薄暗い部屋。
所々、埃が舞っているような空間に一台の簡易ベッドがある。
その傍らにあるパイプ椅子には、暗くて見えないが人が足を組んで座っているように見える。
手には携帯を持ち、画面を見ながら操作を繰り返している。
・・・・ピッピッピッ
「・・・・・ククク・・・」
口元には微笑み。携帯画面からの光ではその人物の全体像は見えない。
一方携帯画面では・・・

九条弘美(桐生貴章)
性格:一部変更中(フェイズV)
身体的特徴:変更中
生殖機能:確認済み 月経状態に移行予定
備考:大幅変更中。
観察進行状況:フェイズVへ移行中

・・・・・ピッピッピッ
「・・・これで良い」
どこからとも無く黒い影が舞う。いつのまにかパイプ椅子の横にはもう一つの影。スーと寄り添うとそのまま固まった。
「ククク・・・そうか。あははは!!」
狭い部屋に不気味な笑いが響いていった。

  ◇◆◇

大きな姿見の前には一人の少女の姿。
鏡に映った少女はどこか神秘的な表情を浮かべる。
・・・・ゴクリ。
貴章は息を飲む。初めてではないのに、なぜか動悸が高まる。
頭から大きなタオルを被った少女・・・丸みを帯びた華奢な肩、透き通るような白い肌。
そして・・・貴章は思わず胸に付いた二つの双丘をそっと持ち上げる。
「・・・・・??」
柔らかい感触と僅かではあるが確実に感じる重み。先程の行為では感じなかった別の感触。
「・・・・なんで?」
腰周りも細く感じる、見た目よりもヒップが引き締まった感じだ。
鏡の中の女性は理想的な体型になりつつあったのだ。
「・・・・・」
鏡の少女の頬は次第に紅く染まる。光芒した表情の後、
「・・・・くそ! 俺は男だ!」
ふと思いだしたように下着を着けていく。
ブルーのショーツは何故か股間にフィットし、水色のブラは二つの双丘を包もうとしていた。
どちらも透き通るような白い肌を引き立てているが。
「なんでこんなに着けるのが上手くなったのかな・・・え?」
胸が僅かではあるが窮屈に感じる。
「・・・まぁ良いか。それにしてもこの長い髪も問題だな」
貴章は濡れた髪を無造作にタオルで拭くと洗面にあった輪ゴムで長い髪を束ねてしまった。
室内着はラフな格好・・・殆んど貴章が男だった時と同じに着替えてしまった。

・・・・ピンポーン。

「今晩は弘美さん。あれ?どうかしたのかな」
インターホンの前には一人の少女がいた。
「・・・どなた?」
「あ、弘美さん?・・・いえ貴章さん、今晩は。八神です」
・・・・由香?・・なんで今の時間に・・・
「貴章さん、今日プリントもらわなかったでしょ?一応貴章さんの分を持ってきたんだけど・・」
「・・わかった。今開けるから待ってくれる?」
・・・・ガチャ!
目の前に現れたのはセーラ服姿の八神由香。
髪が赤いリボンで留められているポニーテールで制服によく似合っていた。
「貴章さん・・・これ・・」
彼女は綺麗に折り畳まれた紙を貴章に渡す。
・・・・折角届けてくれたんだし、お茶くらいいいかな・・・
「あ、ありがとう。ねぇ、上がっていかない?お茶でもだすよ」
「いいんですか?・・・じゃぁお邪魔します」
少女はゆっくりと玄関をくぐった。
「どうぞ・・・何にもないけどね」
トレーから紅茶の入ったカップとケーキがテーブルに置かれる。
貴章は彼女をマンションの居間に通した。
居間には小さなクッションとテーブルがあり由香はキチンと正座しながら座っていた。
「・・・・すみません、貴章さん」
「別に固くならなくていいよ。リラックスしてね」
「あたし・・・・弘美先輩の所にお邪魔するの・・今日が初めてなんです」
「・・・そうなんだ。実は俺も・・な。へへ!」
貴章はトレーを前面で抱きかかえ、彼女の仕草一つ一つを目で追いながら見つめていた。
・・・高校生の由香も可愛じゃん・・・はぁ・・・俺が男だったらな・・
「弘美先輩って綺麗好きだったんですね。・・・・これで一人なんて羨ましいなぁ」
「はは・・そうか。俺なんか、自分の部屋なんて汚かったし・・」
・・・・・なんでだろう?彼女と会話が合うなんて・・もしかしてこれも、弘美の仕業か?・・
そんな会話が続いた時。
「あ、・・・」
会話に夢中だった由香が手を滑らせて、紅茶を零してしまった。
「貴章さん、ごめんなさい・・・」
「あ、良いよ、拭くから。服に付いちゃった?」
「いえ、大丈夫です」
由香は慌ててハンカチで拭こうとして貴章の手に触れた。
・・・・・ドクン!
・・・・何?・・・・
高鳴る衝動、次第に動悸が激しくなる。
「貴章さん・・・どうかしました?」
「う、うん・・な、なんでもない・・・よ」
・・・・おかしい・・どうして?俺は一体・・・・
貴章の頬が薄っすらと紅く染まる。次第に息が乱れはじめる。
貴章の中に何かが蠢きだしていた。
「貴章さん、気分が悪いんですか?顔が紅いんですけど・・・」
由香は心配して貴章を覗き込む。
「・・・・・ううん・・大丈夫。ちょっと洗面台に行ってみるよ」
体をふら付かせながら、なんとか目的地にたどり着く。
「・・・・な!・・・・」
鏡を見た時、貴章は驚いた。
それは瞳を妖しく輝かし、頬を紅く染めている少女が映っていたからだ。
『ふふっ♪ 貴章さん、由香としたくなった?』
鏡の少女が貴章に問いかける。
「・・・・弘美か! こんな時に・・・・」
思わず反論する貴章。鏡の少女は落ち着いた表情で・・・。
『あの娘としなさいよ。・・・・ふふっ、貴方にとっても好みじゃなくて?』
「・・・馬鹿な! 俺がそんな事をするかよ!」
『出来るわ。ううん、私がしてあげるの。貴方自身になってね』
「な! や、やめろ! そ、そんな事は・・・」
『あらぁ、無理しちゃって。いいじゃない、スキンシップよ♪ それに昼間屋上でしてもらったでしょ? 今度は私の番よね』
「やめろ! 弘美!」
『・・・・いいって。貴方はそこで見てなさい』
「やめろ!!」
『ふふっ。あの娘も喜ぶわぁ、百合だものね♪』
次の瞬間、体に何かが通り抜けた感触がした。この時貴章自身の意識は次第に弘美に置き換わっていく。
・・・これが弘美の本心かよ。くそ・・・
「あはは♪ そうよ。今は私が弘美なの。貴章じゃないわ」
いつのまにか鏡の少女と同じ怪しい瞳を輝かせていた。

弘美はそっと自らの胸を持ち上げてみる。
「ふうん。結構胸が大きくなったじゃない」
・・・・ひ、弘美、お前・・・・
貴章は必死になって声を上げた。かすかに弱い声ではあったが。
「あら、まだ意識はあったの? すごい精神力ね」
・・・・お、お前、以前はそんな性格ではなかったはず。
暫く無言になる弘美。そして。
「そうね。以前のあたしならこんな事を考えもしなかったわ。でも・・・」
・・・・なんだよ。
「貴方があたしになった時から全てが変わったの」
・・・何故だ!?
「貴方が男だから」
・・・・それだけで?
「今言える事はこれだけよ。いずれわかると思うけど」
・・・・まて!理由になっていないじゃないか。
「ふふ。今の自分の立場で言えて?」
・・・・なにぃ?
弘美は着ていたTシャツをめくり上げると、水色のブラのホックを外した。
・・・プチ!
ブラが足元に落ちた時、形の良い乳房が現れた。
表面は薄っすらと桃色に染まりその頂きがツンと尖っているのが分かる。
彼女はそれを摘んだりして弄び始めた。
「くふ!・・・ずいぶん感じていたのね、あの子に」
・・・・はぁはぁ・・ち、違う。俺は・・・
貴章の声は弱い。それは自らの意識を僅かだが、残っているのを必死で保っているからだ。
だがそんな必死さも弘美によって溢れ出る快楽によって消えつつあった。
・・・・はぁう・・・はぁはぁ・・・
「うふ。だいぶ無理してきたわね。我慢してないで、今はあたしの意識に入りなさい」
・・・・・・・クッ!
「はぁはぁ・・貴方も望んでいる事じゃない、一緒に気持ちよくなろうよ」
口からは時折甘い堵息をはきつつ、誘惑の言葉が続く。
・・・・はぁはぁ・・嫌だ。
「どうして?」
・・・・・これは自分の意思じゃない。
「ふうん。これでも?」
弘美は付けていたジーパンを脱ぐとショーツの中に手を入れた。
・・・・ピチャ!
「はぁう!・・・ここもこんなに濡らしていて?・・・相当エッチなのね」
・・・・ち、違う・・・・・・お、俺は・・・
心を見透かされたように言う弘美に貴章の声はか細くなっていく。それは気のせいではない。
しだいに弘美の意識が貴章自身の意識を崩しつつあったのだ。
・・・お、俺・・・は・・・・ちくしょう・・・・
だんだん、意識が遠くなる。何時の間にか貴章の声は聞こえなくなった。
暫く呆然と洗面台の前に立っている弘美。ふと気が付いたように。
「・・・・・落ち着いたようね。貴章さん、今のあたしはあの子と遊ぶだけ。貴方は感じているだけでいいわ。あははは!!」
洗面台の鏡の前にいる弘美、その姿は欲望に染まった淫魔そのものになっていた。


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