「…で。その、観光地で売ってるヱロ昔話的な物語がこの状況にどう関係して来るんだよ!」
「察しの悪い子ねえ。パパとママの愛情が足りなかったか?」
「ママはお前だよ!」
「つまり、この」

ぽにゅん。

「あん☆…胸を揉むなよ!」
「『朝起きたら女の子になってました』的異変が、その話に起因してるのね」
「ありえない。ぶっちゃけ、ありえない」
「いやいや、実はこの陰陽師というのが、うちの家のご先祖様で」
「つまり先祖がヱロ心出したせいで、俺は呪われたのかよ!」
「呪われてなんかないわよバーカバーカ」
「自分の息子を馬鹿って言うなよ! しかも二度も!」
「今は娘だけどね。さっきの話には続きがあってね、よっぽど龍神の体が気に入ったのか、
そのまま七日七晩、ご先祖様は龍神とヤり続けたそうで」
「馬鹿丸出しじゃねえかよ!」
「そしたらそのうち龍神のほうもその気になって、『もっともっと』となつく始末。
表向きでは退治した事にして、そのまま内緒で家に連れて帰って嫁にしてしまったそうで。末永く幸せに暮らしたそうです」
「夫婦揃って底なしの馬鹿かよ!」
「まーお前が馬鹿なのもうなずけるわね。あん、ヱロ話してたから母者濡れてきちゃった♪」
「お前も十分馬鹿だよ!」
「で、龍神が変身した時の力が今でも血に残ってるらしくてね、うちの血筋はこんな風にときどき女性化するのが出てくる。めでたしめでたし」
「めでたくねえよ! 大体、この頭の上に生えた獣耳の説明になってねえじゃねえかよ!」
「ネコミミモードです♪」
「時事ネタかよ! てゆうか半端に遅えよ! 第一それ答えになってねえよ!」
「んもう、それくらい我慢しなさい」
「出来ねえよ! 音が変に聞こえて気持ち悪いんだよ!」
「ほらほら、母者とおそろい〜」

ぴこぴこ♪

「うわあ驚いた! って、お前もかよ!」
「カワイイでしょ?」
「てゆうか隠せるならやり方教えろよ! これじゃ外に出られねえじゃねえかよ!」
「『引っ込め』って念じてみ」
「…うーん、これで…。って、今度は尻尾とか羽根とか角まで生えてきたじゃねえかよ!」
「うん、そうなるからって言いたかった」
「舐めんなこのアマ!」
「短気だねえ。もとの自分の姿を思い浮かべてごらん」
「…あ、引っ込んだ。…って、男には戻ってないじゃねえかよ!」
「美人なんだからいいじゃない」
「そういう問題じゃねえだろ!」
「お前ね、その美貌とプロポーションを手に入れられるなら、世のご婦人方は全財産を手放すてなもんよ! 少しは人を思いやりなさい!」
「論点ずれてるだろ!」
「ああっ! ちゃんとこの場に二親揃ってれば、こんな子には育たなかったはずなのに…よよよよ」
「父者を殺すなよ! 今朝鱈腹メシ喰ってったあのおっさんは誰だよ!」
「嗚呼、今もこうして目をつぶれば、遠い空から」
「一駅先の勤め先が遠いのかよ! つーか戻る方法を教えろよ!」
「周期的に変化を繰り返すから心配するなと」
「それを最初から言えよ!」
「いや、単に焦らしたほうが面白いからっていうサディスティックな理由だけで」
「鬼かお前!」
「そっちの血も一応混じってるよ?」
「マジで答えんな!」
「親に向かってその物言い…恐ろしい! あんた鬼の子だよ!」
「手前がさっき言ったじゃねえかよ! 大体鬼の血ってなんだよ! 帰れ! 葉鍵板に帰れよう!」
「…お前も大概バカだね、我が子ながら。
──まあ龍神の血なんて混じってると、他の人外も集まってくるらしくてね、
せっかくだからってんでいろいろやりまくった成果がそのネコミミやら翼やら」
「うちの家系は代々馬鹿なのかよ!」
「その辺もヱロ話いっぱい残ってるわよ。聞く?」
「もういいよ!」
「昔話ならぬコカシ話」
「くだらねえよ!」
「お後がよろしいようで」
「終わってねえよ!」
「ちなみに集まりまくった果てに、この街に住んでる人間の半分以上は、妖怪とか土地神様の血統に繋がってるという結果に」
「ここは妖怪吹き溜まりかよ! ちうかいつ男に戻れんだよ!」
「いや個人差あるから。大体一ヶ月毎ぐらいかな?」
「長えよ! その間俺の仕事はどうするんだよ!」
「まーそのまま普通に生活続けたら?」
「出来ねえよ! いきなり女になりましたって言って誰が信用するんだよ!」
「じゃあやめれば?」
「サラッというなよ!」
「家継げばいいじゃない」
「何でこのご時世に陰陽師(確定申告での職業名:祈祷師)なんざやらなきゃいけないんだよ!」
「 だ か ら 、 普 通 に 生 活 で き な い か ら (一回目」
「ひろゆき煽りかよ懐かしいなオイ!」
「まーそれはさておき。仕事は辞める、家も継がないというのは問題じゃよおっきい兄者。
いくら家が金持ちだからつっても、いつまでも家事手伝い(ニート)してたら弟者妹者への悪い見本になるしぃ」
「急にまともな事言うなよ! じゃあどうすればいいんだよ!」
「つまり、お前が誰かの嫁になれば万事解決っ!」
「ふざけんな!」
「いやー一族的にはそうしてほしいようで。まだ血を混ぜたいらしく」
「まだ続ける気かよ!」
「嫌なら嫌で仕方ないけど。なんでお前、市役所から取材がくるほど弟妹がいるのか考えたことはない?」
「弟者達は予備だったのかよ!」
「いや単に気持ちいいから生でヤりまくってたらポコポコ産まれただけで」
「考えなしかよ! てゆうか話の流れにまったく関係ねえよ!」
「まあ女になってしまった以上、多分いっぱい求婚者が寄ってくるけどね。家旧家で金持ちだし」
「そこに繋がるのかよ!」
「特にお前も美人だし。私に似て」
「手前味噌かよ!」
「それでもこの母者は美人でしょう?」
「ああ綺麗だよ! 性格終わってるけどな!」
「父者も毎朝そう言ってくれるわよ」
「ここでノロケかよ!」
「夜もそう言って可愛がってくれるけどね。昨夜なんてもう、燃えて燃えて…」
「まだ弟妹増やす気かよ!」
「やあん、思い出しただけで母者濡れてきちゃった ? 」
「死ねよ!」
「いやー最初に父者に挿れられたときは痛くて痛くて死ぬかと思いました」
「息子の前で言う事かよ!」
「今は娘だけどね」
「もういいよ!」
「まー話戻すと、実際嫁でも婿でもいいんだけどね。
どのみちずっと周期的に性別変化する訳で、親としてもさっさとどっちの性別で生きてゆきたいのか、
結婚という形ではっきりしてくれれば、精神衛生上ありがたいわけで」
「お前の精神はそれ以上汚染できねえよ!」
「で、話戻すと、お前の結婚相手の話。正直どーなってんのよ。
適齢期の息子さんをもつ母者としてはもう心配で心配で。
特定の交際相手がいなければ、一族ご推奨の殿方との強制婚姻という衝撃の結末が」
「斜交いの沙百合と付き合ってるの知ってて言ってるだろ!」
「あー昔よくお医者さんゴッコして遊んでた」
「普通に幼馴染って言えよ!」
「そうそう、鞍馬さんところの。で、どーすんのよ」
「時間くれよ! 『彼氏が突然女になりました』なんて言っても信用されるかよ!」
「母者が代わりに伝えてやろうか?」
「やめて。マジやめて」
「まあ実はもう教えてあるんだけどね」
「よくやった! ふざけんな!!」
「真面目に付き合いはじめた頃に全部教えてやったんだけどね。知らぬは息子ばかりなり。あっはっは」
「笑い事じゃねえよ! てゆうか俺にも教えとけよ!」
「いやもう、単に焦らしたほうが面白いからって(ry」
「(ry じゃねえだろ! つーかあいつはそれでOKなのかよ!」
「大丈V。レズもいけるように長年かけて母さん仕込んできたぞフフリ」
「余計な事すんな!」
「実はもう、一族の重鎮連中からの要望も、お前と鞍馬さんところを縁組させるのは大賛成だとの事で確認済」
「段取りいいな! わかったよ! 俺らの意志関係無しで結婚すればいいんだろ! どうせならもう、家も継いでやるよ!」
「いやむしろ向こうは早いところおまいと所帯を持ちたいそうで」
「はじめからそう言えよ!」
「あと母者的には早く孫の顔見たいな ? 」
「あいつまだ学生じゃねえかよ!」
「いや、お前が孕めば良いわけで」
「女同士でどうやって作るんだよ!」
「女同士でも子供作る術なら家に伝わってるよ」
「本気ですげえよそれ!」
「まあ私が作ったんだけどね」
「お前かよ! そんなもん作るなよ!」
「だって母者、早く孫の顔見たくて…」
「真面目にいかがわしい家業だけこなしてろよ!」
「他にも色々面白い術作ったのよ。女のままでいる術とか」
「いらねえよ!」
「母者は使いっぱなしだけどね、それ」
「お前も男だったのかよっ!」
「25年も親子やってんだから気づきなさいよ!」
「お前が突っ込むなよ!」
「突っ込むものはいまお前にもないけどね!」
「うまいこといってんじゃねえよ!」
「ども、失礼しましたー♪」
「しつれしましたー♪」

ぱらっぱ らっぱらぱ らっぱらっぱ。ぺぷー。


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