対峙2
やがて砂煙がやみ、兄妹達がよってきた。
他の者たちはなぜが眠っている。
もしかして、力に押され気絶してしまったのかもしれない。
「大丈夫か、闇夜」
それは闇夜にいわれた言葉ではなかった。
第二王子の兄さんが、磨鈴に言う。行生兄は二人目の兄で聖家の第二王子。
私には優しくしてくれるのだが、花紅路など従者に対しての態度はそうほめられたものではない。
その行生が磨鈴にやさしく手を差し伸べていた。
「あっレオがいないわ」
レオ兄は地位としては二番目に強い。
一番目は誰かというと、知る者は少ないが闇夜である。
闇夜は、第三王子闇夜とも第三王女闇夜とも言われる人物だ。
幼いころは女だったのだが出来立ての遺伝子にショックが起こり
男にもなれるようになってしまったのだ。
「兄さん闇夜が、二人いるよ」
雪が、闇夜と磨鈴を見てかなり動揺して言う。行生はくるりと見渡し怒鳴りつけた。
「馬鹿か、お前!こっちが、闇夜だ」
恐らく先ほど取られたネックレスを見てのことだろうと思った。
あれは小さいとき行生が買ってくれたものだ。
「何で、分かるの」
未牡が不思議そうに見比べる。
「ネックレスだよ」
行生がそう言うと二人は納得したように声を上げた。
「お兄様」
闇夜は、困惑して言う。
「わっ、きしょく悪ぃ」
行生の普段の素行が分かってしまうような口振りでいう。
「お兄様」
いつもとは、到底違う声で言われて闇夜は、泣きそうになりながらも名前を呼ぶ。
「兄様私が、闇夜です」
そういったが兄はあくまであっちが本物の闇夜と思っているようだった。
苦しくて、悔しくて、もう涙で顔はぐしゃぐしゃだっただろう。
「汚らわしい声で、俺を呼ぶな」
「バキッ」
そんな音があたりに響いた。
闇夜の顔にはきっと青あざができたに違いない。
この瞬間、闇夜は、激しい感情に体を手放したくなった。
だが、この時痛みよりも強く復讐心が襲った。
なんで行生は気づいてくれないのだろう。
なんで、雪たちは助けてくれない。
私がわからないの?
闇夜の心は凍りそうになっていた。「今、お前を王と王妃の前に連れってってやるよ」
行生が、闇夜だとは知らぬとは言え、乱暴な言葉をはく。
だが闇夜にとってそれは救いだった。
さすがに自分の親はわかってくれるだろう。
そう思っていた。
本来なら敵でも裁判が終わるまで、神の資格も持たない者はここまでしてはいけない。
そうこのような重要な場では。
まして、王子でありながら宮廷の仕組みも分からずにいる馬鹿である者は特に。
双子のくせに雪とは大違いだ。
雪は今、宮廷音楽科の仮教師である。
けれども、弱気者にも強気者にも教えを求める者ならその教えをといている。
少しは見習えと私の守護者である花紅露ならいいかねないと闇夜は怒りと共に思った。
「その必要は、ないよ。ここにいるからね」
ゆうは、息子の前に飛び出すと、子供たちの遊びにつき合おうと思い闇夜と知っていながら言う。
「罰はねぇ永遠に牢屋だよ。丁重につれていって。僕達、当分帰らないから」
と突き放すように言った。
父親の心情を知らぬ闇夜の目の前は完全にブラックアウトした。
戻る 小説へ 進む
さすがに他の民の前ではこの設定は使えないから寝てもらいました。