ゲームのミカタ

…真面目にゲームについて考えるコーナーです。つまらないかはともかく、 長くて堅っ苦しいので、暇な人だけ読んでください(>_<)。

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第五回 『ゲーム体験版を排す』

1.体験版が先か、本編が先か

 ブロードバンド時代、と言われるようになってからしばらく経つ。 今やインターネットによる、体験版・デモムービーの配信は常識になっているようだ。 ブロードバンドであれば、高音質の主題歌・ボイス入りの体験版も容易に送受信でき、 これが企業にとって大きな宣伝効果となっている。 もちろん、僕らユーザーにとっても、発売(購入)前に本編に限りなく近い形でプレイできるので、 こういったサービスは非常にありがたい。

 しかし、である。最近の体験版はいささか行き過ぎではないだろうか、 と僕は警鐘を鳴らしたい。確かに豪華で本編に近い体験版というのは、 メーカーにとってもユーザーにとっても、素晴らしいツールであると思う。 だが、最近のゲームはそれに振り回されすぎてはいないだろうか?  体験版からでっちあげたようなつくりになってはいないだろうか?  本来は「作品」であるはずのゲームだが、最近では「商品」の顔ばかりクローズアップされて、 僕としては、非常に萎えまくっているのが現状だ。

 映画の世界、とりわけハリウッドでは「プロモーションビデオのために映画が作られる」 なんて皮肉が囁かれてからずいぶんと経っている。 TVドラマなどでも、コマーシャルで意味深に描かれていたのが何でもないシーン、 という心当たりはないだろうか?  ゲームにおいても、やっぱり同じことが起きてるんじゃないかと思う。

2.ユーザーの言うことなんか聞くな!

 どうも最近の作品に多いのが、ユーザーの望みに一つ一つ答えました、的なものである。 色々な性格・容姿のヒロインを乱立させ、それぞれのルートをつくり、 人気声優に声を当ててもらう。 これが、今の業界における「三点セット」なのではないだろうか。

 掲示板で「ネコミミ萌え〜」とか皆で書いていれば、 メーカーのどなたかがそれをキャッチして、ゲームをでっちあげる。 皆が飛びつく。そして、皆ハッピー。それが(大げさな表現だが)今の現状だと思う。 これでは、作品から「熱血」は伝わってこない。 精子は出ても、涙なんて1mlもこぼれるはずがないだろう。

 何でゲーム業界入ったのか? 何が本当は作りたいのか?

 僕が見せて欲しいのは、その部分である。 もちろん「お兄ちゃんが12人の妹に囲まれて幸せ〜」なんて、 妄想そのものを見せられたいわけじゃない。 愛とか、魂とか、情熱とかそういう類のものだ(ボキャブラリーが貧困で申し訳ない)。 そのメラメラと真っ赤に燃える炎が見えたとき、 僕の欲望ではない、別のどこかが満たされる。僕がゲームに求めているのはそれである。

 別に高尚なテーマ性、なんてものではない。 逆に、美少女ゲームでそんなものを見せられても、萎えるだけだ。 例えるなら、オナニーしているところにノックもせずに上がりこんできて、説教かまされるような。 どんなにありがたい話だろうと、耳には入って来ないだろう。 ここでいう「真っ赤な炎」っていうのは、単純に「おっぱいが好きだ!」とか 「妹じゃなきゃダメなんだ!」とか、本当にそんなくだらないものでいいと思う。 ただ「指が折れても作りきってやる!」っていうような情熱において、 ただの妄想とは一線どころか、十線を画するもの。 たとえ表面は大衆に迎合しても、芯の部分には、そういうものが存在して欲しい。

3.体験版がゲームを殺す

 そこへいくと、この「体験版」というものが、 その芯の部分を腐らせているようにしか思えない部分が多々ある。

 昔はそうではなかった。本当にゲームの序盤やOPだけを切り抜いたもの、 さらに音声をカットしたもの、そういったものが「体験版」として出されていた。 本編とは全く関係の無い、キャラとCGを流用しただけの話も多かった。 しかし、そこに見える演出の技術、CGの技術、テキスト・シナリオの技術、 そして作品の雰囲気を見て、ユーザーは購入を検討したものだ。 だから、それはそれで良かった。

 ところが、ユーザーの方からは「もっと本編に近い体験版が欲しい」と、 また製作者の方からは「他のブランドよりも豪華な体験版で人気を得たい」と、 それぞれの思惑があった。 その結果が、現在のような音声バリバリの、プレイ期間の長い体験版というわけだ。 当然、これを作るのにはかなりの金がかかる。 必然的にメーカーは、早い段階からそうとうな借金を背負わなければならない(可能性が高い)。

 すると、どうだろう?

 本来、純粋にゲームを楽しみたいユーザーと、 本来、純粋にゲームを作りたい製作者がいるのにも関わらず、 まず体験版ありき、というシステムのせいで、もうけ主義にならざるを得ないのだ。 なぜなら、体験版を作って膨大な借金を背負い、しかもその借金はソフトが発売して、 売れなければペイできないからだ。 だから、体験版がゲームを殺す、どころの話ではない。 下手をすれば、体験版がメーカーを潰すし、体験版が製作者を殺しかねない。 それだけのお金が動いているし、それだけの手間も時間もかかっている。 学生やフリーターの規模なら、純粋にゲームだけ作っていれば、それでもいいかもしれない。 だが、会社としての規模で、社会人としての立場でそれだけのリスクを背負うには、 それなりのリターンが必要である。 それなりにもうけなければならない、宿命がある。 ただ面白いゲームをつくればいい、では済まされない、責任がある。

 さらに付け加えて言うなれば、 豪華な体験版を製作スケジュールの早期に作ることで、 キャスティングやシナリオに融通が利かなくなる、という弊害も予想できる。

 だから、体験版の一利のウラには百害あるんじゃないかと僕は思う。 そこで「もう少し昔に戻って、考えてみませんか? お互いに」というのが、 つまりここで言いたかったことである。 純粋にゲームを楽しみたいユーザーと、純粋にゲームを作りたい製作者がいるのにも関わらず、 その思いをないがしろにするようなシステムは、 なるべくならば、排除しておくべきであろう。

 競争の社会、そんなことはどだい無理な話かもしれない。 でも、僕が支持しているエルフ、ライアーソフトに関して言えば、 実はそれほど豪華な体験版はつくっておらず(作品や発表時期にもよるが)、デモムービーもしくは、 昔ながらの音声なし、すぐに終わる簡素な体験版のみである。 だから、解っているブランドは解っているのかもしれない。少しでも可能性はある。 その可能性の輪が次々に広がっていき、純粋にゲームを楽しみたい人たちが、 純粋にゲームを楽しめる環境ができていくのを、僕は願っている。

 もし、それが叶わないようであれば、僕はただそこを去り行くのみである。


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