『くそっ!』
だいぶ翔のことを探し回ったが一向に見つからない。
コンビニ、デパート、ゲーセン等翔が行きそうなところは虱潰しに探したが翔はいなかった。
『いったいどこに行ったんだ…?』
よくよく考えてみればこのだだっ広い町で人1人見つけるというのはけっこう難しい。
翔のようにそんじょそこらにいないような美少女でも、たくさんの人達の中に紛れてしまえばちょっとやそっとじゃ分からない。
いかに人通りの少ない時間帯だといっても、1人紛れるには充分な人の多さだ。
『別に隠れてるわけじゃないと思うけど…』
とりあえず探すしかない。誰か他に頼れる人でもいれば別だけれど…頼れる人?
『そういえば…』
誰か頼れる人が…

「もし困ったことでもあったら、遠慮無く知らせてくれ」

…いた。
いたじゃないか!そうだ、すっかり忘れてた。こいつはグレィトですよ!
健さん、健さんがこの町に来てたんだった。
「いなくなった妹を一緒に捜してください」なんてあまり大したこととは言えないかも知れないが、俺にとっては大したことだ。
それに健さんはいい人だからきっと協力してくれる。
さっそく電話を…
『あ…』
携帯を取り出して気がついた。よく考えたら俺、健さんの携帯の番号知らないじゃんか…
ちょっとどういうことですか俺! なんでそんな大ポカを…
つうか健さんも健さんだ。あの時番号なりアドレスなりを教えてくれたらよかったのに…
…って人のせいにしてもしかたない。
『どうする? どうする俺!』
このままウダウダ考えてないでさっさと翔の探索を再開した方がいいな。
『いや、ちょっと待て…』
健さんの番号は知らないが、雪彦さんの番号なら確か…確か今年の春に会ったときに聞いてメモリにいれていたような…
急いで携帯で確認する。
『あった…』
ありましたよ、須々木雪彦。よかった…本当によかった。
たぶん、いや、まず間違いなく雪彦さんも健さんと一緒にこの町に来てるはずだ。
あの2人が別々に行動するなんてあまりあることじゃないからな。
…春会ったときは別々だったけど…
『なんて今考えても仕方ない』
雪彦さんが携帯を変えてないことを祈って電話をする。
“トオルルルルルルル”
『頼む。出てくれ!』
これで雪彦さんが出てくれなかった大人しく諦めて俺1人で探すしかない。
だけどあの雪彦さんなら…それに健さんと一緒なら尚更心強い。
『はい、もしもし?』
出たー!ありがとうございます神様。この世に神様ってのはいるみたいですね。
あ、一応寝子神も神様か…感謝しときますよ。
『もしもし雪彦さん?』
『そうですけど…?』
『俺です! 小山貴志です!』
『…ああ、貴志くんかい? 久しぶりだね。そう言えばこの前、美雪さんが電話したとか言ってたな〜。
まったく、その時僕にもかわってくれたらよかったのに』
『突然で悪いんですけど…健さんは?』
『ああ、今ちょっと席を外しててね。後1時間ほどしたら戻ってくると思うんだけど…』
1時間か…待ってもいいけど…いや、やっぱり駄目だ。
『あの雪彦さん…頼みがあるんですけど…』
『ん? なんだい?』
『実は人を探して欲しいんですよ。その、俺の妹なんですけど…』
正確に言えば元弟、現妹と言ったところなんだけど…まあ、今はそんなことはどうでもいい。
『…なにか事情がありそうだね? …分かった。かまわないよ。それで、特徴とかあったら教えてくれないかな?』
特徴か…可愛い。美人。…なんてことは特徴にはならないな…
え〜と、何か…
『え〜と、黒髪で肩までショート。あとうちの、東南高校の制服着てて、鞄とかは持ってません。
あと、その俺が言うのもなんですけど可愛いです。…すいません。思い当たる特徴はこれだけです』
『うん。充分だよ。制服は着ているけど鞄は持っていない、ね。じゃあ探してみるよ。もし見つけたら電話するから』
『ありがとうございます。本当にすいません』
『いやいや、かまわないよ。じゃあ』

よし、雪彦さんが協力してくれるのならすぐに、とは言わないけど見つかるはずだ。
何せ物探しのエキスパートだからな。あれだけの少ない情報でもきっと見つけ出してくれるはず。
『さて、俺もこんなことしてないで早く探さないと』
もう一度町に駆け出す。翔…早く見つかってくれ。なにか嫌な予感がするんだ。

“ドス”
『わたっ!?』
走り出したところで誰かにぶつかった。痛た…っと、相手の人は大丈夫か?
『あの、ごめんなさい。急いでて…』
目の前で転んでいる人に声をかける。どうやら小さな女の子にぶつかったみたいだ。
悪いことをしたな。大丈夫だろうか…ケガとかしてないかな…?
『いえ、別に…』
起きあがろうとする女の子。うん、どうやらパっと見てケガはないみたいだな…良かった。
『大丈夫かい?』
女の子に手を伸ばす。急いでいるとはいえ、こんな子を放って去っていくのは最低だからな。
『うん、大丈夫ですにゃ』
………にゃ?
『はい?』
起きあがった女の子をよく見ると…これは、なんていうか…その…
外見的には10歳くらいの純粋に可愛らしい女の子だ。うん、そうそういないくらいに可愛い。
あと5、6年ほどたったら美人になると思う。服装は花柄のワンピース。
そこまでなら何も問題はない。なにも、問題は、ない、のだが…
問題は…頭の上にネコミミがのっかっていることだ…それにお尻から尻尾が…
『あれ? あれれ?』
おかしいな? 俺は現実世界を生きているはずだよな?
確かにネコミミ少女なる生物が存在することは知識として知っていたが…
まさが自分の住むこの町でエンカウントすることになろうとは…はぐれメタルよりもレアだ。
いや、いやいやいやあり得ない、あり得ないぞ。もしかして新手のスタンド使いか…?
スタンド使いは皆特徴的な格好をしているからな…セッコとかメローネとか…
そう言えば岸辺露伴もけっこう特徴的な格好してるよな、髪型とか。味もみておこう。
…って混乱するな。混乱するな俺! 目の前の現実を直視しろ!
『あの…おにいさん?』
『あ、いや、何でもない。何でもないんだ。じゃ悪いけど俺急いでるからその…ぶつかってごめんな』
これ以上この子を直視すると俺の現実感が揺らいでしまいそうだ。悪いけど今はあまり時間もとってられないし…もう行こう。
『上村翔がどこにいるか知ってるにゃ』
なにィィィィィィ!!??
『なんでそのことを…いや、それ以前になんで翔の名前を』
この子いったい何者? もしかして本当にスタンド使いなのか? アトゥム神?
…ん? 待てよ…この話し方…どこかで……あ!
『君…もしかして寝子神?』
『に゛ゃ!?』
あ、尻尾がビーンと立った。やっぱり…
『寝子神だろ…』
『な、ななな、なんのことかにゃ? 私には全然さっぱり…』
コイツ、なにやってんだ…だいたい何でこんな姿で…いや、さすがに夢の時の姿じゃ他の人がビックリするとは思うけど。
でも今の姿でも充分…
しかし何で少女? 趣味? 趣味なのか?
『そ、そんなことより…翔の居場所を聞きたくないのかにゃ』
そうだった。そんなことより…
『知ってるのか!?』
『当然だにゃ。神様が知らないことはないにゃ』
えっへんと胸を張る女の子(仮)。
やっぱり寝子神じゃないか…まあ、今そんなツッコミしたらまた話がややこしくなるから止めておこう。
『それで、どこに?』
『この先の角を曲がって裏通りの方にいくにゃ。そこから右に角を曲がったところにある潰れたバーにいるはずにゃ。
あ奴に危険が迫っているにゃ。さっさと行ってやれにゃ』
危険が…迫ってる? 危険が迫ってるだって!?
『分かった。ありがとう寝子神!』
やっぱり予感は的中したか! 急がないと!
『だから寝子神じゃにゃいと言っておるに…』
俺は寝子神に礼を言うとすぐに走り出した。
なにが起こっているのか分からないが…間に合ってくれ!

『出来れば私が助けてやりたいところにゃのだが、そこまでするとルール違反なのにゃ。…願わくば2人が無事でありますよう』


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