クラウドに圧し掛かっていた問題は無理やりではあるが解決してやれた。
だが、その後の状況に変化はまるで見られなかった。
相変わらずクラウドと会うことは叶わず、人づてに聞いた話では今まで以上に憔悴しきった様子を見せているという。
入院費用はあれで足りているはずだ。
もどかしい。
クラウドはまだ何か隠しているのか?
一体他に何を抱えている?
日に日にザックスの苛立ちは増していった。
燻っていた怒りの火種は次第にはじけ始める。
ザックスが指導役として参加した演習で最初の火の手を上がった。
「おい、そんな下らないミスしてんじゃねえよ。これが実戦だったらどうなると思ってんだ!」
些細な失敗をした新人のソルジャーを厳しく叱責し、その場に冷たい空気が流れる。
それも一度や二度では済まなかった。
いつも陽気な顔を見せていたザックスの荒んだ様に後輩たちも戦々恐々とし始める。
「何ピリピリしてんだよ。3rdの連中がビビっちまってんじゃねーか」
「あ?この程度のことも出来ねえから注意してんだろ!?」
「オレにまで当たるんじゃねえよ!いい加減にしろやっ」
ついには指導役同士で諍いが始まり、もはや演習どころではなくなった。
他の2ndソルジャーたちが諌め、その場は収まったものの、演習は途中で打ち切りとなった。
完全な八つ当たりだとザックスもわかっている。
だが周りへ配慮する気にもならないほど鬱積した思いがザックスの中で募っていた。
こんな気持ちになったのは始めてだ。
周りに集まる人間は誰でも自分を頼りにして来たし、その期待に応えてきたつもりだ。
だからこそ今の地位があるのだとザックスも自負している。
だが、一人だけちがう。
自分のことを頼ろうとせず、信頼しようともしない。
クラウドだけが、ちがう…。
こんなにも気にかけているのに、応えてくれない。
この感情はなんだ?
好きだから振り向いてくれないのが悲しい?
それとも…ただの驕りなのか?
自分の思い通りにならないクラウドが気に食わないだけなのか?
だから支配したいと思っている?
「ちがう…オレはただ…」
クラウドの前では全て丸裸にされてしまう。
自ら忌避していた見栄や驕りという鎧を自身も身に纏っていることに気付かされる。
周りが言うほど大層な人間だとは思っていない。
だがここまで狭量だったのか。
クラウドにそれを見透かされていたのかもしれない。
クラウドにだけ、本当の自分を……。