「もっと気持ちよくって、どうするの? こう?」
割れ目の浅いところを雪の指が走る。
「あっ……! そうじゃなくて……」
「じゃあ、どうするの?」
聞かれて、言葉に詰まった。
その先の言葉は卑猥で、知っていても口にするなんてことは今まで一度もない。迷う。そのおかげか、理性が少しだけ戻ってきた。
でも、その理性もすぐになくなってしまうほどに弱い。なぜなら、いまのぼくのほとんどは続きを望んでいるのだから。決定事項といっていい。
「…………」
続きがしたいなら、言わないといけない。
はっきりと、どうするのか。
そうしないと雪には通じないだろう。けど、今の今まで避けてきた直截的な名前を言うのには、抵抗がある。
抵抗はある。それでも────したい。
一度強く唇を引き結んで、開く。湿気はたくさんあるはずなのに、開いた唇と口の中はカラカラに乾いていた。
「……雪のオチンチンをぼくのココに挿れるの」
「陽姉ちゃんのどこって?」
「さっき触ってたところ。割れ目があったでしょ? そこ」視線でアソコを示す。
一度口にしてしまえばあとは簡単だった。よどむことなく口は動いた。
「ここ?」
雪の指は一発でそこを探し当てていた。無言でうなずくと、確認するように指の先が割れ目の中に入り込んだ。
「ああっ! 指じゃ、なくて……」
そう、欲しいのは指じゃない。指よりももっと気持ちのいいものだ。
固いものが今まで指のあった場所に押し当てられる。
そのままずぶずぶと中にそれが……!
「あ……ぁあああぁぁ……! ゆきのが、入ってく……っ!」
熱いお湯よりもまだ熱いモノが入ってきて。待ち侘びたそれを、愛液に濡れたアソコは何の抵抗もなく、歓喜をもって迎え入れていた。
「陽…ねえちゃん……ぜんぶ、はいったよ」
「ん……じゃあ、動いて」
「う、うん……」
動き出す。ゆっくりと、ぎこちなく。
「あ……ぁ……」
「陽姉ちゃんのなか、熱くて、すごくきもちいい……」
雪は苦しそうな気持ちよさそうな、ふたつの感情が入り混じったような表情で腰を動かし続ける。
どうやれば自分が気持ちよくなれるか試しているかのようなデタラメな動きで。
「あっ、そこ……、かき回されて……!」
予測のできない動きは、ぼくにもデタラメな刺激を与える。安定した快感はないけど、たまに不意をつくタイミングで『当たり』があった。
そのたびに声を上げてしまう。
でも、それだけでは物足りない──
ぼくは自然と自分の胸に右手を伸ばしていた。
「あ……ふっ……」
柔らかな弾力を愉しむように自分で自分の胸を揉む。痺れるような快感が広がるたびに、この胸が本当に自分のものだと自覚する。
と同時に、触ったこともなかった女の人の胸にどきどきしていた。
(自分のなのに……)
女として胸で感じようとする一方で、男して胸の感触を楽しんでいる。背反するふたつの意識が、興奮と快楽を高めてゆく。
「雪、もっと、いっぱい、動いて…!」
でも、動くだけではまだ足りない。自分でも気持ちいいところに雪のが当たるように腰をくねらせる。
「きもちよすぎて、なんか、頭がぼーっとするよぅ…」
言いながら、雪の腰の動きは止まらなかった。頭で考えなくても身体が快感を得ようとしているのだろう。ぼくと同じように。
でもペースは格段に落ちていた。ただでさえ水中では動くのに相当の労力がいる。しかも慣れないことをやっているのだ。
受け入れるだけのぼくと違って疲れるのも当然だった。
もはやぼくの両肩を掴んでいた手からは力が抜けかけ、ぼくに体重のほとんどを預けかけるまでになっている。
「はぁはぁ……んく……。いいよ、ゆきぃ、そのまま……」
「陽ねえちゃん、はぁっ、はぁっ、ようねえちゃぁん…!」
苦しそうに雪が呻く。限界が近いようだ。肉体的にも性的にも。
ぼくも絶頂へ行き着こうと、右手で硬くなっていた胸の先端を親指と人差し指でこねていた。一方で、右手で何もしてなかった左手を湯に沈める。
「──ひゃあっ! これっ、すごっ…!」
ぼくの口からひときわ高い声が出た。上からも下からも快感があふれ出て、身体中を満たす。
先端もクリトリスも軽く触れただけで、信じられないくらいの衝撃だった。目や頭の中で火花がはじける。
少しだけでこの刺激。もし強く触ったら……。
ごくりと喉が鳴った。怖さからではなく、期待から。
またひとつ喉が鳴る。触りたいという衝動を抑えきれず、さっきよりも強めに2箇所を同時に刺激する。
「ふあぁぁぁぁぁ……っ!」
また火花が散った。前の倍とはいかないまでも、それに近い規模の。その衝撃でアソコが収縮し、雪のモノを締め付ける。
「ぼくもうだめ、おしっこ出ちゃう……!」
雪が出そうとしているのはおしっこなんかではないことはわかっていた。けど、止めようとは思わなかった。
出すのを止めて気持ちよくなれるかといえば、そうなるとは限らない。
それに年齢的に出せないかもしれない。その『かもしれない』はとても甘美な響きだった。判断材料の決め手としてしまうくらいに。
だったら最後まで……!
「うんっ、ゆき、ぼくの中で出して……っ!」
両手に力を込め、先端とクリトリスをこれまで以上に強く刺激する。瞬間、世界すべてが真っ白になり、何かがぼくの中で爆発した。
「ようねえちゃああああぁぁん!!」
「ぼくも、くるっ……! はああぁぁぁぁぁぁああぁ!!」
絶叫と一緒にぼくと雪は絶頂を迎えていた。
『はぁ…はぁ…はぁ……』
二人分の荒い息が浴室の中に響く。ぼくも雪もぐったりとしてその場を動けない。まだ繋がったままだ。
ぼくの下半身にはじんわりと熱い感触が広がっていた。量的にも質的にも、おしっこでないことがわかる。
けど、そんなことは気にならなかった。
中に出されたこと以上に気持ちよくて、気が回らない。
雪にのしかかられた格好で快感の余韻に浸る。
「よう、ねえちゃん……だいすき」
これまでのように意識は飛んでないものの、薄い。そのせいか、雪の言葉の意味を理解できない。理解できないまま、身体は勝手に雪を抱きしめていた。
雪の細い身体の感触を感じていると、なんだか心が安らいだ。そうなる心の働きも意味もわからない。
考えることもできそうになかったので、
もう少しこのままでいることにした。