粉雪
  




第三十三話 揺らぐ心       side:Cloud



 日中の業務を終え、クラウドは一度寮に戻って着替えるとミッドガル市街へと向かった。
 そこからスラム行きの電車に乗り込み、スラムの中で最も栄えている六番街へとやって来た。

 風俗店の立ち並ぶ通りを避け、その路地裏にぽつんと存在する小さな雑居ビルの前でぴたりと止まった。
 手に持ったメモで住所を確認し、クラウドはその中へを足を踏み入れた。

 スラムに似つかわしい、その煤けた建物の中は暗くカビ臭かった。
 廊下に備えられている電灯は今にも消えそうな弱い光を発しながら点滅している。

 そこの一室の前でクラウドが呼び鈴を鳴らすと中から無精ひげを生やした男が出てきた。
「ああ、紹介所から来た子だね」
「…お世話になります」
 クラウドが頭を下げると男はクラウドを中に招き入れた。
「じゃあこれ。紹介所で説明受けてると思うけど、わからないことは周りから聞いて適当にやってね」
「はい」
 男から大きめの袋を受け取るとクラウドは部屋の奥へと姿を消した。



 * * *



 クラウドの元に入った電話。
 それは唯一の肉親である母親が倒れ、病院に運ばれたことを報せるものだった。

 連絡をくれたのは病院の人間で、具体的な症状などを電話越しに教えてもらった。
 一時は危険な状態だったが今は容態も落ち着いており、手術をすれば治るとのことだった。

 当然手術をしてもらうよう頼んだが、問題はその費用だった。
 そして術後もしばらくは入院して経過を見なければならない。
 手術費と入院費。決して安いものではなく、薄給のクラウドには厳しい金額だった。
 病院側も金銭事情を考慮し、またクラウドが神羅という大企業で働いてることから分納でいいと言ってくれた。

 しかし手術費用だけは頭金を先に支払う必要があるらしく、その分は急いで用意せねばならない。
 元々給料の半分近くは仕送りに当てており、貯金は雀の涙ほどしかなかった。歳の若いクラウドでは借金も出来ない。
 母親も慎ましく暮らしているが、田舎では就くことの出来る仕事は限られている。手術費用分も貯金があるか疑わしい。

 会社から支給される給金だけでは頭金を作ることも難しい。
 社内規定で副業は禁じられているが隠れてやっている者もいる。費用の捻出の為にはやらざるを得なかった。


 容姿を利用してその手の大金が稼げる店に出ようかとも考えた。
 しかしそれはあの下卑た噂を自ら肯定するも同然だ。自分にとって後ろ暗いことをして稼いだお金を母へ送りたくなかった。
 だが手っ取り早く稼げる手段ではある。一日でも早く手術を受けさせてやりたい。

 ふとクラウドの脳裏にザックスのことが浮かんだ。
 ザックスにそんなことをしてると知られたら…軽蔑されるだろうか。
 クラウドは我に返ると頭を振った。


 ザックスに知られたから何だというんだ。
 ザックスなんて関係ない…。





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