襲い掛かる尿意も忘れ、ひどく興奮してナオの手を強く握り返した。
「早く。もう出そうなんだ」
そう言った後、ナオの前歯が下唇をきつく噛み締めた。彼の頬には涙が光り、白い額には汗が浮かんでいた。
ナオは決して自分の言い出した罰ゲームを忘れてはいなかったのだ。

 俺は彼に気づかれないように左手をそっと床の上に滑らせた。
午後の日差しを浴び続けた板張りの床は温かかった。 俺はこの床の上に水たまりができる様子を一瞬で想像し、左手をナオの頬へ持っていってそこに光る涙をサッと拭ってやった。
「ナオ、紙オムツはないよ。昨日でちょうどなくなったんだ」
俺がそんな発言をすると、ナオは心細そうな顔をして俺の右手を力なく離した。 ナオは今日も紙オムツにおもらしをするつもりでいたようだったが、俺は決してそれを許さなかった。
「もう我慢できないんだろ?ここでおもらししてもいいよ」
俺は優しくそう言ったけど、ナオは大きく首を振った。 しかし彼を襲う尿意は脅威を増しているようで、ナオの右手は股間を強く押さえつけた。膝を折り曲げた彼の足はブルブルと震えていた。
「そんなのできない。濡れたジーンズをはいて帰るの嫌だもん」
ナオはポロポロと涙を流して俺にそう訴えかけた。でもこの日を待ちわびた俺がおもらしの後始末を考えていないはずなどなかった。
「平気だよ。着替えを貸してやるから」
「だって、別なズボンをはいて帰ったらママが変に思うよ!」
この時ナオは我を失って泣き叫んでいた。でも俺には悲痛な彼の表情を見て楽しむ余裕があった。
彼はおもらしする事に抵抗を感じて涙を流しながらも、結局はその誘惑に負けておもらしを実行するに違いなかった。
俺はもう一度ナオの肩を抱いた。彼は股間を押さえていた右手を離し、胸の前で拳を握った。
ナオの長い髪は太陽に透けていた。髪の隙間に見える耳は真っ白だった。俺はナオの肩をしっかりと抱き、その耳に小さくこう囁いた。
「じゃあ濡れたジーンズをすぐに洗濯してあげるよ。だから、何も心配しないで」
するとナオの耳が急に真っ赤になった。そして同じように頬も赤く染まった。
膝を折り曲げたナオの足は更に激しく揺れ動いた。彼はきつく目を閉じて俯き、苦しそうな声で俺に最後の問い掛けをした。
「僕がおもらしした事、絶対内緒にしてくれる?ママにも、学校の友達にも、一生内緒にしてくれる?」
足をバタつかせる振動がナオの肩を抱く俺の腕に伝わってきた。俺はその腕に力を入れ、ナオの耳にもう一度囁いた。
「約束するよ。今日の事は誰にも言わない。この前の事も絶対誰にも言わない。これは俺たち2人だけの秘密だよ」

 それから3秒もたたないうちに、ナオの足の揺れがピタッと止まった。それと同時に、胸の前で握っていた彼の拳が開かれた。
俺はその後、おもらしする彼の一部始終を見つめていた。
シャーーーーーッ
ナオが体の力を抜くと、ぴったりした水色のジーンズの奥から大量の水が溢れ出した。
床の上に零れ落ちる水がどんどん増えると、ナオの股間に出来上がったシミも次第に大きくなっていった。
ジーンズのジッパーのあたりに黄色いシミが広がっていく。それと同時に温かい床の上の水たまりも大きく広がっていく。
ナオがいっぱいおもらしをするから、水たまりの水はとうとう俺の靴下まで濡らしてしまった。
シャーーーーーッ
俺はナオのおしっこの音を聞きながら目を閉じて俯く彼を見つめた。
この時ナオはとても気持ちよさそうな顔をしていた。 おしっこを我慢している時はとても苦しそうなのに、我慢から開放されたナオの顔はスッキリとしていた。
口を半開きにして、涼しげな顔でおもらしを続ける彼。 自分の作り出した水たまりが俺の靴下を濡らしてもまったく気づかずにおもらしを続ける彼。
板張りの床の上に広がる水たまりは夕方の日差しが反射して白く光っていた。 ナオのジーンズは太もものあたりまでしっとりと濡れ始めていた。
床の上に大きく広がる水たまりは、座布団にぶち当たってその流れをせき止められた。 緑色の座布団が少しずつ水たまりの水を吸って黒い色に変わっていく。 ナオのジーンズに黄色いシミができたように、座布団にも大きなシミが作られようとしていた。
ナオの透き通る肌は光り輝いていた。おもらししている時のナオはとても気持ちよさそうで、すごく可愛かった。
俺は思わず両手で彼を抱き締め、涙が乾ききらない頬にそっと自分の頬を寄せた。すると頬に彼の体温がよく伝わってきた。
おしっこの音が止んだのはちょうどその時だった。その時ナオはもう泣いてはいなかった。

 「ナオ、気持ちよかった?」
おもらしを終えたナオをすぐそばに見つめて問い掛けると、彼は頬を染めたまま小さくうなずいた。
俺はおもらしによってナオが快感を得ている事をこの時はっきりと知った。
すると、また股間が膨らんでムズムズしてきた。 ナオがおもらしによってどれほどの快感を得ているのか。俺はそれが知りたくてたまらなくなった。
すぐそばにあるナオの顔が、一瞬微笑んだような気がした。
温かな日差しを浴びて微笑む彼は天使のようだった。 大きな目がキラキラと光っていて、唇はピンク色で、頬は赤い。 太陽に透ける髪があまりにも眩しくて、一瞬目の前が真っ白になった。
するとその時、俺の体に襲い掛かる尿意が突然復活し始めた。 ナオのおもらしを観察している時はまったく感じなかったそれが、突然限界をむかえようとしていた。
俺はなんとか立ち上がってトイレに走ろうと考えた。 でも差し迫る激しい尿意は本物で、少しでも動いたらおしっこが出てしまいそうだった。
どうしよう。おもらししちゃう。
俺はパニック状態になり、ナオの目を気にする余裕もなく右手で股間を押さえた。 すると当然のように俺がおしっこを我慢している事がナオにばれてしまった。
「智行、おしっこしたいの?」
ナオのその声が遠く感じた。きつく目を閉じて股間を押さえる右手に力を込めると、体中が突然ブルブルと震え始めた。
恐らく俺は、何をどうやっても尿意を断ち切る事ができなかった。俺はこの時になって初めてナオの気持ちを理解する事ができた。
俺の頭の中には悪魔と天使が存在していた。黒い尻尾を生やした悪魔は 「早くおもらしして楽になれ」 と俺に言う。 でも白い羽を背負った天使は 「なんとか我慢して早くトイレへ行け」 と言う。
もう尿意が堪えられず、俺は本当に苦しかった。悪魔の囁きを聞いて、今すぐおもらしをしてしまいたいと思った。 そしてナオだけが味わった事のある快感を知りたいと思った。でも心のどこかにまだ羞恥心が残されていて、ナオの前でおもらしをする事はやっぱりためらわれた。
おもらしする前のナオは、悪魔と天使の囁きを聞きながらずっとこの葛藤を繰り返していたに違いなかった。

 折り曲げた膝を震わせて股間に右手を当てていると、ナオの手がそっと俺を抱き寄せた。 その時俺は、今にもパンツを濡らしてしまいそうだった。
きつく閉じた瞼の向こうに午後の日差しを感じた。耳に囁かれるナオの声で、彼の存在をすぐそばに感じた。
「智行、おもらししてもいいよ。この事は絶対誰にも言わないから」
この時のナオは決して天使ではなかった。彼は黒い尻尾の生えた悪魔のようにどんどん甘い言葉を囁いた。
「もう我慢しないで。おもらしすると、すごく気持ちいいよ」
ダメだ。もうダメだ。頼むからやめてくれ。
俺は天使から悪魔に変身したナオに向かってそう叫んだ。 でも声を出すとおもらししてしまいそうだったから、心の中でそう叫んだ。
「ねぇ…おしっこしちゃいなよ」
股間に当てていた右手が、ナオの手によって払い除けられた。するとその時、俺の理性が遠く彼方へ飛んでいった。
シャーーーーーッ
その音が耳に響くと同時に、パンツの中が急激に温かくなった。俺は悪魔の誘惑に負け、遂におもらしをしてしまったのだった。
体の力を抜き、自然に身を任せておしっこをする。ただそれだけの事なのに、身悶えするような快感が体中を駆け巡った。
尻の下も、股間も、靴下も、温かい水でびっしょり濡れていくのがはっきりと分かった。
俺は多分、長い間おもらしを続けていた。それはもちろん膀胱の中にたまった水の量が半端じゃないほど多かったためだ。
不思議な事に、おもらししている間は恥ずかしさなんか微塵も感じなかった。 それどころか、こんなに気持ちがいいならもっと早くやればよかったとさえ思っていた。
あまりにも気持ちがよくて、ずっとこのまま快感が続けばいいと思った。
俺はマスターベーションをする時にも今と同じような事を考えていた。 射精する瞬間はものすごく気持ちがよくて、ずっとずっとその快感が続けばいいのにといつも思っていた。
でも白い精液をすべて吐き出すと必ず快感は失われていった。そしておもらしが止みそうになると、同じように快感が失われていった。
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