「さて、何から話そうか・・・」
 テーブルの上には杉田が入れてくれたコーヒーがおいしそうな湯気を立てている。
僕は杉田家に着くなりリビングで杉田と今後のことについて話していた。
 「まずは昨日話した君の職場復帰の件だがどうやら決定したと連絡があった。君は4月から新入社員として元の部署に配属される」
 僕は一瞬自分の耳を疑ったが次の瞬間には嬉しさで僕の心はいっぱいになっていた。
しかし、なぜこんなにもすんなり決まったのだろう。すると杉田が僕の疑問を感じ取ったのかその答えを口にした。
 「実はうちの所長と向こうの社長がゴルフ仲間らしくてな。それにその社長さんが君の才能を高く買っていたそうでこの話を持ちかけたら一発でOKが出たそ うだ」
 自分がそんなに評価されていたとは・・・・がぜん仕事への意欲が涌いてきた。
 「ところでこの話は秘密でしたよね?」
 「ああ、今現在国内外共に反対意見が多い中、手術を強行したからもしばれたらそういった連中から袋叩きに逢うだろうな」
 「理恵にも話しちゃまずいですか?」
 杉田は少し考え首を立てに振った。
 「こういった話はどこから漏れるか判らないからな。一応、親しかった人達にも秘密にしておいてくれ。
それから話は変わるが、君のこれからの生活についてだがとりあえず2階の恵の部屋を使ってくれてかまわない。
服の類はそのまま使えるだろうがなにか必要なものはあるか?」
 「そうですね、『恵ちゃん』はたしか身体を保存する前・・・つまり事故前はたしか16歳でしたよね?
それじゃあスーツなんかや・・・それと車なんかは当然持ってませんよね?」
 「そうだな・・・それも必要になってくるな。
車といえば免許も持ってないから免許も取らないといけないな・・・わかった。
とりあえず免許については上に打診しておく。その他の買える物は明日買い揃えよう。明日は久々の休暇だから付き合うぞ」
 なぜか買い物の話になると話し始めた頃の重い雰囲気とは打って変わって楽しそうに話す杉田を見て僕は思った。
『この親ばかめ』と。
 「それじゃあ、今日はもう遅い風呂に入って寝るとしよう。・・・先に入るか?」
 「いや、荷物を片付けてから入るから先に入っていいですよ」
 そう言うと僕は数少ない『鈴木恵一』自身の荷物を手に2階の『杉田 恵』の部屋へ向かった。

 部屋に入るとそこは男である僕にとってまさに異世界だった。
もちろん妻であった理恵の部屋には遊びにいったこともあるがやはり女性の部屋特有の空気が僕には感じられた。
 部屋に入り辺りを見渡す。部屋はアイボリー調でまとめられかわいらしさの中にもセンスのよさが感じられた。
ベッドに腰をおろし一息ついた。が、やはりなれない部屋のせいか落ち着かない。
 「荷物でも片付けるか」
 部屋には誰もいないが僕はそう言うと荷物の整理を始める。とはいったものの片付けるべき荷物もほとんど持っていなかった。
 杉田の話では『鈴木恵一』は死亡したことになっていて部屋の荷物もすでに親戚達の手で片付けられてしまったということだ。
つまり僕の荷物はあの時のバッグひとつだけである。僕は空いている棚を見つけそれをしまった。
 「おーい、風呂空いたぞ」
 1階から杉田の声がする。さて、今日はもう風呂に入って寝よう。僕はそう思い、クローゼットから着替えを探した。
当然其処にあるのは今まで見慣れたトランクスではなく、かわいらしいブラとショーツ、そしていかにも少女らしい淡いピンクのパジャマだった。
かろうじてバッグに入っていた恵一だった頃の服では大きすぎて今の自分では着れないだろう。
ましてや裸でいるわけにもいかない、僕はパジャマとショーツを手にとり浴室に向かった。
  
 ざぁぁぁ・・・・
 湯船につかるとお湯が溢れ出した。その音とともに疲れも抜けていくようだった。
 昨日今日と、色々な事がありすぎた。目覚めたら女になっていて、なし崩しにその父親と同居。
しかも、あの事故からもう1ヶ月も経ってしまっている・・・普通に考えればありえない事の連続だった。
それに、これからの事への不安もある。元の仕事に復帰できる、だが、理恵や先輩にどう接したら良いのだろう。
2人とも勘が良いほうだからうかつな行動はとれない。
「まあ、どうにかなるか・・・」
 深く考えるのを止め、湯船から上がり体を洗うことにした。
 浴室の洗い場には当然ながら鏡が付いている。実は目覚めてからまだ一度も鏡を見ていない。
鏡の中の自分の姿を見て自分がもう『鈴木恵一』ではないことを実感するのが怖かったのだ。
だがその一方で今の自分がどうなっているのか知りたがっている自分もいた。
もちろん写真では見ているのだが今ひとつ実感がわかなかった。だが鏡ならば嫌でも現実を叩きつけられる。
僕は悩んだ。が、結局好奇心という名の小悪魔が僕に微笑みかけた。
 1・2・3で目を開けると鏡の中にはまだあどけなさが残る少女がいた。
肩まで伸びた艶やかな黒髪、ブラウンの大きな瞳、それはまさに“美”少女のそれだった。身体にも触ってみる。
身体全体がやわらかさを持った女性特有の物になっている。目を下ろすと二つのふくらみが『女性』を主張していた。
小振りだが形のよいそのふくらみにそっと触れてみる。
 「あっ・・・・ふぁ・・すごい、こんなに敏感なんだ。じゃあ・・・ここは」
 ふくらみの先端を指先が捏ね回す。
 「くぁ・・・ふっ・・・・あああ・・・はぁはぁはぁ・・・女ってすごい」
 男のときとは違う、身体の奥から溢れ出る快楽は僕の理性の鍵をこじ開け、いつしか両手は自分の意思を離れより強い快楽を求めより貪欲に蠢いた。
 「くぅ・・・ふぅ・・・はぁぁぁぁ・・・・・・・」
 口までも自分の意思を離れ甘い旋律を奏でる。
『こんな事をしていては後戻りできなくなる』
 僅かに残った理性がそう訴える。だが身体の奥底から溢れ出す欲求には勝てるはずもなかった。
 片手は依然として乳房をこねくりまわしていたがもう一方は更なる快楽を求め行動を開始した。
胸から腹部を伝い、遂に薄く恥毛が茂るクレバスへと到達した。
そこは胸への愛撫のせいだろうかお湯とも汗とも違う粘液で濡れそぼっていた。
 「はぅ・・あっ・あふぁ・・・くふぅ・・あああああああ」
 秘部への愛撫は胸へのそれよりも更に鮮烈だった。その衝撃は電気のように僕を襲い、波のように飲み込んでいった。
 「いやぁ・・・何? 何?・・・あっあああっあああああ・・・何? この感覚は・・ああああああ」
 堰を切ったようにそれまでとは比べ物にならない快楽の波が押し寄せる。
 「はぁはぁはぁ・・・力が・・・入らない・・・・」
 これが女のオルガと気づいた時、僕は浴室にへたり込み動くことができなくなっていた。
 「おーい大丈夫か?のぼせてないか?」
 ふいに壁のインターホンから杉田の声が聞こえた。我に帰った僕は何とか起き上がり杉田に大丈夫だと告げた。
 「はぁ・・・何やってんだよ」
 我に帰った僕は激しい自己嫌悪に襲われた。身体に力が戻るのを待ち、風呂を済ませ今日はもう寝ることにした。


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