罰ゲーム 5
俺は今日、初めて分かった。おもらししている瞬間は最高に気持ちがいい。その快感はマスターベーションのそれによく似ている。
だけど恥ずかしいのはおもらしをした後だ。
体中を駆け巡る快感が失われてふと我に返ると、そこにはびしょ濡れのジーンズをはく自分がいて…そして、板張りの床の上には 大きな水たまりが存在している。
その2つを客観的に意識した時、どうしてこんな恥ずかしい事をしちゃったんだろうという後悔が頭の中を渦巻くのだ。
俺とナオは静かに立ち上がって自分たちのこしらえた水たまりをじっと見つめた。
綺麗な鏡のごとく透明な水たまりには、ジーンズをはいたナオの足が映し出されていた。
俺たちの作った水たまりは融合されてかなり巨大化していた。 これを今から始末しなければならないのかと思うと、正直言ってうんざりした。
ナオと正面から向き合った時、俺は真っ先に彼のはいているジーンズを見つめた。 薄い水色のジーンズはひどく濡れていて、黄色っぽいシミがふくらはぎのあたりまで続いていた。
おもらしした瞬間はすごく気持ちがいいのに、濡れたジーンズを身に着けているのはすごく気持ちが悪かった。 天にも昇るような快感を得た後に胸を襲ったのは、強い羞恥心と不快感だった。
やがて俺たちはどちらからともなくジーンズを脱ぎ始めた。 低い位置に移動した夕方の太陽が、そんな俺たちの姿を温かく照らしていた。
ベルトのバックルがカチカチと音を立てた後、2枚の濡れたジーンズが板張りの床の上に投げ出された。 そしてびっしょり濡れたパンツと靴下もその上に重ねられた。
下半身だけ裸になった俺たちは、2人とも股間にぶら下がるものをなんとかして隠そうと努力していた。
ナオはパーカーの裾を引っ張り、俺はトレーナーの裾を引っ張る。
もうすでにお互いの1番恥ずかしいところを見せ合っていたはずなのに、それでも俺たちは必死に自分のものを隠そうとしていた。
押し入れの中から赤いタオルを取り出してナオに手渡すと、彼はそれを使って自分の濡れた肌を丁寧に拭き始めた。
彼の真っ白な足には少量の水分がまとわりつき、そのせいで太もものあたりが光っていた。 ナオがタオルで太ももを拭くと、その細い足から輝きが失われた。
青いタオルを手にした俺は、やはり自分の濡れた足や股間をせっせと拭いた。
それはとても静かな時間だった。俺はこんな時に何を話したらいいのか全然分からなかった。
乾いた白のトランクスを身に着けると、やっと少し気持ちが落ち着いた。
そして俺は、下半身が丸裸のままのナオともう一度正面から向き合った。 俺はこの時になってやっと彼の顔を見る余裕が生まれた。
この時ナオの頬は真っ赤だった。そして彼の視線は宙を漂っていた。俺はそんなナオの様子を見るとなんとなく楽しくなってきた。
彼の左手はパーカーの裾を引っ張って自分のものを隠そうとし、もう片方の手は右の頬に当てて赤くなった皮膚を包み隠そうとしていた。
俺の背中の後ろには、相変わらず大きな水たまりが存在していた。 足元には濡れたジーンズやパンツが転がっていたし、水を吸った緑色の座布団は端の方が濡れて黒く変化していた。 そして俺は早くそのすべての後始末をしなければいけないと思っていた。
でも俺には青い空が茜色に染まる前にもう1つだけやっておきたい事があったのだ。
俺は軽く微笑みながらナオの大きな目を正面からじっと見つめた。するとナオも唇をわずかに上へ向けてぎこちなく笑ってくれた。
この時俺は長い沈黙を破る自分の一言がそんな彼の表情をどのように変えるのか楽しみでならなかった。
「…ナオ、紙オムツを着けてあげようか?」
俺がそう言うと、ナオは目を大きく見開いて頬に当てていた手をポトリと落とした。 彼はひどく驚いた表情を見せ、同時に声を震わせた。
「オムツはないって言ってたくせに…」
俺はナオの驚いた顔を見て非常に満足した。頬を真っ赤に染めて口を半開きにする彼がとても可愛らしかったからだ。
そして俺はもう1つの欲求を満たすために彼を温かいベッドへ押し倒した。
真っ白な紙オムツは、最初から枕の下に忍ばせてあったのだ。
ナオの体をベッドに押し付けると、俺もベッドに飛び乗ってすぐに彼の足元に座り込んだ。 ベッドがミシッと揺れ動くと、何故だかとても興奮した。
頬を真っ赤に染めたナオは、俺を見上げてまずは苦情を訴えた。
「智行の嘘つき!オムツはないって言ったくせに!」
半べそかきながら頬を膨らませて怒るナオはやっぱり可愛かった。眉間に浮かぶ深いシワも、俺にはとても可愛く見えた。
俺の言葉に動揺した彼はもう自分のものを隠す事さえ忘れているようだった。 日差しに照らされるナオの男の証しを見下ろすと、俺はとても愉快な気持ちになった。
「嘘ついてごめんね」
上辺だけの謝罪を告げると、ナオは唇を尖らせてそっぽを向いてしまった。彼の長い髪は白い枕の上で乱れていた。
枕の下に手を入れて紙オムツを取り出すと、ナオは横目でチラッとその様子を見つめていた。
俺にはちゃんと分かっていた。ナオは紙オムツの感触を心から愛しているのだ。 その証拠に、彼はムクれたそぶりを見せながらもまったく俺に逆らおうとはしなかった。 俺はナオが思い通りにジーンズを濡らしてくれたら、こうして彼にご褒美をあげようと思っていたのだ。
ベッドの上で仰向けになっているナオの白い足を膝から折り曲げ、両足を大きく開かせる。 するとナオはそっぽ向いたままできつく目を閉じた。
空は青かった。午後の日差しは透明だった。ナオの頬が赤いのは、決して夕日のせいなんかじゃなかった。
紙オムツをナオの尻の下へ入れようとすると、彼は俺の手をわずらわせないようにサッと尻を持ち上げてくれた。
しぼんでいるナオのものとそれを守る薄いヘアーを見つめると、俺の股間はしだいに膨らみ始めた。
俺はそれを隠すためにそっとトレーナーの裾を引っ張り、しぼんでいるナオのものを素早く真っ白な紙オムツで覆った。
気づくとナオは気持ちよさそうな顔をして小指をしゃぶっていた。彼はオムツを身に着けると赤ちゃんになる癖があるようだった。
俺は一瞬ナオの男の証しを愛撫して大きくしてやろうかと思った。でも、興奮気味な俺にはとてもそんな余裕がなかった。
紙オムツを着けて小指をしゃぶるナオは最高に可愛くて、最高にいやらしかった。
そんな彼を見ていると、下半身がムズムズしてどんどん興奮が高まっていった。
ここはとりあえずナオにオムツを着けた事で満足し、早く部屋を抜け出して込み上げる興奮を爆発させたかった。
バスルームの隣に併設されている、いわゆる洗濯部屋。
畳2枚ほどの広さしかないその部屋へたった1人で辿り着くと、俺の腰が突然砕けた。
体がフラついて冷たい床に座り込むと、両手で抱えていた洗濯物が目の前に零れ落ちた。
日当たりの悪いその部屋に置かれている物は紺色の洗濯機と乾燥機のみ。 俺は床の上にへたり込んでしばらくぼんやりとその紺色を見つめていた。
それから徐々に視線を落とすと、膝の向こうに転がる洗濯物の山が嫌でも目に入った。
床の上の水たまりを拭き取るために使った2枚のバスタオル。 そのうちの1枚は真っ白だったはずなのに、使用後の今は少し黄色身を帯びているように見えた。 そしてそれはバスタオルの上に重なっているナオのジーンズも同じだった。
黄色いシミの付いたジーンズを見ると、心臓が高鳴って体中が熱くなった。 高鳴る心臓の大きな音が、洗濯部屋の白い壁にこだましているような気がした。
俺は震える手でナオのジーンズに手を伸ばした。
しっかりと濡れているジッパーのあたりに指を滑らせると、そこに染み込んだナオのおしっこが人差し指と中指にわずかに触れた。
俺は少しだけ濡れた指に鼻を近づけてその匂いを嗅いでみた。微かに感じる酸っぱい匂いは、俺の興奮を頂点へと押し上げた。
濡れたバスタオルの山にそっとナオのジーンズを乗せると、俺は自動的に彼のおもらしの残骸を目の当たりにする事となった。 目に見えるのは、ジーンズのふくらはぎのあたりまで広がるシミだった。
この時俺は目を閉じて少し時間を戻そうとした。ナオが乾いたジーンズを濡らし始めるその瞬間を、頭の中で必死に思い出そうとした。
やがて頭の中のバーチャルなナオがゆっくりとおもらしを始めた。
乾いた薄い水色のジーンズが少しずつ濡れ始め、ジッパーのあたりから太ももにかけて徐々に黄色いシミが広がっていく。 そして温かい床の上には水たまりが作られていく。
その様子を頭に浮かべると、俺はもう本当に興奮を抑えきれなくなった。
床の上に座ったまま白いトランクスを下ろし、欲望のおもむくままに硬くなった自分自身を可愛がる。
トランクスを下ろした瞬間は尻に床の冷たさが直接伝わった。 でもマスターベーションを始めると今まで以上に体温が上昇し、尻が冷たい事などすぐに忘れてしまった。
「はぁ…はぁ…」
高鳴る心臓の音と激しい息遣いがやけに大きく耳に響いた。
右手の指が擦り付けているものは火がついたかのように熱くなっていた。
少しでも指を動かすとあまりにも気持ちがよすぎて頭がおかしくなりそうだった。 そのせいか、頭に浮かぶナオのおもらしの映像が時々途切れたりもした。
指の動きを早めれば、きっとすぐにいってしまう。
それが分かっていたから、俺は時々指の動きをスローに変えた。すると頂点に上りかけた快感がほんの少しだけおさまりを見せた。
俺はすぐに射精するのはつまらないと思っていた。 おもらしする時のようにギリギリまで我慢して…そして我慢から解放される最高の瞬間を楽しみたいと思っていた。
頭の中のバーチャルなナオはまだ気持ちよさそうにおもらしをしていた。 ナオがおもらしを続けると彼のジーンズのシミはどんどん大きくなり、床の上の水たまりも徐々に広がっていった。
俺の先端から少しずつ温かい体液が溢れ出し、ベトベトしたものが右手の指に絡みついた。 おさまりかけた快感は、またすぐ頂点に向かって走り始めた。
するとその時、俺の耳にまた悪魔の声が囁かれた。
「我慢しないで早くいっちゃえよ」
悪魔の声はナオの声とそっくりだった。ナオによく似た悪魔は射精を堪えるのが苦しい事をよく知っているようだった。
「早く楽になれよ」
悪魔の声を2度聞いた時、俺の我慢は限界が近づいていた。それでも俺は最大限の努力をして射精を堪えた。
それはおしっこを我慢する時の状況と何も変わりがなかった。
膝を折り曲げた両足が震えた。そのうち体中がブルブルと震え始めた。
わずかに尻の位置をずらし、腹に力を入れて体の奥から込み上げてくるものを押さえつける。
それでも決して指の動きは止めない。すると、苦しみと快感が交互に体の中を駆け巡った。
指に絡みつく体液は少しずつ増えていき、この時もう俺の右手はびしょ濡れだった。 その事を意識すると、また少しだけおもらししてしまったような錯覚に陥った。
するとその時、頭に浮かぶナオの姿が何故だか突然ガラッと変わった。
温かいベッドの上で仰向けになるナオ。 彼は真っ白な紙オムツを身に着け、少し苦しそうな顔をしながら小指をしゃぶっていた。
牛乳みたいに真っ白なナオの2本の足。それは膝から折り曲げて大きく左右に開かれていた。
ナオの額に浮かぶ脂汗を、午後の日差しがキラリと光らせた。頭の中のバーチャルなナオは、俺と同じように両足を震わせていた。
ナオは必死におしっこを我慢していた。でもそろそろ限界が近づいているようだった。
ナオはもうすぐおもらししてしまう。紙オムツを身に着け、両足を開いた赤ちゃんスタイルでたっぷりおもらししてしまう…
「智行、一緒におもらししよう」
現実と変わらない妄想が頭の中に広がっていたその時、俺の耳元で天使の声がした。その天使の声は、ナオの声とそっくりだった。
ダメだ。もう限界だ。
俺はナオと同じになりたくて、折り曲げた両足を大きく開いた。するとその時、とうとう射精してしまった。
その瞬間の身悶えするような快感はおもらしした時とまったく同じだった。
俺はきつく目を閉じて自分のものに添えた指を止め、最高に気持ちいいその瞬間を受け止めた。
この時は体が異常に熱くなっていて、わきの下にも額にも汗が浮かんでいるのがよく分かった。
シャーーーーーッ
その時、俺の耳にナオのおしっこの音が響いた。 天使の声でもなく、悪魔の声でもなく、その時は単調なその音が俺の耳に大きく響いていた。
どうやら頭に浮かぶバーチャルなナオは小指をしゃぶりながらおもらししている最中のようだった。
頬を赤く染め、身動きもせず、ナオは気持ちよさそうにおもらしを続けていた。
ナオはおもらしする事で俺と同じ快感を受け止めていたに違いない。 俺はこの時、ナオと一緒にいい気持ちになる事ができてすごく嬉しく思っていた。
しかし、現実は厳しかった。
すっかり射精を済ませると、ついさっきまで体の中を襲っていた身悶えするほどの快感が徐々に失われていった。
自然に目が開くと、最初に見えたものは洗濯部屋の無機質な白い壁だった。 そして少しずつ視線を落とすと、目にする情景に突然羞恥心が込み上げてきた。
目の前に存在するのは、黄色いシミが付いたナオのジーンズ。 そしてそのシミの上に点在していたものはたった今自分が吐き出したばかりの性欲のかけらだった。
黄色いシミ。そしてその上に飛び散った大量の真っ白な精液。
その2つを目の当たりにした時、おもらしした時と同じようにどうしてこんな恥ずかしい事をしちゃったんだろうという後悔が頭の中を渦巻いた。
俺はジッパーの横に飛び散った白い精液を右手で拭った。でもだからといって自分のやった事が拭い去れるはずなどなかった。
俺は現実から目を背けるようにナオのジーンズから目を逸らして紺色の洗濯機を漠然と見つめた。 すると紺色の視界の中にぼんやりとナオの笑顔が浮かんだ。ナオは大きな目で真っ直ぐに俺を見つめ、白い歯を見せてにっこり笑ってくれた。
1人きりで俺の部屋にいる本物のナオは、自分の濡らしたジーンズがひどい有り様になっている事を知る由もなかった。
精液を浴びた自分のジーンズを見たら、いったいナオはどう思うだろう…
俺はナオの目を真っ直ぐに見つめていられなくなり、紺色の視界に浮かぶ彼の笑顔から目を背けた。この時の俺にはもう目のやり場がなかった。
股間にぶら下がるものはすっかりしぼんでしまい、その先端には白い精液の残りがこびり付いていた。
膝の向こうにはひどく汚れたナオのジーンズがあったし、その下には黄ばんだバスタオルがあった。 そして濡れてしまった座布団カバーもその下に埋もれていた。
どこを見つめても強い羞恥心が胸に襲い掛かり、俺はもうその場にいる事が耐えられなくなった。
俺がナオのジーンズを汚してしまった事。その事は、一生自分の胸の中にしまっておこう。
ここでのんびりしている場合じゃない。早くジーンズを洗濯して証拠隠滅しなくちゃ。
そう思った俺は、洗濯物を胸に抱えてヨロヨロと立ち上がった。
この日は気持ちよかったり恥ずかしかったり、本当に忙しい1日だった。