sequel.3 天使のお留守番 #06
ミッドガルを出発して5日目の午後。
ザックスたちはすでに帰宅の途についていた
初日から心ここにあらずの様子だったザックスにいい加減イラついたカンセルから言われた一言。
「さっさと新種のモンスター確保して害獣モンスターどもを掃討すればお前のかわいい恋人が待ってる家に早く帰れるだろ。うかうかしてると英雄様に掻っ攫われるぞ」
この一言で怒涛の勢いで仕事を終わらせてしまった。
今回のミッションでは捕獲困難と目されていたモンスターも恐るべき動物的勘を駆使し、発見からわずか1時間足らずで捕獲してしまった。
ミッドガルを出発して5日でミッションを終了させてしまったのだ。
しかし迎えの輸送車は出発の一週間後に来る予定だったので移動手段がない。
そこでザックスが統括に掛け合って至急輸送ヘリを飛ばすように要請した。
「予定より早く帰れるとは思ってなかったぜ。隊長様々だな」
「この数日間の腑抜けぶりはなんだったんだよ。まあ早く終わったからいいけど」
「うーん。やっぱ1stが本気出すと違うもんだなあ…」
「…ったく。最初から本気出せってんだ」
感心するソルジャーたちの横でカンセルは独りごちた。
初日以降、ザックスの携帯はカンセルに没収されてしまった為、クラウドとの連絡は一切断たれてしまった。
おまけに出掛けにちゃんと充電していなかったせいか、統括と連絡を取り終わってすぐに携帯がバッテリー切れを起こし、電源が入らなくなっていた。
声すら満足に聞けないこの状況が耐え難い。
早く帰りたい。
子供のように逸る気持ちが抑えられなかった。
ザックスはヘリを待つ間も落ち着きのない様子で空を見上げては岩場に座る、という単調な行動を繰り返していた。
ようやくヘリがザックスたちのいるポイントに到着し、ミッドガルへ向けて飛び立ってもそれはおさまらなかった。
指でデッキを叩いたりしながらチラチラと窓を見たり、かと思ったら腕時計に目を向けたりと忙しない。
「さっきからなにやってんだよ。あとちょっと我慢すりゃ会えるんだから大人しくしてろよ」
「…わーってるよ」
「……?」
てっきりまたノロケが始まると思ったカンセルはいつにない反応を見せるザックスに首を捻った。
クラウドと暮らすようになってから今回ほど長く離れたことはなかった。
出会ってから最も長く離れたのは、クラウドが天界に戻った時だけだ。
目が覚めた時に姿を消してしまった時の喪失感と絶望感はクラウドが人間になった今もザックスの中でトラウマとなって残っている。
何だかんだと理由をつけて遠征を避けていたのは長く家を空けて帰宅した時、家がもぬけのカラになっていたら…その不安もあったからだ。
ザックスはぶんぶんと頭を振った。
クラウドはずっと自分の元にいると誓ったのだ。今更いなくなるわけがない。
――でも、もし……もし自分がいない間に心変わりしてしまったら……