これは夢だ。
後何時間かすれば何事もなかったかのように朝がやって来るんだ。
だったらこの夢を楽しもうじゃないか。
ザックスはベッドに腰掛け直し、居住まいを正した。
熱を持った眼差しに気付くことなく、サンタの孫は持って来た麻の袋を検めていた。中にはプレゼントらしきものが詰め込まれている。
「…オレさ、付き合ってた子とこの間別れちゃったんだよね」
「うん」
「それでこうして一人でクリスマスの夜を過ごしてるわけ」
「ふーん」
「そんな寂しい思いしてるところに君みたいなかわいい子が現れたわけで…」
「だから何が欲しいんだよ」
回りくどい言い回しにサンタの孫は痺れを切らして口を挟む。
ザックスは少しモジモジしながらそれを口にした。
「君みたいな子が彼女になったらうれしいなーって…」
「はぁ?」
サンタの孫は袋を漁っていた手をぴたりと止めてザックスを凝視する。
その瞬間、ザックスは立ち上がり、サンタの孫をベッドに押し付けた。
「や…なんだよ!」
「だから…クリスマスプレゼントに君が欲しいってこと」
言ってからザックスの顔がカーっと赤くなった。
自分で吐いたクサイセリフに少し恥ずかしくなった。
先までとは逆に今度はサンタの孫が何を言ってるのかわからないといった顔をしながら何度も瞬きを繰り返した。
しばらくそのままの体勢でいたが、ザックスが退く気配がないとわかり、恐る恐る声を掛けた。
「…あんた、本気で言ってるの?」
「本気だよ。いいだろ?何でもいいって言ったのはそっちだぜ」
「で、でもそんなの…」
「今になってダメなんて言わせないからな」
「んっ!?」
ザックスは言葉通り有無を言わさずサンタの孫の唇を奪った。
最初は身じろぎをしていたが、ねっとりと舌を絡ませているうちに抵抗らしい抵抗はなくなった。
どうせ明日の朝、目が覚めればこの子もいなくなっていて…そして枕元に空っぽの靴下が下がっているだけなのだ。
こうなったらこの夢を思う存分楽しもう。
これこそサンタがくれた『大人のプレゼント』なのだから。