ゲームのミカタ

…真面目にゲームについて考えるコーナーです。つまらないかはともかく、 長くて堅っ苦しいので、暇な人だけ読んでください(>_<)。

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第二回 『現代美少女ゲーム概論T』

第三回 『現代美少女ゲーム概論U』

第四回 『ゲームと声優』

第五回 『ゲーム体験版を排す』


第一回 『現代RPG概論』

1.RPGと「萌え」文化

 RPGには大きく分けて二つのタイプがあると思う。 一つはゲームで楽しませるもの。そしてもう一つがストーリーで楽しませるものだ。 解りやすくドラクエで言えば、転職システムが斬新だったVは前者、 各章の勇者たちが最後に集うという、壮大なロマンを見せてくれたWは後者といえよう。 歴史的見地からすれば、前者は特に草創期、初期に多く見られ、 近年のような大容量時代になってからは、ぱったりと姿を見せなくなった。

 しかし、前者がつまらないか、小容量時代の苦肉の策だったかといえば、 決してそうではない。「ハマる」ゲームを正義とするならば、 むしろ最近になってRPGはつまらなくなった、とさえ言えると僕は思う。

 RPGの方向転換は、ハードの処理能力が向上し、ソフトが大容量化した こと、何より、企業の保身から(異説もあると思うが、少なくとも 一元的には正しいはずだ)メディアミックスが増加したことが、大きな要因となっている。 すると、今までのような「のっぺらぼう」ではとても勝負できない。 OVA版のFFのようなものより、ゲームと密接な関連性があった方が望ましい。 そうなってくると、やはり頼るのは「萌え」なのである。

 このように、最近はRPGも「萌え」を前面に押し出すことが少なくない。 かつてのFFの個性のない主人公たちが、今や同人誌のネタとされるまで (決して悪い意味ではない)、生き生きと個性を持っているのである。 僕としても、「萌え」の文化を全否定するつもりは全くないし、 「のっぺらぼう」のキャラクターよりも、可愛いキャラがたくさん出ていた方が 楽しいに決まっている。 だが、ここにRPGがつまらなくなった原因があると僕は思う。


2.素材を調理できないゲーマー

 かつてのゲーマーは素材を調理して楽しむことができたが、 今のゲーマーにはそれができない。と、僕は思う。 原因にはゲーマーの一般化など諸説あるが、それはこの際置いておこう。 漫画家の堂高しげる氏も作品中で指摘しているが(「全日本妹選手権」6巻120頁)、 かつてのゲーマーは、まさに「のっぺらぼう」のキャラクターにそれぞれ 個性を見出し、サイドストーリーを創り上げ、 ゲームを楽しんでいたのではないだろうか。 ドラクエをネタに柴田亜美氏が描いた「邪悪な勇者」は、そのゲーマーによって 見出された個性の、最たる例だといえよう。 もちろん、一般的な勇者のイメージと彼はかけ離れているのであるが、 もとが「のっぺらぼう」で、確かに好き勝手にパーティを解散できるので、 まったく有り得ない想像と切って捨てることもできない。 そして、それだけの自由度を許容する骨太さがドラクエ(少なくともT〜W)にはあった。

 つまり、ゲームとして楽しいRPGのキャラクターは「素材」であり、 ゲームという「台所」のなかで、ゲーマーの自由な発想によって 「調理」することができたのだ。

 ところが、今のRPGはどうだろう。キャラクターの細部にまで設定があるのは 当然で、サイドストーリーも綿密にあり、それを評価・賛美する声が一般的だ。 挙句の果てには、ゲーマー同士で製作者の「調理例」をどこまで知っているか 語り合ったりする始末である。 この様子は、自分の部屋に閉じこもり、ファッションから食事まですべて親に 依存している「引きこもり」の人間を見ているようである。 彼らはきっと、自分で食べる食事の「調理」さえ満足にできないのではないだろうか。

 昔、僕たちが楽しんだRPGは、どんなだったろう。 ひたすら単純なレベル上げとダンジョン、そして戦闘の積み重ねだったはずだ。 「のっぺらぼう」のキャラを見ながら、不満を覚えながらやっていたはずだ。 そして、その不満を解消するために、サイドストーリーの「調理」に 没頭したはずだ。RPGはそのかっこうの「台所」だったはずだ。 今こそ、情報社会の波に飲まれて消えかけた、僕らのサイドストーリーを 探すべきときではないだろうか。


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