クラウドの心に少しでも近づきたい――。
その思いとは裏腹にザックスはクラウドと顔を合わせられずにいた。
日に日にザックスの中でクラウドの存在が大きくなっていく。
だがどうやって接したらいいのかわからない。
あふれ出てくる気持ちをセーブ出来る自信がなかった。
すぐにでもそばへ行って抱き留めてやりたい。
もう何も心配することはない。お前の気を煩わす者はいない。
もしそんなやつがまだ現れるようなら自分が蹴散らしてやる。
そう言って安心させてやりたい。
だがクラウドが自分と付き合いを持とうとしたのは親しくなりたいと思ったからではない。打算からだ。
そんなことはザックスにもわかっていた。
ザックスに対してのみならず、クラウドは頑なに他者に心を閉ざしている。
どうしたらその扉を開けることが出来るだろう?
模索してたどり着いた答えは、やはり『ソルジャー』だった。
* * *
ザックスは仕事の合間に執務室の端末を使ってクラウドの個人データを閲覧していた。
それには演習の成績やミッションで担当したポジションなどが詳細に記録されている。
トレーニングに付き合うようになって、クラウドの身体能力がどれほどのものかザックスもわかってきた。
しかしだからこそ何が原因でソルジャーの適性試験に落ちたのかがわからない。
筋力は若干乏しいかもしれないが、訓練次第でどうにでもなるレベルだ。技能や体力面で問題があるようにも見えない。
これまで参加したミッションの戦績や演習での評定なども見てみたが、それでもよくわからない。
直近のデータを見ると調子を落としていた時期もあったようだが、最近は持ち直している。
適性試験を受けたであろう時期は主だった演習は平均もしくはそれ以上の成績を残している。
弱点らしい弱点がなかった。
一番簡単なのは適性試験の結果を見ることだ。
しかしいくらソルジャーといえども正当な手順を踏んで試験管理局に許可を得なければ試験データを見ることは叶わない。
『第XX回 ソルジャー適性試験 受験結果:不合格』
端末上で確認出来るのはこのような簡素な試験結果だけだ。
データを見ただけでは不合格となった理由はわからない。
「うーん…ペーパーテストか?」
ペーパーテストはザックスも受験時にかなり苦戦した。
だがクラウドの成績からするとそれほど苦労するように思えない。
考えても結論は出てこなかった。
適性試験に落ちた原因を突き止め、クラウドへアドバイスをすることで少しでも信頼を得られればと思っていたザックスの皮算用はあっさりと突き崩れてしまった。
そんなある日、ザックスの耳にクラウドが上等兵に昇進した話が舞い込んで来た。