どれくらい経っただろう。乱れていた呼吸が元通りになりかけた頃、ザックスは徐に身体を起こし始めた。
「…ザックス?」
もう一度、祈るような気持ちで名前を呼ぶと、ザックスは虚ろな表情をしながら何かを思い出すようにゆっくりと瞬きを繰り返す。
「クラウド…?なんで泣いてるんだ?」
「あ…」
懐かしい魔晄の瞳。そこにあの冷たさはなかった。
「ここ…実験室か…?」
ザックスは気だるそうにつぶやくと、緩く頭を動かしながら周りの様子を確認した。
ここを神羅の実験室と勘違いしているのだろうか?
記憶が混濁しているのかもしれない。それはつまり…。
「ここはザックスの部屋だよ…」
「オレの?」
なぜここにいるのか、よくわかっていないようだった。
「ザックス、記憶が戻ったの…?」
震える声でザックスに訊ねた。
「記憶って?実験室にいたはずなのに…なんで…」
ザックスだ。その口調も…こちらを見つめる瞳も、あの優しいザックスのものだ。
痛みに悲鳴を上げる身体を必死に起こし、ザックスの首に縋りついた。
「え?何だ?」
「ザックス!ザックス!」
事態を飲みこめず唖然とするザックスに自分から口づけた。舌を絡めようと口内へ自分のを割り入れると、逆に向こうに絡め取られた。
先ほどとは違う、いつも交わしていた蕩けそうなキス。普段では考えられないほど自分からも舌を熱く絡ませる。涙腺が涸れてしまいそうなほど、涙が後から後から流れ出てくる。
ザックスが帰って来た…やっと帰って来てくれた…。
重ねていた唇を離すと、何かに気付いたのかザックスがまじまじと見つめてくる。
「…クラウド、こっちのほっぺ赤いじゃないか。どうしたんだよ」
「あ、これは…」
先ほどザックスに叩かれたと本人に言えず、もごもごしていると、
「てか…オレなんでお前の中に入って…るんだっけ?」
「!!」
顔を綻ばせながら緩く腰を動かすザックスにハッと我に返り、思わずその身体を突き飛ばした。
「バカバカぁ!!何言って…!」
「ちょ…あ、これこのまましてもいい?」
「あ、待って…」
「ごめ、しばらくしてなかったから我慢が…ごめんな」
傷つけないよう、優しく動くザックスに涙がまた溢れてきた。
目の前の人は自分がよく知っているザックスで…。先ほどまで強引な行為をしていたのは一体誰だったのだろう?
「…痛いか?」
「い、からっ…そのまま」
「ああ…」
わけがわからないといった顔でザックスはゆっくりと腰を動かし始めた。その腰に両足を絡め、ねだるように抱き縋る。
「ザックス…ザックス大好き…」
「…どうした?今日は何か…」
不思議そうな表情で覗き込まれる。そのまま両手首を捕らえられ、早まる律動に声が上がる。
「あっ!だめ、ひっあ!」
擦られる内壁と、ザックスと自分の腹に挟まれ擦れる自身からもたらされる悦楽に酔いしれた。
「ふあぁ、ザックス!あん、好き…」
「ん…オレも好きだぜ、クラウド」
その言葉にうれしくなり、自然に腰を動く。羞恥心はどこかへ消え失せていた。全身でザックスを感じたかった。
「ザックス、もっと!もっとして…」
「くっ…きつ…」
ザックスが顔を顰めて中から引いていこうとした。反射的に力が入る。
「あ!抜いちゃやだ…っ」
「バカ、動けねえだろ…んなに締めんな…」
「…だって、ザックスが…出ようとしたからあ…っ」
またザックスがどこかへ行ってしまう。そう思ったら繋がっているのに涙が流れてきた。
「なんで泣くんだよ…泣き虫」
頬を流れる涙を舐め取ると、ザックスはぐいっと奥へ一気にそれを挿れた。擦られたそこがよくて、頭が真っ白になる。
「ひうっ!?あ、あ、そこダメ!イっちゃう…」
「いいよ。ほら」
「だめっああああ!」
まるで頭の中に火花が散ったような感覚がして、そのままソファに沈み込んだ。