本社を後にし、クラウドが自宅に留まっていることを祈りながらザックスは急いだ。
家につくと、ソファに寄りかかるようにして屈みこんでいるクラウドの姿が目に入った。身体に異変が起こったかとザックスはすぐさま駆け寄り、肩を抱いた。
「クラウド、大丈夫か?」
「…ザックス?どこに行って…」
「悪い、ちょっと用思い出して…」
「う…あ…っ」
ザックスと顔を合わせた途端、クラウドは頭を抱えて苦悶の声を上げた。
「どうした?苦しいのか?」
「ザックス……」
覗き込んでくるクラウドの瞳は色を湛えていた。ザックスの脳裏に宝条の言葉が蘇る。
クラウドはまるで何かに操られているかのようにザックスにすがりつく。着ていたシャツの片側がだらしなく脱げ落ちる。よくよく見てみれば、クラウドはシャツ一枚を羽織っただけで、他は何も身につけていなかった。
なぜこんな格好をしているのか。疑問を抱いた瞬間、窓から差し込むわずかな光に照らし出された白い肌がザックスへと絡みついてきた。
「クラウド、お前…」
「…ザックス」
クラウドはザックスの手を取ると自分の乳房へと引き寄せた。それに驚いたザックスは反射的に手を払いのけた。
「やめろ!どうしちまったんだよ!?」
拒絶され、一瞬固まるとクラウドは蒼く光る瞳から涙をこぼした。
「なんで…昨日も…してくれなかったのに…」
「!」
「ずっと待ってたのに…」
宝条の言っていた兆候とはこのことだったのだとザックスは悟った。ザックス同様、クラウドも湧き起こる衝動と理性の狭間で必死に抗っていたのだ。
だが、クラウドは陥落してしまった。そしてザックスの崩壊もすぐそこまで迫っている。
ザックスは目の前で小さく身体を震わせながら嗚咽を上げるクラウドを抱き寄せた。
「頼む…泣かないでくれ」
慰めてやる以外、どうすればいいのかわからなかった。
元に戻る手掛かりを見つけに行ったはずが化学部門の統括すら戻る方法はわからず、こうして帰ってきてみればクラウドは正常とは言い難い状態だ。
ザックス自身、気力が尽きかけつつあった。疲弊しきった精神はまともに機能することを拒み、クラウドと共に底無し沼へと沈みかけていた。
頭ではダメだとわかっていても、身体は反応を示している。クラウドを抱きたいと。
まるでそれを読み取ったかのようにクラウドが下腹部へと手を伸ばし、そこを撫で上げた。
「は…っ」
狼狽するザックスを横目に、自分を求めて猛っている雄を引きずり出すとクラウドはうっとりした表情でそれを扱いた。
「クラウドっ」
「ザックスもしたかったんだね…一緒にしよ」
そして躊躇することなくそれを口に含んだ。
「ん…」
「くっ…クラ…」
止めなければ。そう思っているのに撥ね退けることが出来ない。身体が愛撫を受け入れてしまう。
なぜならそれはずっと欲っしていたことだから。
女になってしまう前から…クラウドのことを想っていた。弟のように思っていた親愛の情はいつしかそれ以上の感情へと変わっていった。
だが気持ちを伝えるつもりはなかった。困惑させるだけなのは火を見るより明らかだったからだ。好きだからこそ気持ちを隠し通すことを選んだ。
それなのに、そのクラウドから求められ、どうして抵抗することが出来るだろう。
性別が変わっても抱いていた情欲に変わりはない。むしろ同性へ想いを抱くという背徳感から解放された感情は日に日に高まって行った。
一緒に暮らすようになっても意識しないようにした。同じ布団で寝た時も堪えた。
でも、もうダメだ。
ザックスは最後に残っていた理性を吐き出すように大きく息を吐くと、下腹部からクラウドを引き剥がした。
「や、ザックス…」
嫌がるクラウドを抱きかかえるとソファの上に寝かした。そして唾液で濡れている唇を吸った。
「ん、ふ…」
もう止めることは出来ない。互いに舌を絡ませながら、ザックスは足の付け根を辿ってそこに触れる。まだ触ってもいないのにそこはすでに濡れていた。
中へ指を挿入すると、クラウドが身体を震わせながら悩ましげな声を上げた。
「ふあっ…ん」
「なんで…こんなに濡れてるんだよ」
咎めるように言いながら、ザックスは愛液の溢れ出ているそこを指で攻め立てた。ぐちゅぐちゅと卑猥な音が響き、クラウドは身体を捩る。ザックスはそれに合わせてぷるぷると微動する白桃のような乳房を吸った。
「ん!あ、だって…我慢出来なくてっ…」
「…一人でしてたのか?」
「うん……だってザックスいなかったから」
ザックスは身体を起こし、快楽に悶えるクラウドを見つめた。男であったことなど欠片も感じさせない扇情的な姿がザックスを壊していく。
恥ずかしそうに顔を赤らめるクラウドにごくりと喉を鳴らすと、ザックスは濡れそぼったそこに顔を埋めた。
「ひぁっ、そんなとこ…っ」
舌でそこを舐められる度にクラウドは引き付けを起こしているかのように身体を跳ねさせながらソファへ頭を埋めた。敏感な箇所を突かれると、腿の付け根で揺れ動くザックスの頭を掴んで更に嬌声を上げた。
「いやあ!そこは、ダメぇ」
それで止まることはなく、ザックスは愛撫を続けた。そしてクラウドが一際高い声を上げて達すると、ザックスは上半身を起こして眼下のクラウド見やる。
呆けていたクラウドはザックスと視線を合わせると、両足を開き、そこを自ら押し広げて妖艶な笑みを浮かべた。
「…入れて…もう我慢出来ないよ…」
ザックスは誘われるままに怒張した自身をそこへ宛がうと、一気に内へと挿入した。
「んっあ…っ!ザックス!」
「クラウド、クラウド!」
クラウドは快感に喘ぎながらザックスへと両手を伸ばし、首に抱き付いた。
「もっと、もっと奥に…!」
望み通り最奥へと自身を打ちつけてやると、クラウドは背を仰け反らせてびくびくと全身を痙攣させた。
「クラウド…好きだ、ずっと好きだった…」
こんなに欲しいと思っていたのに、どうして今まで我慢していたのだろう?
目の前の存在は自分と繋がっていることにこんなにも悦びの声を上げている。
手を伸ばせば、いつでも抱くことが出来たのに。こんなことなら早く手に入れていればよかった。
狂気に取り込まれたザックスは本能が求めるままに己の下で乱れる肢体を貪った。