sequel.3 天使のお留守番 #07
ヘリで本社に帰還したザックスは報告と身体検査を簡単に済ませて急ぎ兵舎へと向かった。
だが自宅のドアの前に着いたところでザックスは立ち止まった。
玄関を開けるのが怖い。
もし帰宅の挨拶を告げても何の返事もなかったら。
クラウドがいなくなっていたら。
そんなことあるわけがない。
きっとあの笑顔で出迎えてくれる。
ザックスは玄関のドアを思い切りよく開け、不安を必死に振り払うようにわざと大きく声を上げた。
「たっ…ただいま!」
玄関から部屋へとザックスの声が響き渡る。
そこに立ったまま反応を待つが、玄関を通り抜けた廊下の向こう側――リビングからクラウドが来る気配がない。
家にいるなら絶対に聞こえるはずだ。
どうして出てこない?
出かけているのか?
「ク…クラウド…いないのか…?」
先ほどとは打って変わってか細い声でその名を呼ぶ。
それでも返事はない。
玄関に重い沈黙が訪れ、それと反比例してザックスの心臓が早鐘を打つ。
まさか、自分がいない間にまた上へ戻ってしまったのか?
「うそだ……クラウド!どこいったんだよ!?」
その名を叫ぶと、ザックスはリビングへ通ずる廊下へ足を踏み出した。
するとそれと同時にリビングへと続く廊下のドアが開いた。
「ふあ……あ、おかえりザックス!」
「え?」
クラウドは目蓋をこすりながら廊下をかけてくる。
どうやら昼寝をしていたせいですぐに反応しなかったようだ。
家を出る前と変わらぬ姿で出迎えてくれたことにザックスは安堵の息を吐く。
ザックスは自分の元へやって来たクラウドを抱え上げて、再び帰宅の挨拶を告げた。
日向のような匂いが鼻腔をくすぐり、春を思わせる温もりがザックスを包み込んだ。
食べてしまいたくなるマシュマロのように柔らかい頬に自分のそれを摺り寄せて感触を味わった。
たった5日間離れただけなのにこんなにも愛しいと感じてしまう。
つくづく、自分はクラウドに狂っているとザックスは自嘲した。
ザックスが至福の一時に浸っていると、
「…あれ?もう一週間経ったの?」
クラウドは首を傾げながら指折りして日数を数えた。
「お前に会いたくて早く仕事終わらせてきたんだよ。オレがいない間、ケガしなかったか?」
「してないよ」
「メシはちゃんと食ってたか?」
「うん、ザックスいなくても大丈夫だったよ」
「あ、そ、そうなの…」
こうも笑顔で言われてしまうと立つ瀬がない。
結局子供のように寂しがっているのは自分だけなのか…。
ドライな反応のクラウドにザックスはがくりと肩を落とした。
「でも…こんなにザックスがいなかったの初めてだから早く帰ってきてくれてうれしい。会いたかった」
そう言ってクラウドはザックスの首にきゅっと抱きついた。
空しい気持ちに駆られ、どん底に突き落とされたザックスは一転して幸せの絶頂に達した。
「…お、オレも会いたかった!」
「ひゃ」
その言葉を待ってたとザックスはクラウドをその場に押し倒した。
愛しい唇を味わうように何度もキスを繰り返す。
そして玄関先でクラウドの服を脱がし始めた。
「んっ…ここでするの?」
「オレもう我慢できねえよ。5日も離れてたんだぜ…」
ザックスが身体を摺り寄せると、クラウドはするりと下腹部へ手を伸ばした。
「本当だ。もうおっきくなってる」
「うっ…おい」
無邪気にそこをいじられ一瞬ひるむが、ザックスはお返しとばかりにクラウドの下腹部に触れた。
「この…人のこと言えないだろ」
「わっ」
ザックスがズボンごと下着を下ろすと、小さく自己主張するそれが飛び出した。
「ほら見ろ。クラウドだってしたいくせに」
「うん。ここでいいからしよ」
相変わらずいじめがいのない反応をするクラウドにザックスは苦笑する。
そして数日振りに触れる身体を思い切り抱き締めた。