男子トイレ・・鏡の前で溜息をつくボク。
「・・・・どうしよう・・・・こんな姿」
学校で、しかも男子トイレでの性転換。普通なら大騒ぎだよ。
幸い授業中だから誰もいないけど。もし誰かに見られたら・・・
いや、もっと重大な事がある。
「こんな姿では、ボクだと信じてもらう人なんかいるのだろうか?」
一応元の顔の面影はあるけど全くの別人の女の子。しかも声まで変わっている。
これじゃぁ、クラスの連中はともかく姉さんや父さんにまで信じてくれるのかわからない。

「ううっ・・・なんで・・・・」
眼柱が熱くなる。ふと見れば鏡の少女も大きな瞳に涙を浮かべてこちら見ている。
・・・・ズキン・・・・・
胸が締め付けられる。ボクは思わず鏡に手を伸ばしてみた。
少女も同じように手を伸ばす。けれども壁に阻まれて途中で止まってしまう。

「・・・・・・・・・綺麗だな」
思わず、口に出た言葉に頬を赤らめるボク。
ナルシストじゃないけど、突然自分の目の前にこんな美少女が現れたら、つい言ってしまうだろう。
ボクは鏡の少女をしげしげと見た。身長は特に変わっていないようだ。
もともとボクは男子の平均身長より低い方だから、女の子に変わっても目線が変わるほどでもなかったようだ。
ただ、体型がかなり変わっているからどうも男子の制服が全く合ってない。当たり前か。
突然、廊下に人の声。
「やば!見回りの先生だ」
現実に引き戻されたボクは、急いで個室に入って鍵をかけた。
紺のブレザーを押し上げる大きな胸がドキドキしている。
「ううっ・・・・来ないで」
祈るような気持ちでボクは事態が過ぎ去るのを待った。
暫くすると、どうやら通りすぎたらしい。廊下には誰もいなくなった。
「ほっ。よかった・・・」
思わず胸を撫で下ろす(実際重いんですけど)
呼吸がまだ乱れている。息をするたびに大きな胸が動く。
・・・・・この胸に触れてみたい・・・・
ふと頭を過る。何を馬鹿な事と思って首を左右に振る。
「と、とにかく、ここから出ないと・・」
男子トイレに美少女。注目されるのは必死だ。
もともと大勢の前では人見知りの激しいボクが注目されるなんて悪夢以外の何ものでもない。
「うううっ・・・どうしよう・・・・」
気は焦るが、突然の事なので具体的にどこにいけばいいか考えていなかった。
保健委員の真崎さんには、ボクが保健室に行っている事は教えてあるから本人がその場いないのは変だし・・・
「やっぱ、保健室に行かないと駄目かな?」
などと考えていると・・・・

・・・・キーーーン・コーーーーン・・・・・・・

無機質な電子音のチャイムが廊下に響く。
「やべ!! 授業が終わっちゃった・・・・」
慌てて男子トイレから出た直後、ボクは突然後ろから声を掛けられた。
「ちょっとあなた、トイレでサボっていたの? 駄目じゃない」
ううっ・・・見つかっちゃった。どうしよう。でもどこかで聞いたような声だけど。
「あなた・・・女の子よね。なんで男子トイレなんか入っていたの?
しかも男子の制服なんか着ちゃって。制服は指定を着ないと校則違反よ」
うううう・・・好きで校則違反しているわけじゃないよ。
女になったから仕方が無いじゃん。
ふと、見ると何人かが何事かとこちらに集まりはじめている。
「あ〜あ、来ちゃった・・・・」
ボクは観念して振り向いた。すると・・・
「え? み、美由さん?」
なんとそこに立っていたのは、従姉の 篠崎 美由(しのざき みゆ)さんだった。
医学部出身で、医師免許があるのにどっかの学校で保健の先生をやっている変わり者って聞いていたけど・・・
「あら? あなた、私の名前を知っているの? 今日からこの学校に赴任したばかりなんだけどね♪」
「あ、そうそう。あなたこの辺で男の子を見なかった? なかなか、来なくて探していたんだけど」
それってボクの事だ。ううっ・・この場では自分でしたって言えないよ。
実際、さっきからこちらを見ている視線が痛い・・・
・・・・ヒソヒソ(*´д)ヒソ(*´д`)ヒソ(д`*) ・・・・・
「・・・何あの子、なんで男子の制服なんか・・・・」
「・・・カワイイじゃん。あんな子うちの学校にいたっけ?」
「・・・すげぇ美人だよな。1年生か?・・・」
「・・・奥手かしら・・・ふふっ・・・かわいい」
「髪が綺麗よね・・・・お姉さん羨ましい・・・・」
休み時間なので他の学年の生徒が大勢周りにいる。これじゃぁ、いい見世物だ。
「と、とーーーにかく、わ、訳は・・・・話します。ボ、ボクを保健室に・・・連れて行ってください」
「え? ちょ、ちょっと・・・・」
顔を真っ赤にしたボクは美由さんの手を強引に引っ張って、この集団の輪から外に出た。
保健室に着くなり、ボクは美由さんに今までの事を話した。
「にわかに信じられないわ。男が女に変わるなんて・・・・」
「ボクも信じられないです」
「でもあなたが、徹くんなのは解ったわ。話し方や雰囲気も同じだったものね」
「あんまり、嬉しくないです。嫌な事を思い出しました」
「ぷぷっ!・・・・まだ、覚えていたの? 可愛かったじゃない」
小さい時には散々、姉さんと共にボクを着せかえ人形にしたくせによく言うよ。
でもよかった。信じてもらえて。
「でも改めて見ると、美少女じゃない。きっと学校中の話題になるわよ」
「嬉しくないです・・・はぁ・・・元に戻りたいよ・・・」
「でも、精密検査は必要のようね。明日にでも大学病院に行った方がいいわ。一応、紹介状は書いておくけど」
「お願します。あ、それと・・・クラスには早退届を出しておいて下さい」
「担任の先生に言っておくわ。でもその格好で帰れるの?」
そうだった・・・・・重大な事を忘れていた。
「この格好で外を歩いたら目立つし、何よりも変だよ。どうしよう・・・・」
「大丈夫。倉庫に女子の制服の見本が何点かあったと思うから、持ってくるわ」
・・・・え? 女子の制服?・・・・・
「それって・・やっぱスカートを履くんです・・・・よね?」
「当たり前じゃない」
ううっ。アイツの言っていた事が現実になるなんて・・・悪夢だ。

結局、美由さんが持ってきた制服を着る羽目になった。
ボクの目の前には紙袋数個がある。中に入っていたのはブレザー・ブラウス・スカート等の一式。
「サイズはどうかわからなかったけど、一応全部持ってきたわ」
美由さんはサイズの異なる制服を取り出しては、ボクの身体に当てて見た目を確認している。
「う〜ん、大きいサイズだと調度いいから、これがいいわね」
「これですか・・・・」
元々見本なのか、制服はビニール袋の中にあった。ボクが袋を破って中にあったブラウスを手に取ろうとすると・・・
「ちょっと待って! 今すぐ着てもらいたいけど、あなた身体が汗でベトベトじゃないの? 拭いてあげるから制服を脱いでくれる?」
「え? ここで・・・ですか?」
「そう。身体を汗まみれにしては冷やしてしまうわ。あ、カーテンと部屋の鍵は閉めておくから心配しないで」
ボクは急に恥ずかしくなってしまった。
「・・・・で、でもボク恥ずかしいんですけど」
「いやぁね、変な事はしないわよ。身体がどんな変化したか見てみたいし、何より徹くんのその綺麗な身体を見てみたいしね♪」
「結局それが目的ですか!!」
ボクはうな垂れながら丸い腰掛椅子にしゃがみ込んだ。
「・・・・・はぁ・・・・・」
「落ち込まないの!さ、さっと脱いでちょうだい」
美由さんに堰かされながらボクはしぶしぶ制服を脱ぐことになった。

ボクは丸い椅子座りながら上半身を裸にして、暖かい蒸しタオルで身体を拭いてもらった。
美由さんは、まるで腫れ物を扱うように丁寧に拭いていく。
・・・・ジン・・・・・ジン・・・・・
「・・・あ、・・・・」
身体を拭かれるたびに、つい甘い声が出る。身体の感覚が男の時と違うのか敏感になっているのだ。
「女の子ってすごく敏感なんだな・・・」
ジーーーーと美由さんがボクの胸を見ている。
「な、なんか恥ずかしいんですけど・・・」
「あ、ご、ごめんなさい。あんまり綺麗な胸をしているから、つい見惚れちゃったわ」
そう言われてボクはつい腕を組んで胸を隠そうとした。
「うーーん・・・ちょっと触らせてくれるかな?」
半ば、強引に美由さんは脇からボクの乳房に触れる。
・・・・ジン・・・・・
「・・・・あん!・・・・」
突然じゃないけど、一瞬電気のような強い感覚が全身に来る。
桃色の先端が疼いてくる。
「・・・・本物か。すごく柔らかい・・・」
しげしげとボクの胸を見ながら拭いている美由さん。
気のせいかさっきから同じ所を拭いているような気がするんだけど・・・・
「肌が白くてきれいねぇ。徹くん、ちゃんと肌の手入れをしないと駄目よ。同姓のわたしだってドキっとしているんだからね」
「はぁ・・・」
一体何の話をしているのやら・・・別に好きでこの体になったわけではないのに。
妙に美由さんの言葉がトゲトゲしいな・・・
「はい、次は下ね。ズボンを脱いでくれる?」
「やっぱ・・・駄目ですか?」
「駄目!ちゃんとこの目で納得したいからね」
「とほほ・・・」
昔から頭の上がらない人の言葉なので、ボクはしぶしぶズボンを脱いでトランクスも下げた。
「ふーーん、パイパンじゃない。特殊な病気かも・・・・・」
しげしげと、美由さんはボクの無毛のアソコを見なら、下半身を拭いていく。
「・・・・ひゃぁ!・・・・・」
突然、タオルがアソコに触れる。思わず全身に電気が走ったかと思ったら、自分でも驚く程かわいい声をあげていた。
「あ、ごめん、ごめん。でもこれであなたが完全に女の子だってわかったから心配しなの。
それにしても、かわいい声がでるのね。気持ちも女の子になったのかな?」
「・・・・・・・」
美由さんは、ニヤニヤした表情になっていた。なんかごまかされた感じだったけど。
ボクは顔を真っ赤にしながら急いでトランクスを履いた。とは言ってもトランクスだけなのは心もとない。
「う〜ん、それじゃ身体が冷えてしまうわ。これを着なさい」
「これって・・・・Tシャツ?」
「ちょっとサイズは大きめだけどね」
美由さんから渡されたのは、白のTシャツだった。たしかに着た感じはブカブカだ。
ちょっとでも動くと大きな胸が動いて先端が生地にあたる。
「うーーん、本当はブラを付けないと駄目だけど、今はしょうがないか」
「やっぱ女物の下着をつけないと・・・駄目・・・・なの?」
「当たり前よ、胸の線が崩れてしまうわ。明日にでも買いに行きなさいね」
「はぁ・・・ボクが何で・・・・」
消沈した表情で白いブラウスを手に取った。
「う・・・着にくい・・・」
ブラウスのボタンを付ける時には、つい胸を意識してしまう。
動くたびに大きな胸が揺れる。
「・・・とこんなんでいいのかな」
ブラウスを着た感じは、肩幅はピッタリして十分だったけど、さすがに胸の大きさまでは隠しきれていない。
「うーーん・・・これじゃぁ・・・目立つよな」
目線を下げれば、胸が自己主張している。次にチェックのスカートを手にとる。
「まさか、こんなの履くとは・・・・とほほほ」
ズボンを脱いだ時に気が付いたけど、ボクの腰周りって妙に括れているんだよな。改めて下半身を意識してしまう。
「へぇ・・けっこう脚が長いじゃん」
スカートが短いのか、その分脚の長さが強調されている。白い太腿が見えそうなのが気になるけど。
履いてみるとズボンとちがって肌が直接晒されるため、股間に直接空気が触れるような感覚だ。
「うーーん、やっぱ短いな・・・・」
前かがみになったら、中が見えそうなので思わず手をお尻に押さえつけた。
「ふふっ。けっこう気にいっているんじゃない? その格好」
「そ、そんなんじゃ、ありません!!」
ボクは顔を真っ赤にしながら、その場にしゃがみ込んでしまった。

一通り着替え終わって保健室にある大きな鏡の前に立ってみた。
「・・・これは・・・・」
その鏡に映ったのは紛れも無い女子高生だった。
短めのスカートから伸びる白い脚が艶かしい。白いソックスが脚を引き締めている感じだ。
上半身は紺のブレザーを着ているとはいえ、胸の膨らみは外見からもよくわかる。
セミロングの綺麗な髪、整った顔。胸についているアクセントのリボンが可愛いい。
「うーーん、良く似合てるじゃない。くやしいけど、私が学生の時よりも可愛いわね」
「そ、そうですか。あんまし、嬉しくないんだけど・・・」
ボクは頭を掻きながら、複雑な感情になっていた。
「徹くん、一応担任の先生にはもう早退したっていっておいたから、いつでも帰れるわ。それと・・・はい、鞄」
制服を取りに行く時についでに教室に寄ったのか、ボクの鞄を持ってきてくれた。
「あなたのお姉さんにも連絡しておくわ。それにしてもこれからが大変よね。いつでも相談に来なさい」
「美由さん、ありがとうございました。またお願します」
大変な時こそ身近な人がいるのは心強い。瞳にうっすらと涙を浮かべて、ボクは美由さんに礼を言うと保健室のドアに手をかけた。
「・・・・・あれ?」
急に立ち眩んだのか、少し足が縺れた。
美由さんは驚いた表情で近づくと、ボクの顔を覗きこんだ。
「んーーー、ちょっと顔色が悪いわねぇ。ちょうどベッドのシーツは変えたばかりだから少し横になった方がいいわ」
「・・・・そ、そうですか?・・・・そうします」
ボクは一瞬躊躇したが、今はこの身体だ。少し休んでから帰ることにした。


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