普段ならくすぐったいで済む話だ。でも、このシチュエーションはいつもとは違うふうに受け取ってしまう。
雪はそんなことを気にしていないのだろうけど、ぼくからすると、女が男に胸を揉まれるというのは……『そういうこと』の一部になる。
行為自体はぼくの意思ではないにしろ、それに流されるのがこれまでのパターンだ。
(やめさせないと……!)
それにこんなことは実の兄弟でやることではない。義理ならまだしも…………いや、それもまずいか。
やめさせるべく一心不乱に胸へ攻撃を加える雪に『口撃』を試みる。
「いい加減やめないと……怒るよ?」
最初にして最後の通牒を告げる。自分のできる範囲で低く静かに威圧する感じで言えたはずだ。
「そんなこと言ったって、ぜんぜんこわくないよ」
マル暴の人たちのような凄みがぼくにあるとは思っていない。その100分の1でもあってぼくが怒っていることが伝わればよかったのだ。
顔も『怒っている』ようにしたと思っていたけど、雪はまったく動じていない。むしろいまので侮っている様子さえあった。
試しに壁に備え付けてある鏡に向かってさっきやったのと同じ顔をしてみる。
「…………」
実際やってみてわかった。この顔で誰かをひるませることなんてできない。
鏡に映った顔はとても怒っているものではなかった。
拗ねている──そんな表現がぴったりあてはまる。こんな顔で怒られたところで痛くもかゆくもないどころか、和んでしまいそうだ。
言葉と威圧でダメなら、あとは実力行使しかない。やるべきことはシンプルで簡単だ。
力任せに起き上がるのができないなら、上にいる雪をずらすかしてどかせばいい。
胸に掴みかかる手をガードしていた両手を伸ばし、雪の両肩を掴む。そのまま押し出すように力を込めて────
(びくともしない……!?)
何も変わらなかった。無理な体勢で力がうまいこと腕から先に伝わらない。
体重を使えばこんなことにはならないだろうけど、使えるよう体勢を変えるには湯船は狭すぎた。
残るは、足。
いま雪は合わせたぼくの膝の上に半分乗っている状態だ。バランスは不安定。
それを手で押しやることはできなかったけど、足ならできる。なぜなら足は腕の3倍の力が出せる──と何かの本に書いてあった。
足のどこか見えないところには赤いツノがあるのだろうかと考えていると、ぐらっと頭の中が少し揺れた。
ふわふわと浮遊しているように感覚が定まらくなっている。のぼせたのか感じているのか、どちらにしても時間はないようだ。
膝を曲げ、力を溜める。いくら女の力でも思い切りやれば動かせるはずだ。そう信じて実行に移す。
「せーの……っ!」
いまだに胸に夢中な雪を湯船の上に跳ね上げる──イメージ的にはそんな力を出した。
「うわっ!」と雪が驚きの声を上げて、確かに積載物が持ち上がる。水の浮力万歳。
しかし。
結果を見てみれば、ぼくの思惑通りにはならなかった。
力の入れ具合が悪かったのか、ぼくの両足の間に雪の身体が完全に入り込んでしまっている。明らかな状況悪化。
湯船の横幅は短い。そこに雪の身体、ぼくの両足で完全にふさがって、もう足を閉じることどころか動かすこともできなかった。
期せずしてなった『受け入れる』体勢に、お湯にあてられている以上に顔が熱くなる。
「ねえ、陽姉ちゃん。どうして女の子にはオチンチンがついてないの? ほら、陽姉ちゃんにもついてないし」
雪がのぞきこむようにしてぼくの下半身を見ていた。
「────!」
足を閉じようにも閉じられない、手で隠そうにも雪の身体が邪魔で隠せない。
しかもお湯は入浴剤を入れてないので無色透明。水面が揺れているぶんはっきりとは見えな──いや、湯船の底まではっきり見通せる。
どうして白骨温泉の素を入れなかったのだろうか。
さっきよりも顔の温度が上がる。湯気よりも熱くなっているのは間違いなかった。
「ねえ、なんで?」
恥ずかしさに内心悶えているぼくに、雪はマイペースに「ねえねえ」と聞いてくる。
ぼくはそれどころではない。さっきまでは応える余裕はあった。けど、いまはそんなものはどこにもない。
何とかさっきよりも悪くなった状況を打破打開しようと頭を巡らせる。
「教えてくれなきゃ、じぶんで調べるからいいよ!」
(調べる?)
するりと雪の右手が湯の中に潜った。その指が向かう先は──
「そこは触──!」
すべてを言い終わる前に、何をするか気づいて手を伸ばしガードする前に、雪の指はアソコに到達していた。
「うわー、ほんとにないんだ……」
触られたときの衝撃に、止めに入ったはずの手が止まる。
邪魔がないのをいいことに、指が探るように指が股間を動き回り、そのたびにくすぐったいような気持ちいいような変な感じが身体中に広がった。
「そ、んなとこ触、るな……!」
触らせてはいけないところを触られている。すぐにやめさせないといけないのに、何故か腕に力が入らなかった。
「あれ? なんかぬるぬるしてきたよ。陽姉ちゃん、これなに?」
指は割れ目を上下に擦り、それに反応するように何かが自分の中から染み出していた。
……それが感じた結果の産物だとは言えるわけがなく、ぼく自身信じられなかった。
「もしかして、気持ちいいの?」
不意打ちだった。雪から出ることはないだろうと思っていた言葉。
「そんなわけ……ない」
「うそ。だってボクがじぶんで触ったら気持ちよかったもん。陽姉ちゃんもそうなんでしょ?」
「ち、ちが────あっ!」
指の動きが早くなる。回数を重ねるごとに力がこもり、少しずつ割れ目の中に入り込んでいった。
(ダメだ…。これ以上されたら……)
だんだんと理性が融かされていく。
口には出していないものの、心の中では喘いでいた。これを声に出したらどんなにいいことだろう。
たまる快感は吐き出されず、爆発してしまいそうだった。
「陽姉ちゃん、気持ちいいんでしょ?」
雪がぼくの顔を覗き込む。昔のぼくに似た雪の顔。
(……あれ、前にもこういうことが……?)
ふと思い出した。前にもこうやって誰かに迫られたことがあった気がする。
でも、いつだったのか、どうなったのか、はっきりしない。
(ぼくの……顔? ──そうだ!)
欠け落ちていたパズルのピースがはまるように記憶が修復され、次いで脳の神経回路がその記憶に直結し、ビデオのように映像となって再生される。

(ぼくが、『ぼく』に、犯され、た……?)

忘れていたのが信じられないくらいの重大な出来事。
でも、初めてを奪われた────そんなことよりも今はこっちが大事とばかりに『アレ』を突き入れられて迎えた絶頂のことをより鮮明に思い出していた。
思い返すだけでアソコが熱くなった。あの快感は何物にも替え難い。こうやって触られているのなんか問題にならないくらい。

──もう一度、あの快感を味わいたい。

そんな考えが自然と湧き上がった。
この際、相手が誰だろうと構わない。快感が得られるなら、たとえ弟でも。
もう身体に火がついてしまった。理性は融けきり、幸か不幸か妨げるものは何もない。
見ると、雪のモノは固く大きくなっていた。
それが挿れられることを想像する。どんなに気持ちよくなれるだろうか。想像するだけで身震いする。

「雪……ぼくをもっと気持ちよく……させて……」

無意識のうちに、ぼくはそんなことを口にしていた。


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