この話がどこまで続くのか、ザックスは自称サンタの孫を薄目で見やった。
「ふーん。サンタの孫が何でオレんちに来たんだ?」
「じいちゃんに頼まれたんだ。あんたにプレゼント届けて欲しいって」
「へえ?オレもう子供じゃないけどもらえるんだ?」
「あんたには一度渡したことがあるから本当はもうあげられないんだけど…その時に間違ったプレゼント渡しちゃったみたいなんだ。だからそのお詫びに今度こそ欲しい物をプレゼントしに来たの」
話を適当に聞き流していたザックスは一瞬にして神妙な顔つきになった。
「間違ったプレゼントだと…」
「十年くらい前に欲しいと思ってたプレゼントじゃない物が靴下に入ってただろ?あれ本当は違う子にあげる予定のプレゼントだったんだ。じいちゃんが今になって急に思い出してさ」
サンタクロースはいないのだと自覚する出来事が起こったのは確かに十年くらい前のことだ。
だがなぜそんなことをこの子が知っている?
友人であっても覚えているかどうか疑わしいような、昔の話を。
そういえば、とザックスは当時のクリスマスの朝のことを思い出した。
親にプレゼントのことで抗議をした時、困惑しつつもなぜか要領を得ない様子だった。
まるで身に覚えのないことを言われて困っているような、そんな顔をしていた。
…その後すぐに母親から強烈な拳骨を食らったのは思い出したくない思い出だ。
ただのでっち上げだと思っていた目の前の子の話にザックスの背筋にぞわっと悪寒が走る。
まさかあれがサンタクロースが間違って置いて行ったプレゼントだったのだろうか…?
「…で、じいちゃんは今の時期忙しいから代わりに来た」
「な、何を持って来たんだよ」
「あんたの今欲しい物をあげるよ」
「……それって何でもいいのか?」
「間違ったお詫びだから何でもいいよ。じいちゃんからOKもらってるし」
ザックスはこれが夢なのか現実なのか、いよいよわけがわからなくなってきた。
しかしこれはラッキーな展開だといえる。
子供の頃に欲しいと思うささやかなプレゼントに比べて年を取ってから欲しいと思う物は何かと値が張る。
それをただでくれるというのだ。
が、神羅という大企業で高給職に就いてるザックスにとって、よほど高望みしなければ金を出して買える物は事足りている。
時計、バイク…欲しいと思ったものは値が張るものでも大体手に入れている。
これより高額なものとなると不動産くらいだが、今はこの住居で十分だ。
物質的に満ち足りているとなると、欲しくなるのは精神的なものだ。
ザックスが要求するものは瞬時に決まった。