小鳥のさえずりが遠くから聞こえていた。
 寝るときに開けっぱなしだったのか、窓から10月にしては暖かい風が吹き込んでいた。
 俺は少しづつ眠りから覚めていった。
 どうやら昨夜の悪夢のような風邪は寝てるうちに治ったようだ。
 体は気持ちの良いだるさがあるだけだった。
 (そうだ・・・、今日は華子さんが迎えにくるんだ・・・、早く起きなきゃ・・・、でも気持ちいいからもう少し寝てようかな・・・)
 俺はまったりした気分で寝返りをうった。
 パサッ
 なにかが俺の顔にかかったようだ。
 俺はボケーっとしながら顔にかかった何かを払おうとした。
 (ん?)
 どうやらそれは髪の毛のようだった。
 (あれ、俺の髪の毛ってこんなに長かったっけ・・?)
 俺は半分寝ながらも、その髪をよーく触ってみた。
 (あれ、なんかすごく長いぞ・・、肩ぐらいまであるな・・??)
 俺はその自分のものらしい髪をよく触ってみたが、長さが肩ぐらいまであるし、しかも細く長くやわらかい。
 そう、まるで女の髪のようだ。
 (・・・?)
 俺はゆっくり布団から上半身を起こすと大きく伸びをした。
 「ん〜〜〜〜〜」
 気持ちのよい朝だった、窓からは柔らかい朝日が部屋を包んでいた。
 パサッ
 ちょっと顔を前に傾けると、髪の毛が視界をふさいだ。
 なんでこんなに髪の毛が伸びたんだろうと思いながら、ふと体に違和感を感じ体を見てみた。
 「あれ・・・」
 俺はいつも寝るときに青の縞柄のパジャマを着ているのだが、そのパジャマの胸の所がかなりもり上がっている。
 なんだろうと思い掴んでみる。
 むにゅ。
 「うわっ」
 俺はビックリした。
 どうも胸がおもいっきり大きくなっているようだ。
 とゆうより、これは女の子のオッパイのような・・・
 俺は急いでパジャマのボタンをはずし、前をはだけてみた。
 「!?」
 俺はもう17歳、エッチの経験こそないが、かなりの数のエロ本やアダルトビデオを見てきた。
 そうゆうので見慣れた女性のオッパイを俺は今、上から見下ろしていた。
 そう俺の胸にオッパイがあるのだ・・・
 しかもかなり大きい・・・
 大きさはたぶん、Eカップの90cmはありそうだ・・・・
 ツンと上をむいたピンク色の乳首。
 片手で掴みきれないぐらいの巨乳だ。
 (???????)
 俺の頭はパニックになっていた。
 (なんで俺の胸にオッパイがあるんだ??)
 そして俺の頭に恐ろしい考えがよぎる。
 ま、まさかと思い俺は自分の股間に手を当てて見る。
 ない。
 俺はあわててパジャマのズボンとトランクスを脱ぎ捨てて、自分の股間を見ようと思い前かがみになるが、
前かがみになると長い髪が視界を邪魔し、でっかい胸が邪魔でよく見えない。
 俺はベッドに座り足を広げて自分の髪と胸をどけて股間をよく見てみた。
 (・・・・・・・)
 俺の息子があった場所には、逆三角の形で毛が生えていて、その下に縦に割れ目が見えた。
 そう、裏ビデオで数回しか見たことないが、間違いなく女性器だった。
 「なんで・・・」
 俺はボソッとつぶやいた。
 状況をよく確認しようと思い、俺は部屋のタンスまで歩いていく。
 歩くと胸がユサユサと揺れるのを感じた。
 俺はタンスの前に立ち、扉に手をかける。
 開ければタンスの扉の裏側が大きな鏡になっているので、全身が映るはずだ。
 俺は少し呼吸を整えてドキドキしながらも扉を一気に開ける!!
 「!!」
 鏡には裸の女の子が映っていた。
 黒く長い髪、強調するように突き出した大きな胸、白くしなやかな足と腕。
 結構生えていた脛毛も全部なくなっているようだ。
 俺は自分の顔をよく見ようと髪をかきわけてみる。
 すると鏡の中の女の子も髪をかきわけ、少し怯えたような顔で自分を見つめていた。
 顔は元の俺のままだった。
 元々小顔で大きな目をしていたのでこうやって長い髪をしてみると女の子にしか見えない。
 いや、俺は女の子になったんだ・・・
 ピンポーン。
 呼び鈴が鳴る。
 俺は思い出した、華子さんが迎えに来たんだ!!
 それにしても随分早い。
 俺は一瞬迷った、どうも俺の体は女の子になっているようだ。
 がしかし、あの華子さんが俺を迎えに来てくれている。
 迷う事などなかった。
 俺は電光石火の速さで着替えの制服を出す。
 まずトランクスを履く、しかしトランクスがあそこにはさまるような感じになったので少し降ろして履く。
 そしてズボンを履こうとするが、どうもお尻とももが太くなっているようでかなりきつい。
 苦労しながらズボンを履く。
 次にTシャツを頭から着ようとするが、胸の所でおもいっきりつっかえる。
 苦労しながらTシャツを着て、Yシャツに腕を通す。
 がしかしまた胸が邪魔でボタンがうまくしまらない。
 Yシャツのサイズよりも胸が大きすぎるのだ。
 俺はかなり苦労しながらボタンを一個一個はめてゆく。
 なんとかYシャツを着てブレザーを着た。
 うちの高校は男はブレザーにネクタイとゆう格好なのだ。
 俺は最後に赤いネクタイを手に取り髪を掻き分けながらなんとかネクタイをする。
 よし出来た。
 俺はおかしい所はないかと鏡に全身を写してみる。
 最悪だった・・・
 Yシャツとブレザーを押し上げる隠し切れない胸、大きなオシリにきつそうなズボン、
丸い全身のライン、白い肌、特に黒く長い肩までのセミロングの髪の毛。
 どうみても男装の女の子にしか見えない・・・
 どうしよう、これじゃ華子さんに会えない・・・
 俺はハサミを取り出すと長い髪にあてがう。
 (なんにしてもこの髪じゃ、体が女の子になったってバレバレだ、髪さえ前のように短くすればなんとかなるはず)
 俺はそう思い、とにかく長い髪を切ろうとして鏡をよく見てみる。
 がしかし・・・
 出来なかった。
 その髪は切るにはあまりにも綺麗だったからだ・・
 俺は髪を切るのをあきらめ、野球帽を手にした。
 髪をなんとか隠そうとして帽子につめこむ。
 なかなかうまくいかず苦労していると、またピンポーンと呼び鈴がなる。
 「くそっ」
 俺は机にあった輪ゴムを取ると適当に後ろで束ねて帽子の中に詰め込む。
 今度はうまくいったようだ。
 俺はもう一度鏡を見てみた、さっきよりも大分ましになった、前の俺に見えなくもない。
 「よし」
 俺は鞄で胸を隠すように持ち玄関へと走り玄関扉を開けた。
 するとそこには華子さんがいた。
 眩しそうに手を額に当てながら微笑むように朝日を見上げていた彼女は俺に気づきこっちを見る。
 長い髪が朝日をうけ輝いている。
「おはよ」彼女は俺に微笑んだ。
 「あ、おはようございます、あれ」
 なんと俺の口からかわいい声が出た。
 声まで女の子になっていたようだ・・・
(やばい、女になってるって気づかれたかな・・・)
 華子先輩は俺の足元から頭のてっぺんまでをジーッとみてから一言、
 「行きましょ」
 と言い、先に歩き出してしまった。
 「はい」
 俺は女声だとばれないようになるべく低い声で言う。
 華子先輩に追いつき横に並んで歩く。
 5cm背の高い華子先輩の横顔を見上げながら、その綺麗な顔にあらためてドキッとする。
 そして自分が今、華子先輩と一緒に登校している事をあらためて確認する。
 (はぁ〜、なんて幸せなんだろう)
 「昨日はちゃんと眠れたの?」
 華子先輩は微笑みながら聞いてくる。
 「は、はい」
 (昨夜は死に掛けましたなんて、言えないな)
 「素敵なお家ね」
 華子先輩は俺の家を振り返りながら言う。
 「いえいえ、そんなことは・・・」
 (くそ〜、もっとしゃべりたいのに低い声で言わなきゃならないから、あんまりしゃべれないぞ)
 華子先輩は学校や天気の事などを色々話してくれた。
 俺は女の身体になってるのをばれやしないかと冷汗ものだったが大丈夫のようだった。
 たわいもない話をしながら10分程たったころ。
「あ、そういえば、クスッ」
 華子先輩は何か思い出したのか、少し笑いながら俺の方を見てる。
 「?」
 俺は得意のボケーっとした顔で華子先輩を見る。
 「私まだ、あなたの名前聞いていなかったわ」
 「あ!!そういえばっ!!」
 思わず普通の声(つまり女の子声)を出してしまいあわてて口をおさえる。
 華子先輩はよほどツボに入ったのかしばらくクスクス笑っていた。
 「おかしいわね、名前も知らない人と一緒に登校してるなんて」
 華子先輩は笑いながら言う。
 「そうですね」
 俺も照れながら答える。
 「お名前、何て言うのかしら」
 「あ、えっと・・、俺の名前は・・・」
 正直言いたくない名前だが。
 「駄目名 のび夫です・・・」
 俺は先輩に笑われはしないかと、伏し目がちに顔を見上げる。
 「うふ、いい名前ね、えっと・・・・、それじゃあこれからはノンちゃんって呼ぶわね」
 そう言うと華子先輩はニコッと笑顔を向けてくれる。
 「は、はい・・」
 正直名前を言って、変な反応をされなかったのは人生で始めてだった。
 (俺の名前を笑わずに聞いてくれて、しかもいい名前って言ってくれた・・本当にいい娘なんだなぁ。
  それにしてもノンちゃんかぁ、恋人同士ってちゃんづけで呼び合うのかな・・
  でもよかったぞ、身体が女になってる事はばれてないようだし。
  こうやって帽子で髪を隠して、やたらでかい胸も鞄で前から押し付けて持ってるから、
  女の身体だって事はばれなさそうだな、あとは声に気をつけよう・・・)
 「身体もちゃんと女の子になってるみたいね」
 先輩は満面の笑顔で俺に言った。
 「え・・」
 俺はおもわず立ち止まった。
 俺が立ち止まった事に気づいた先輩は、俺の方を振り返りかわいく首をかしげて聞いてきた。
 「どうしたの? 急に立ち止まって?」
 俺の頭は大パニックだった。
 (身体が女だってばれてる?? じゃあなんで先輩は不思議がらないんだ??)
 「あ、ひょっとしてノンちゃん、身体が女の子になってる理由わかってないのかな?」
 俺は無意識にうなづいていた。
 「うふふ、それじゃあ朝ビックリしたでしょ?
  身体が女の子になってて。
  ノンちゃんの身体が女の子になってるって、私が知らないと思ってたんだ」
 俺はもう一度うなずく。
 「そっかぁ、昨日お薬飲んでもらったでしょ、あれはね飲むと身体が異性になってしまう薬なの。
  てっきりもう薬のせいだってわかってると思ってたわ」
 そう言うと、華子先輩は俺の近くまでくると顔を近づけ、ささやくように言った。
 「どうしてノンちゃんに女の子になってもらったかわかる・・?」
 俺は首を大きく横にふった。
 全然わかんなかった、既に俺の頭は真っ白になっていたし・・
 「あたしね・・、女の子しか好きになれないの・・
  ノンちゃんがどうしても私とお付き合いしたいって言うから、
  ノンちゃんに女の子になってもらったの」
 俺は10秒ほど先輩の綺麗な顔を見つめてから、やっと少しづつ理解した。
 (そうか・・、そうなんだ・・、だから男の誘いは全部断ってたのか・・・
  それで俺を女の身体にしたのか・・・)
 俺ははっきり言って、この状況を三日ほどゆっくり考えたい気分だった。
 しかし俺の気もしらないで先輩は楽しそうにしゃべり出した。
 「それで帽子かぶったり、胸を鞄で隠したり、低い声でしゃべったりしてたんだ。
  うふふ、かわいいなぁノンちゃんって。
  今のノンちゃんはどっからどう見ても女の子だよ。
  男子の制服着てるから、男の子に見えなくもないけど。ほら見て」
  そう言うと先輩は持ってた大きめのバッグを開けて中をみせてくれた。
  中にはうちの高校の女子の制服が入っていた。
 「私ね、ちゃんとノンちゃんの為に女の子の制服持ってきたんだよ。
  サイズもピッタリだと思うから、この先の公園のお手洗いで着替えさせてあげる。
  その為にちょっと早く来たんだよ」
 そう言うと先輩は俺の手をひっぱり楽しそうに歩き出した。
 俺にニコニコと笑顔を向けながら歩いている。
 頭では状況を理解したが、気持ちの上で全然理解できてない俺はただひっぱられるだけだった。
 先輩の細い手がなぜかすごく冷たく感じた。


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