コンコン
「朔ちゃん、入ってもいい?」
 夕方、鮮やかなオレンジが薄暗い紫に追われるように空から逃げ、夜を迎え入れる準備を始めるころ、私は朔ちゃんの部屋を訪ねた。
「入ってもいいかって聞くなら返事聞いてから入ってよ」
 窓から差し込むオレンジに照らされた横顔が綺麗で少しドキッとするが、悟られないように後ろに回り、
「何やってるの?」
と、聞きながら首に手を回す。
 元々小柄で華奢ではあったが、女の子になって一段と小さく感じる。
「勉強してるから邪魔しないで」
 教科書とノート、参考書とせわしなく視線を移動させ、こちらを少しも見ない。
「勉強なんて後でいいから遊ぼうよ〜」
 肩をガクガク揺らして抗議してみる。ここで退くわけにはいかないのだ。
「やだよ。テストだって近いんだ。俺は紅葉みたく優秀じゃないからギリギリなんだよ」
 朔羅から漂う気配は本当に追い込まれた雰囲気だが、それならそれでこちらも苛めたくなるというものだ。
「勉強なら後で教えてあげるからさ〜、ねっ?」
「ホントか?」
(おっ、もう食いついてきた。だけど…)
「でも…やっぱ邪魔しちゃ悪いから本でも読んで…」
「何して遊ぶんだ?」
 すばらしく早い変わり身で本を閉じ、こちらに振り返る。
「えっとね……実験でもしようかなって」
「実験ってなんの?」
 私の言葉の意味がわからないのか、小首をかしげている。
「そう、朔ちゃんが本当に女の子になったのか実験してみるの」
 そう言って、不意に抱きつきキス。そのまま体を入れ替えてベットに押し倒す。
「昨日のアレだけじゃわかんないじゃない?」
 昨日のアレを思い出したのか、顔を真っ赤にして目を伏せる朔羅。
「あ…あれはっ……違くて…その…」
 恥ずかしさのあまり押し倒されたという状況を忘れてしまったのか、抵抗のひとつもない。
「大丈夫、今日は私がしてあげるから。朔ちゃんは何もしなくていいよ」
 まだ赤面している朔羅を見つめ、シャツを捲り上げていく。
「いくら服がないからってTシャツハーフパンツは誘ってるとしか思えないわ。しかもノーブラだし」
 わざとらしく声を上げてみる。
「しょうがないだろっ!これしか入らなかったんだよ!」
 言葉に気をとられ過ぎである。油断してがら空きになっている双丘に手を這わせて、頂上の周りを弄ぶ。
「ふぁっ!……どこ触ってるんだよっ!」
 こうして見てみると、普通の気の強い女の子だ。
(この路線に調教していこうかな?)
などとくだらないことを考えて、でもいいかもしれないと思いなおす。
「そんなこと言って強がってても気持ちいいんでしょ?」
 言葉で責めつつ首筋や鎖骨に啄むようなキスをしたり、耳を甘噛みしてみる。
「馬鹿、くすぐったいって…」
 胸を遊んでいた手も、ツツーっとおなかの上を滑らせて、太ももを撫で回す。
「気持ちよくなってきた? 朔ちゃんは淫乱だからもう濡れ濡れなんでしょ?」
「違っ!…なんでそんな……俺は男なんだぞ!」
 手を戻して胸の頂上で膨らんでいる乳首を、力を込めて捻る。
「痛ッ!」
「今は女の子なんだから『俺』って言うのは禁止ね。今度いったらもっとひどいことするからね? わかったら返事!」
「わかった! わかったからやめてっ!」
 その言葉を聞いて捻りあげていた手を離す。朔羅の目には少し涙が光っていた。

 それから延々と体を弄り続けて、すでに1時間が経とうとしていた。
「もみじぃ〜…まだやるのぉ〜?」
 2度ほどイかされて体力を奪われた朔羅は、息も絶え絶えといった感じでなすがままにされている。
「まだまだ本番はこれからなんだけど……調子に乗って遊びすぎたかな?」
 そういって、一旦朔羅から離れて服を脱ぎだす。朔羅はぐったりと寝転びながらもその光景を眺めていた。
体は変わっても頭の中は急には変わらないって事だろうか。
「朔ちゃん、お姉ちゃんの裸見て興奮した?」
「ばっ! そんなんじゃ……」
 上気した顔も可愛くて、つい意地悪してしまう。これも朔羅の魅力だということにしておこう。
意図的に上だけを脱ぎ、下の状態をギリギリまで悟られないようにする。
さっきの言葉でそっぽを向いてはいるが、チラチラとこちらを見ている視線から隠すようにパンツを脱ぐ
「チラチラ見ちゃって…見たいなら見たいって言えばいいのに」
 脱ぎ終えて再びベットに乗り、朔羅に囁く。
「お姉ちゃんも気持ち良くしてくれるんでしょ?」
 手をとり片手を胸に、もう片方を股間に持っていく。
「ッ!?」
 股間にある、ありえないものに触れて驚きで言葉を失う朔羅。
「驚いた? 朔ちゃんには懐かしいものだよね?」
 紅葉の股間に反り立つ肉棒握らされ、それを凝視する朔羅とニヤニヤと眺める紅葉。
「なんで……これが……?」
「朔ちゃんが本当に女の子か調べるために着けたの。おっきいでしょ?」
 それが本来の目的ではないのだが、本当のことを言ってしまうとつまらないので、あえてふざけて隠す。
教えてもいいがそれでは素の反応が楽しめなくなってしまう。
「やっぱり奥まで調べないとわからないじゃない?」
 言いながら、すでに臨戦態勢にはいっている一物を握らせ、上下に動かす。
「扱い方はわかるでしょ? だったら私を気持ちよくさせてよ」
「そんな事いったって…」
 驚きと時間を空けたことで快感の波が引いてしまったのか、徐々に冷静になってきてしまったようだ。
「手が嫌なら口でしてもらおうかな」
 朔羅の上に覆いかぶさり、俗に言う69の体勢になる。男女の位置が逆だが。
「やりにくいかもしれないけどしっかり咥えてね」
「うぐっ……」
 秘裂に舌を這わせると、再び蜜が溢れてきた。
「こんなにすぐ濡れてくるなんてやっぱり淫乱なのね」
「ひがっ! ほれはっ!」
 淫乱だといわれたことを、必死に否定してる姿を見てさらに虐めたくなる。
「淫乱な朔ちゃんには舌じゃ満足できないよね?」
 体を移動し、足を開いて正上位の形で肉棒を秘裂に押し付ける。
「馬鹿ッ! そこはまずいって!俺は男なんだぞ!」
「俺って言っちゃったね?約束を破るような悪い子にはお仕置きしなきゃね」
 取り付く島も与えず、次々と捲し立てる。
「お仕置きだから一気にいくよ」
「ちょ…やっ……お願い…待って!」
 本気でやる気だと感じたのか、血の気の引いた顔をイヤイヤと左右に振って拒否の意思を示している。
「最初は痛いけど、痛くしないとお仕置きにならないから遠慮はしないわよ」
 すでに目に涙を溜め、未知なる恐怖に怯え、弱々しく震える体。
「ふふっ…朔ちゃんとっても可愛いよ」
 呟きとともにその体を沈めていく。
「やめ…っくう……あぅ…い…たいよぉ……」
「やっぱきっつぅ…」
 狭い肉壁を押し広げる感覚とともに、擬似ペニスへの強烈な刺激が襲い掛かってきた。
だがその締め付けからくる痛みも、もはや快楽として理性を攻撃する。
 もう計画なんてどうでもいい。今はこの体を蹂躙することしか考えることしかできなかった。
「これっ……すごい…朔ちゃんホントに淫乱なんだね…絡み付いてきて……」
「やぁ……もう…やめて……ほん…とに……いたいからぁ」
「だ〜め。まだまだ夜は始まったばかりなんだから」
 欲望に忠実にただ貪る。傷つける。そこには一匹の獣しかいない。
「朔ちゃんは私のものになったの……いい? 私の言うことは絶対よ」
「なぁっ……はっ…はぁん……ぁう…」
 紅葉の一方的な言葉も聞こえていないのか、答えはない。破瓜の苦痛か、溢れる快楽か、あるいはその両方かもしれない。
 男としてのアイデンティティーを粉砕され心まで『女の子』に侵されていく様を見ていると、
言いようもない征服感に酔いしれ、まだまだ足りない、もっともっとと本能が要求する。
「もうだめ……気持ちよすぎて…っくう……イっちゃうっ!」
 次々と欲望が湧き上がってくる。しかし、体のほうは限界が迫っていた。
「中にだすよ朔ちゃんっ!」
 脳髄が痺れ、答えを聞く余裕もない。ギリギリまで耐えていた紅葉は、自らの精を朔羅に注
ごうとペニスを一番奥まで突き刺し、思いや欲望を流し込んだ。
「あぅぁ……なんかきてるぅ…」
 他人事のように呟き、力なく横たわる朔羅。その朔羅に覆いかぶさるように紅葉も倒れる。
「まだまだよ。まだ朔ちゃんを感じたりないわ」

 それから三度交わり、精を放出したころにはすでに日付も変わりしばらくたっていた。股間に生えていたモノは消え去り、いつもと変わらぬ姿に戻っていた。
「疲れた…これはちょっと失敗だったかな……」
 思い出しただけでも恥ずかしい。まさかあれほど効果があるとは…。
「あの新薬はまだまだ改良の余地ありね」
 隣で眠る朔羅の表情は穏やかで微笑ましい。少しばかり罪悪感にさいなまれる。
「紅葉……」
 唐突に名前を呼ばれ驚き、寝言だとわかると安堵する。
 改めて思う。自分は本気で好きなのだと。嫌われたくないと。
(やっぱりおかしいよね、こんなのって)
 いくら考えても答えは出ない。結局のところ自分を信じるしかないのだ。
「さて、サクシヤちゃんのところに行ってきますか」
 起こさないようにゆっくりと部屋を出る。朔羅の寝顔を照らす朝日が、何となく羨ましい。紅葉は振り返り、そう思った。


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