小峰達也は混乱していた。突然現れた奴が自分を殴り、ゾっとする笑顔で淡々と、感情のハッキリ分からない声で自分に話しかけてくる。
その状況が達也は訳が分からず動けなかった。
「なぁ、その楽しそうな場所俺にも教えてくれよ」
 ゾッとするような笑顔を、ちっとも笑ってると思えない笑顔を貼り付け殴ってくる。
怖い。顔に拳がめり込んでくる。拳と奥歯に頬の肉が挟まれ裂ける。
痛い。腹を殴られる。内臓がうねり昼に食べた物が逆流してくる。
痛い。脇腹を蹴られる。あばら骨が軋む嫌な音が身体の中から聞こえてくる。
痛い。痛い。痛い痛い痛い痛い痛い・・・!
「や、やめへくれ! いう! いうからもうやめへくれぇ!!」
 気が付けば達也は泣き叫んでいた。目の前の相手がただ怖く、このまま自分は殺されると本気で思った。
「さっさと言えよ。殺すぞ」
「ぶぎゃっ!」
 達也の鼻に京介の容赦のない拳が叩き込まれ鮮血が吹き出す。京介の右手の傷が開き、達也の流した血と混ざり、その手に巻かれた包帯を真っ赤に染め上げ る。
「ほら、どうした。言えよおい」
「まちふぁずれのは、はいビルのさ・・・さんかいに・・・げほっ、もうゆるしへくれぇ」
「ふんっ」
「ぎぎゃっ・・・が・・・」
 京介はそれだけ聞くと達也の頭を便器に叩き付けた。ガチンッと鈍い音が鳴り便器が少し砕けた。
その脇に達也が自分の血で濡れた床にずるずると倒れ込み気を失った。
「クソ野郎が」
 ペッと唾を気絶した達也に吐き掛けると、京介はそのまま目もくれずにゲームセンターを後にした。

  ◇◆◇

「おら、立てよ」
「ぁ・・・」
 夢すら見ない暗い闇から強制的に覚醒させられ輝は小さく声を漏らす。
眠っている間に増えたのか、自分の腕を掴んでいる少年を含め4人分の目が、自分の身体を欲情した視線を絡みつかせている。
これから繰り返される苦痛と絶望に輝の心は再び闇で包まれていく。
「足開けよおら。へへっ、いいもん持ってきてやったぜ」
「・・・・・・っ」
 無理やり開かれ晒された輝の秘唇に冷たいネバネバとした液体が掛けられ、その感覚にビクッと身体が跳ねる。
「お、ローションなんておもしれーもん持ってんじゃん。俺にも貸せって」
 一人がローションを自分の勃起したペニスに塗りたると輝の後ろに回り込む。
「二本挿しだぜ。きひひ」
「お、いいね。お前らは口と手使えよ」
「俺らパス。散々犯ったから休憩だ」
「へっ、そうか−よっ!」
「くぁ・・・ん・・・・・・ぁ」
 前後からずぶずぶと進入してくる硬い肉の感触。その慣れる事のできぬ不快感と苦痛に、それでも輝は小さな声しか漏さない。
「うほっ、すっげぇ締め付け」
「おまっ、あんま動くな・・・出ちまうだろが」
 下卑た笑い声を上げながら自分を突き上げる少年達を、輝は光を失った瞳で見ていた。
「んだよ、タバコ切れちまった。ちょっと買ってくる」
「ん、おお」
 そんな輝達と見ていた少年の一人が空のタバコを投げ捨てると、部屋から出ていった。
「なんか反応が少なくて気味悪りぃな。壊れちまったか?」
 そんなことを呟きながら階段を下りていくと、見たことのない少年が一人こちらに向かって階段を上がってきた。
「なんだ? お前も呼ばれたのか? 今ちょうどお楽しみちゅ−」
 彼はそこまでしか喋る事ができなかった。目の前まで迫っていた少年の手の平が彼の頭をワシ掴むと思い切り壁へ叩きつけていた。

 京介の中でドス黒い感情が渦を巻き暴れ回っていた。途中で会った間抜けな馬鹿は怒りのままに壁に叩きつけ気絶させた。
トイレに居た奴もあの間抜けな馬鹿も死んでたって知った事じゃない。京介は無言のまま階段の上り続ける。
以前より感じていた怒りと胸の中をうねるザワツキ、今感じている自分でも制御できない凶暴な怒り。その全ての理由が分からなかった。
だが、今はそれについて考えている余裕はない。ただ、ただひたすらに全てを破壊してしまいたい衝動に京介は囚われていた。
 3階。何かの事務所だったらしい部屋のドアのノブに手を掛ける。その手にギチギチと力がこもりドアノブを締め付ける。
そして京介はドアノブを回しゆっくりと、開いた。

「ぁ・・・んん・・・」
 最初に目に飛び込んできた光景。それは京介の辛うじて保っていた理性を吹き飛ばすのに十分だった。
鼻をつく精液の匂いと床に飛び散っているおびただしい量の白濁液。
何人に犯されたのか見るも無残にボロボロにな、り虚ろな瞳で今もなお二人の少年に犯されている輝。
 その光景に京介は絶叫を上げそうになったが、喉は凍りつきその顔はすさまじいまでの壮絶な怒りに歪んでいく。
その怒りのままに、京介は自分に近づいて来ていた一人の少年に殴りかかっていった。
「ぐがっ! てめっ、なにしやがる!!」
「な、なんだ!?」
 突然の闖入者に殴り飛ばされた少年は自分を殴った京介に怒りの声を上げ襲い掛かる。
輝を犯していた少年達も突然の事態に一瞬硬直するが、慌てて輝を放り出し殴られた少年に加勢するために駆ける。
「うあああぁぁぁああぁぁああ!!」
「くそっ! なんだこのイカれた野郎は!? ぎゃっ!」
「てめぇ!」
 叫びながら目の前の少年を渾身の力で何度となく殴りつける。傷付いた右手が悲鳴を上げ激痛を京介に伝えてくるがそれを無視し右手を突き出す。
が、横から加勢に来た一人に体当たりされ縺れ合いながら床を転がった。
「きょ・・・・・・すけ・・・くん?」
 突然現れ少年達に殴りかかった京介を見て、輝は不思議そうに呟く。
(なんで・・・だって・・・ありえないよ。京介君がなんで・・・)
「クソがクソがクソがクソがクソがあああぁぁぁぁぁ!!!」
「がっ・・・」
 体当たりしてきた少年の頭に自らの頭をぶつける。二人の額が割れ血が飛び散る。
それすらも構わずに京介は立ち上がると自分に向かってくる二人に向かい殴りかかっていった。
(なんで・・・・・・)
 その光景を、輝はただ呆然と見ていた。

「はっ・・・はっ・・・ぺっ、クソが」
 荒い息をつき口に溜まる血を吐き出す。血で汚れた床に3人の少年が倒れ、苦しそうに呻いている。
それを無視しボロボロになった京介が輝に近づいていく。
「輝、お前こんなやつら相手になにやってやがった・・・」
 切れた口の中を庇うように京介は口を開き輝の前にドスッと座り込む。
「いってぇ・・・くそが。おい、輝!」
「・・・・・・きょう・・・すけくん・・・」
 自分の前に居る京介を見て輝の瞳に徐々に光が戻ってくる。
「きょうすけくん・・・京介君京介君京介君っ!」
 そして大粒の涙をぼろぼろとこぼすと輝は京介の名を叫びながら抱き付いていた。
「ぐあっ! いってぇこのバカ!」
「うああぁぁぁぁぁぁ!」
 打撲だらけの身体に走る激痛に京介は悲鳴を上げ、輝は京介の胸で泣き続けた。そんな輝を京介は苦笑しながら、どこか安心した表情で見ていた。
「他の奴が来ないうちにここから逃げるぞ」
「う、うん」
 しばらくして京介はしゃくり上げる輝を引き剥がすと億劫そうに立ち上がり輝の服を探す。
上着はボタンが千切れてしまっていたが、ズボンと一緒に部屋の隅に丸めて捨てられていた。服を投げ渡された輝はそれをのろのろと着込んでいく。
「急げのろまっ!」
「ご、ごめん。身体に力がはいらなくて・・・」
 輝は申し訳なさそうに顔を伏せるとサラシがなくなった胸を押さえながら残ったボタンを留めていく。
それを横目で見ながら京介はデスクの上にデジカメが置かれているのを見つけた。
操作して中身を見るとその中には輝を犯す何人もの少年達の画像が記録されていた。京
介は不快そうに顔を歪めるとそのデジカメを床に叩きつけ蹴飛ばした。蹴飛ばされ壁にぶつかったデジカメはバラバラに砕け散った。
その中からメモリースティックを探し出すと京介はそれも踏み潰し砕いた。
「どうした。さっさと立て」
「えっと・・・その・・・立てなく・・・なっちゃって・・・」
 長時間責め続けられた輝は心こそ京介のおかげで持ち直したが、身体はとっくに限界を超えていた。
「くそが、手間かけさせやがってバカが・・・」
「え?・・・わっ!」
 京介はガリガリと頭をかくと輝を抱き上げ背中におぶる。その意外すぎる京介の行動に輝は戸惑う。
「え・・・きょうすけ・・・くん?」
「がぁ、重てぇなクソが。いてぇ・・・」
 不機嫌そうにそう呟くと京介は廃ビルを後にした。

 夕暮れの住宅街。京介は人通りの多い道を避け真っ直ぐに輝の家へと向かっていた。
額から血が流れボロボロになった学生服で同じくボロボロの少女をおぶった京介の姿に、すれ違う人間達がジロジロと無遠慮な視線を向ける。
それを無視し京介は無言で足を進めた。そんな京介に輝がおずおずと声を掛ける。
「京介君・・・なんで、その・・・助けてくれたの?」
「ふんっ、お前は俺の玩具だ。他の奴が好き勝手するのが我慢ならなかっただけだ。つまんねーこと聞くな」
「・・・・・・うん」
 輝はその背中に顔を隠し嬉しそうに微笑む。その様子を感じ取ったのか輝は『ふんっ』と鼻を鳴らした。

「輝っ!」
 京介達が輝の家に着くなり輝の父親と母親が飛び出してくる。そして二人のその姿をみると絶句する。
「お前・・・その姿はいったい」
「輝・・・よね? 京介君もなんでそんなひどい怪我を・・・」
「父さん、母さん、これは・・・その・・・」
 二人の姿にうろたえ狼狽する両親を前に輝は必死に言い訳を考える。
その中、京介が静かに口を開いた。
「おじさん、おばさん、お話があります」

 あれから3日、輝は病院に入れられ検査を受けていた。暴行された身体は傷だらけだったが、幸いにも感染症や妊娠の危険はないとの事だった。
女性になってしまった原因も調べられたが、詳しいことはわからず医者達も首を傾げていた。3日間、輝は休まるときがなかった。
繰り返される検査の合間に何度となく訪れる警察への事情聴取、露骨なまでの心配と自身の立場への保身のために訪れる校長や担任の教師、
そして同じクラスに居ながら輝が女になってしまった事に気付かなかった興味心むき出しのクラスメイト達。
安息の時の就寝の闇の中輝は深くため息をつく。
 京介は輝の両親に全てを話した。それから警察が呼ばれ京介は重要参考人として警察に連れていかれた。
ゲームセンターのトイレで気絶していた小峰達也もレイプ事件の首謀者として保護されたらしい。
他校の生徒まで加わったレイプ事件はニュースに大きく取り上げられ、輝の学校はしばらくの間休校となった。
 輝は病室の薄暗い天井を眺めながら京介の事を考える。何故京介は全てを話してしまったのか。
京介は輝に繰り返していたいじめのことまで全てを輝の両親に話してしまった。輝の両親は怒り、京介をののしった。
そして輝の身体が現代の医学では完全に元に戻せないとしるとひどく落胆し、そして今の輝を受け入れた。
 全ては終わった。だが輝の心は晴れず、もやもやとした不安と京介への思いが取り留めなく浮かんでは消えていった。

 レイプ事件の休校が終わり輝が学校に戻ると、京介は退学になり学校だけでなく街からも居なくなっていた。


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