この夢はいつまで続くのだろう。
夢の中でまで夢を見るものだから、何が現実で何が夢なのかわからなくなってきた。
ここ数日、身体を休める目的で休暇を貰っているが自宅にはいたくなかった。そこで何をしていても落ち着かない。原因がわからず次第に苛々が募っていく。
それを発散する為に女の子と飲み歩いたりしてるが、飲んでも気乗りしない。
頭に浮かんでくるのは、いなくなったあいつのこと。顔がぼやけてよくわからないが、とても懐かしい気がした。
あれから一度も顔を合わせていない。
ずっと頭に引っ掛かっていることがあるのにそれがまだ思い出せない。
その上、次第に飲みに行くだけでは発散が出来なくなりつつあった。
全身が熱い。治まりのつかないこの熱をどうしたらいいのだろう。
不思議なことに女の子を抱く気にはならなかった。だから誘われても全て断っている。
* * *
外から自宅に帰る時はいつも憂鬱だ。
何かを期待して帰るのに、必ず期待外れに終わるからだ。何を期待しているのか自分でもよくわからないが。
今日もどうせ期待外れなのだろう。そんなことを考えながら帰宅すると、リビングに誰かがいた。
あの金髪は、ルームメイトの…。近付くと、慌てた様子でこちらを窺っている。
何をそんなに怯えているのか、相変わらず理解出来ない。
イラつきが最高潮に達し、もうこのまま眠ろうかと寝室へ向かう。
ふと寝室のベッドを見て思い出した。
そうだ。オレはこいつと恋人同士だった。
そしてもう一つ思い出す。
オレはずっとこいつを抱きたいと思っていたんだ。
久しぶりに会えたんだ。こいつを抱こう。
ソファに向かうと、また怯えた顔をする。恋人同士なのだから怯えることなどないだろう。そう思ってキスをしたら、舌を噛まれた。
拒否されたことに無性にイライラして頬を叩く。恋人なのだからこれくらい普通にすることだ。何を嫌がっているんだ。
抱こうとしたら今度は暴れ始めた。
それを無視して服を脱がそうとしたが暴れるので力任せに破いてしまった。
そのまま行為を続けると、いつもしていたことのはずなのに泣き始めた。
なんで泣くのだろう…?
眼下の泣き顔が胸を締め付ける。泣かせるつもりじゃなかったのに。
そのうち泣きやむと思っていたのに身体を重ねても相変わらず泣き続ける。
…どうしたらいいんだ?
「…ザックス…どこ行ったの……」
泣かないで欲しい。けどどうすればいいのかわからない。
名前を呼ばれる度に頭がキリキリと痛む。まるで万力で締めつけられているようだ…。
また薬品のにおいが蘇ってきた。頭が痛い。頭が…。
「ザックス…ザックス?オレここにいるよ」
懐かしい声が頭に響く。痛む頭にフッと浮かんできた名前を口にした。
「…ク……クラ…ウド…」
「ザックス!オレのこと、思い出してよ…」
ずっと頭を締めつけていた何かが外れていくようだった。
霞がかった視界が晴れていく…。
* * *
…長い夢を見ていたようだ。寝過ぎていたのか、頭がぼーっとする。
目を開けた先にいたのはクラウドだった。涙で頬濡らしながらこちらを見つめている。
「…クラウド…?なんで泣いてるんだ?」
おかしい。オレは実験室にいたはずだ。なぜクラウドがここにいる?
だが、クラウドはここはオレの部屋だという。いつの間に戻って来たのだろう。
「ザックス、記憶が戻ったの…?」
記憶とは何のことを言っているのか。思考が追いつかない。するとクラウドが突然抱きついて、キスをして来た。
ああ、この温もりがずっと欲しかったんだ…。
帰って来たんだ、家に。クラウドの元に。
差し入れられた舌をゆっくり味わうように絡め取る。
唇を離すと、クラウドがぼろぼろと涙を流して泣いていた。よく見ると頬が赤く腫れている。どうしたのか聞いても答えてくれない。さらに問い質そうとしたが、他のことに気を取られてそれどころじゃなくなった。
クラウドは裸で…よくよく下半身を見てみたら、自分と繋がっていた。
いつからこんなことをしていたのだろう。無意識に腰を動かしたらクラウドに張り飛ばされた…。
実験の前にお預けされたから、最後にしてから結構時間が空いているはずだ。
この状態で止めることも出来ず、泣いているクラウド相手というのは少々気が引けたが、そのまま続けさせてもらうことにした。
ゆっくり腰を動かし始めると、また泣いてしまった。痛かっただろうか。しかし声を掛けるとそのまま続けろという。
再度動かし始めると、今度は腰に両足を絡めてきた。痛がっているようではないのでホッとする。それどころか、首に腕を巻きつけながら
「ザックス…ザックス大好き…」
と甘い声で囁く。
幸せそうな顔でそんなことを言うものだから、こちらの動きも俄然早まる。
腹部に当たる熱いそれに煽られ、さらに腰を奥へ進める。するとまたかわいらしいことを言ってくれる。
一体どうしたんだろう。自分から腰を動かすなんて滅多にないのに。
こんなに積極的なクラウドは初めてかもしれない。いつもなら恥ずかしがって絶対言わないであろう言葉をこれでもかというほど口にする。
ぎゅうぎゅうとそこを締めつけられ、少し引くと更に締めつけてくる。あまりの強さに少し文句めいたことを言うと、クラウドは悲しそうな顔して頭を振った。
「だって、ザックスが…出ようとしたからあ…っ」
泣きながらそんなことを言われて引けるわけがない。引きかけたそれを奥へ突くとクラウドが泣き叫ぶように喘いだ。
そのまま何度も突いてやると、一際大きな声を上げて全てを吐き出した。
オレも耐え切れずに中で果てた。