部屋の外からジージーと、セミの鳴く音が聞こえてくる。
 どんよりと薄暗い部屋は澱んだぬるい空気に満たされているはずなのに、
湖畔の夜風に似たひんやりとした空気と、どこか高原を思わせる爽やかな匂いが支配している。
 この部屋は、外の世界と切り離された異空間と化していた。
 アパートの一室に、全裸に等しい少女が机の端に体重を預け、男性の前に立っている。
 ただそれだけで、部屋の雰囲気がいつもとはまるで違ってしまう。
 いや。彼女を少女と呼ぶには、あまりにもにじみ出る雰囲気が淫らすぎる。
 一糸まとわぬ全裸を晒し、本来は秘すべき部分まで異性の前にさらけ出しているというのに、
その顔には隠しようのない喜悦が溢れ、そして堂々としている。
目の前に跪いた男は、女王陛下に拝謁する忠実な臣下のようだ。
 彼女が顔を少し動かすだけで、艶やかで滑らかな黒髪が、昆虫の長い脚のように音もなく白い肌を這ってゆく。
髪が肌を這う感触がくすぐったいのか、少女はさらに身をよじる。
 豊かな胸が、ふるりと震える。
 忠実なる下僕と化した男……都築悠司は、手で触れると少女が泡となって溶けてしまいそうな予感に囚われ、
わずか数十センチが踏み出せないでいる。
「足を……開いて。あそこを見せて」
 しわがれた声に驚いて左右を見る。
 なんと、自分の声だった。喉に手をやる悠司を見て、亜美は薄く笑った。
 亜美は立ったまま、机にお尻を乗せるようにして足を開いてゆく。
背後にパソコンがあるので十分に体重をかけきれず、不安定な状態だ。
 ゆっくりと足を開いてゆくと、ぴち、という音がした。
 濡れた陰唇が、音を立てて開いたのだ。
 まるで幼い少女のようだと思ったのは一瞬だけで、ふっくらと膨らんだ亀裂の中に隠れていたのは大人の性器そのものだった。
しかし、悠司の目を引いたのはそれではない。
 無毛症かと思っていたのだが、陰唇の脇に少しだけ顔をのぞかせているヘアーの毛先に気がついたのだ。
「亜美ちゃん、もしかして剃ってるの?」
 悠司が悪戯っ子のような視線で亜美を見つめる。亜美はうつむいて伏し目がちになって言った。
「先生の意地悪。そんなこと……恥ずかしくって、言えません」
 悠司はわずかに生えている黒い穂先に指を伸ばし、なぞってゆく。亜美の体が、少し跳ねた。
「まるでひげみたいだ。亜美ちゃんは毛深いみたいだね」
「そんなこと、ないです!」
「剃っているんだよね?」
 悠司はもう一度尋ねた。
 亜美が拗ねて顔を横に背けた瞬間、亜美の両足がびくりと跳ねた。
悠司が敏感なクリトリスをカバーの上からくるりと一周、なぞったのだ。
「い、いやあ……」
 悠司はゆっくりと亜美のラヴィアを指でなぞり続ける。
身をよじらせている亜美は、抵抗をしているどころか、もっととせがんでいるようにさえ見えた。
「おっきなクリトリスなんだな。きれいだよ、とっても」
「そんなの……いや。だめぇ……」
「びらびらもバラの花びらみたいなきれいな色だ。ふっくらとしてて、舐めたら溶けちゃいそうだな」
 興奮したのか、あまり目立たなかった花びらはよりくっきりと形を現わし、蕾が開くように膨らみ始めた。
つぼみからは甘露があふれ始め、悠司の指を濡らしている。
「ほら、気持ちいいんだろ? どんどんいやらしい格好になってきてるよ。腰なんか動かしちゃって、本当にエッチな子だな」
「ん……やぁ……だめ。恥かしい」
「さっきから亜美ちゃんは、恥かしいばっかりだね」
「だって、本当に恥ずかしいんですもの……」
 声さえもが少し拗ねた、甘えたような媚びる物へと変化していることに、亜美自身は気づいていない。
 悠司は無造作に亜美のクリトリスに手を伸ばし、親指と人差し指で器用に皮を剥いて芽芯を剥き出しにしてしまった。
「ここも大きくなってきた。おっと、綺麗に剥けちゃったね」
 亜美は体をのけぞらせて悶えた。
「あ……かっ……」
 ぬめる媚肉の中でひときわ大きく主張をするクリトリスは包皮から完全に顔を出し、悠司の指で円を描くように震えている。
「やぁん! せ、せんせ、そんなに……んっ! いぢらないでぇっ!」
 敏感な器官を強く刺激されて、亜美は両手を握り締め、身を屈めるようにして堪える。
体を乗り出している悠司の頭に覆い被さるようにして、彼の背中に手を伸ばし、手のひらで軽く叩いて抗議する。
 だが悠司は彼女のかわいらしい抵抗を無視して、手を止めなかった。
「ほら。亜美ちゃんのいやらしい汁でじゅくじゅくだ」
 確かに悠司の指は、まるでローションでも塗りたくったように、床に滴り落ちるほどの粘液に包まれていた。
「そっ、そんなの、見えません!」
 亜美は固く目を閉じ、眉をしかめて言った。
 悠司が指を動かすたびに、体の奥を突く甘い衝撃が断続的に亜美を襲う。
自分でも熱い蜜を漏らしているのがわかっているのに、口ではそれを否定してしまう。
「亜美ちゃんって、ここの毛をジョリジョリと剃ってるんだよね?」
「ち、違いますっ!」
 ほんのわずかに、剃り残しの髭のような淡い跡がうかがえる。
よくよく目を凝らしてもわからないのだが、亜美が色白なので間近で見ている悠司にはわかってしまうのだ。
それに、ここ十日ほどは、いつも手入れをしてもらっているゆかりとの"夜遊び"をしていなかったという理由もある。
「もう一度聞くよ。亜美ちゃんは、ヘアーを剃っているんだよね。安全剃刀で剃ってるの?」
 悠司が口を尖らせて、股間に息を吹き掛ける。
 アヌスが、きゅっと締まった。
 息がかかるだけで、気持ちがいいのだ。
 目に見えない極細の糸で作られた筆で撫でられたようだった。
 執拗に繰り返される吐息の愛撫に、亜美は身体をのけぞらせ、快楽にうち震えた。
太腿やへそにまで吹き掛けられる息だけで、亜美は声を押し殺しながらも、乱れに乱れた。
 気がつくと、息の攻撃は止んでいた。
「もう一度聞くけど」
 悠司は一拍おいて言った。
「亜美ちゃんはパイパンなのかな? ……パイパンって言ってもわからないかな。
要するに、ええと……最初から生えていない、ってことはないよね」
 まだ、身体中に悠司の愛撫の残滓が残っているようだ。もちろん、息なのだから跡など残るはずもない。
だが、確かに肌の上に何かが存在し、微妙な刺激を与え続けているようだ。
 息をするだけで、どんどん高まってしまう。
 自分の吐息が甘い成分を帯び、空気中に媚薬を散布しているような、そんな感じさえする。
「亜美ちゃん?」
「あ……はい」
「返事は?」
 甘噛みされたような刺激が両方の乳首に走る。
彼とのやり取りだけで、亜美は体のそこかしこが、さらに興奮してくるのがわかった。
 今までにない経験だ。
「お返事」
「は、はい」
「じゃなくて、亜美ちゃんは剃っているのかどうかってコト」
 悠司が意地悪な表情を浮かべながら言う。
 亜美は顔に血が昇ってくるのがわかった。
 この男性(ひと)は、わかっていて自分に言わせようとしているのだ。
「はい……わ、私……」
 呼吸が、そして声が小刻みに震えているのが自分でもわかる。
 信じられないほどか細く、頼りない声だ。
「……剃ってます」
「何を?」
「あの……ヘ、ヘアーを……です」
「エロい縮れっ毛だよね」
 亜美は間髪入れずに、頭を軽く何度も縦に振った。
 悠司の言葉で、亜美の芯が疼く。
 何気ない言葉が彼女の心を否応無く揺り動かす。
「腋の下とかも?」
「はい……脱毛クリームとテープで……」
「それであそこを濡らしたりしてるんだ。亜美ちゃんはいやらしい子だ」
 事実かどうかは問題ではない。
 相手がどのような答えを望んでいるのかが大事なのだ。
「はい、そうです。私は……」
 舌が乾いて、上あごに張り付いてしまった。口を開けたまま息をしていたからだろう。
一度口を閉じて唾を口の中に行き渡らせ、続ける。
「エッチな毛を剃りながら、オナニーをするんです。
鏡の前で、あそこを広げながら、いけないことだってわかっているのに……手を止められないんです」
 少し早口で一気に言ってしまうと、熱い飛沫が、つぅっと会陰の方へ流れてゆくのがわかった。

(精液……ううん、そうじゃない。いやらしい蜜が出ちゃってる……)

 亜美の頭の中は、割れ鐘が何十個も鳴っているような大騒ぎだ。
 理性的な考えができなくなってゆくのがわかる。気持ちよくなりたいという動物的な欲望だけがいっぱいに広がってゆく。
「よく言えました。じゃあ、ご褒美」
 悠司は亜美の股間に顔を埋めると、彼女の聖なる領域にある宝冠――クリトリスに口づけた。
「やぁ……ひぃぃぃぃんっ!!」
 閉じたまぶたの裏に、光が産まれた。
 悠司の頭を自分の股間に押し付けるようにして体を縮こまらせ、彼を包みこむ。
まるで、彼を胎児に戻して子宮に押し戻そうとでもするかのように。
 息苦しいはずだろうのに、悠司は更に奥へと舌を進ませようとする。
 無精ヒゲのざらざらとした感触さえもが、亜美を高ぶらせる。
「いやっ、だめっ! せんせっ、だめぇっっ!!」
 爆発する!
 膨れ上がった快楽の風船が、ついに弾ける。
 鼻の奥にきな臭い匂いが走った。足が悠司の身体を強く締めつける。
 その瞬間、亜美はついに、絶頂に達して気を失ってしまったのだった。

***

 体が重いのに、空中に浮いているような奇妙な感覚がする。
 まだ、目は閉じたままだ。
 汗の匂い。
 男の臭い。
 嫌い。
 でも――好き。
 ここでじっとしているだけで、湿った少しかび臭い部屋の匂いや、
電子部品が放つ独特の無機質な香りにつつまれ、身構えていた心が解きほぐされ安らいでいくようだった。
 なぜ安心できるのか。
 他人のはずなのに、懐かしい、長年嗅ぎなれた部屋の匂いがする。

(なんか……不思議……)

 どうやら、垢じみた薄汚れた万年布団に横たわっているようだ。
 亜美は潔癖症ではないが、男が住んでいる場所で一夜を過ごした事は一度も無かった。
 なぜだろう。
 目を閉じたまま、整髪料と油の匂いが染み込んでいる枕に顔を埋めた。
 匂いを肺いっぱいに吸い込む。
 心と体が蕩けそうだ。
 体の中に残る快楽の残滓が再び体中に広がり、総ての感覚が快感へと変換されてゆく。
 こんなことは初めてだった。
 今までにエクスタシーを感じたことは数知れない。しかし、そんな時でも彼女が気を失うことはなかった。
常に男が疲れ果て、倒れるまで亜美が主導権を握り続けた。
 最後に残るのは、いつも彼女のみ。女王のように君臨する。
 でも、体は確かに燃えているはずなのに、心の中は不完全燃焼。
どれだけエクスタシーを感じて、終わった後に残るのは虚脱感だけだった。
 だって、私を満足させてくれないんですもの。
 男なんて所詮、精子を出せばお終いのだから。自分だけ先に満足してしまう、身勝手な生物。
 女を孕ませるのが怖いくせに、孕ませようとする矛盾した種族。
 だから私は、彼らの上に君臨するの。
 男を支配するの。

 でも……。
 ――でも?

 わからない。
 自分の、今の気持ちがよくわからない。
 胸が熱くて、苦しい。
 悠司の顔を想像するだけで、顔が熱くなってくるのがわかる。股間が熱い。
 射精をしてしまった後のような虚脱感があるのに、空しさは少しも無い。
 挿入されてもいないのに、満足感がある。心が温かい。
 わかっているのに、初めてのような、この気持ち。
 これは……。

 何?

 ワタシハ、オトコナノニ。
 ワタシハワタシナノニ……

 ワタシハワタシニ――コイ、シテル?

***

 意識の戻った亜美がまず感じたのは、じっとりと湿った空気と変質した汗の匂いだった。
 目をゆっくりとあける。
 だが、目の前に悠司の姿は無かった。
 いつもより重く感じる体を起こすと、地面に這いつくばるようにしている悠司の姿が目に留まった。
 彼の手にはデジカメがあり、横たわっている亜美の姿を写している。
「や、やだ。先生ったら!」
 亜美は慌てて胸を両腕で隠し、足を閉じて膝を折り畳み、体を縮こまらせる。
「かわいいよ、亜美ちゃん」
 何気ない言葉に、彼女の心臓が大きく跳ね上がった。
 かわいい?
 胸の真ん中に何かが挿し込まれたように苦しくなり、亜美は胸を押さえる。
 心臓がバクバクと勢いを増し、胸が一回りも膨らんだように感じる。手の下にある乳首が固くなっているのがわかる。
 悠司は彼女の変化にも気づかず、デジカメの液晶画面を反転させて亜美の方に向けて見せた。
「ほら、見てごらん。こんな風に見えるんだよ」
 亜美は平静を装い、身を乗り出して画面を覗きこんだ。
 だが、その化粧は一瞬にして剥がれ落ちてしまった。
 無防備に裸体を晒している姿が、亜美には自分でも信じられなかった。
リラックスしているのがわかる。全てをゆだねきり、くつろいでいるのだ。
 そして、小さな液晶画面を通してもわかる色気が漂っていた。
「私、すごくエッチな人に見えます」
「だよね。亜美ちゃんって、むちゃくちゃにエロいもんね」
 そう言って手を伸ばし、亜美の胸を揉む。
「ほら。すぐに乳首が固くなってきた。
おっぱいだってこんなに大きいし、乳輪だってぷっくら膨らんでる。オマンコだって……」
「お、おまん……」
 直接的な猥褻語に、亜美の芯がきゅんっと疼いた。
「亜美ちゃんのあそこだよ。自分のを、こんな風に見たことないだろ?」
 悠司がパソコンの方に歩いていって、マウスを操作し、何かのソフトを立ちあげた。すぐに画面が出てくる。
 画面いっぱいに現れたのは、横たわって気を失っている彼女の画像だった。お尻の方から撮影したのだろう。
薄墨色をしたすぼまりと、南海の珊瑚のような鮮やかな色彩を持つ桃色の秘部がそこに映っていた。
 会陰から太腿の中ほどまで広がってるものは、もちろん精液ではない。自分自身の愛液だ。
足を閉じているので膣内までは見えないが、普段はそれほどではないラヴィアの膨らみが見えるということは、
よほど感じていたのだろう。
 亜美は身を乗り出し、食い入るようにして画面を見つめた。
 悠司はマウスのボタンを操作し、次々と様々な角度から撮影した姿を亜美に見せる。
 セックスしている自分の姿をビデオ撮影したこともあるのだが、小さな液晶画面で見る自分の姿は、まるで別人のようだ。
 とてもかわいい。
 気を失っている自分をいじり倒し、このような写真を撮られていたことに対する怒りは無かった。
むしろ、無防備な自分のかわいらしさに胸がときめくのを押さえられなかった。
 亜美は悠司の無言の誘いにのせられ、全裸のまま椅子に座って自らマウスを操作し、画像を見てゆく。
いつしか彼女は、空いた片方の手を股間にやり、自慰を始めていた。
 悠司はデジカメを操り、画面を見ながらオナニーをしている亜美の撮影を続けている。
確かマイクロドライブが入っているので、高画質モードで百枚以上は撮れるはずだった。
 こんな淫らな姿を映像として撮られてしまっている。
 もし、こんな画像が人に見られたらどうしよう……。
 それより、もっと真剣に愛撫して欲しい。奥の奥まで、狂ってしまうくらいぐちょぐちょにして欲しい。
 指なんかじゃなくて――熱いおちんちんで!
「せんせ、ねぇ、もっと……もっといじってください!」
 悲鳴にも似た哀願の言葉に、悠司はカメラを置いて椅子を回転させ、
亜美の脚に手をかけて両手でラヴィアを広げ、指を挿入した。
 熱い雫が溢れるのがわかった。
 濡れているという表現は似つかわしくない。
 煮えたぎっている。彼の指が火傷をするんじゃないかしら、と亜美は思った。
 執拗な愛撫に、亜美は熱い吐液が溢れ出るのを感じつつ、真っ白になりそうな思考を懸命にこらえる。
 悠司が指を動かす度に彼女のアヌスのすぼまりが、きゅっと締まる。体が跳ねるのを押さえる事ができない。
涙が自然に、ぽろぽろとこぼれ出てきた。
「ど、どうしたの亜美ちゃん。痛かった?」
 亜美の様子がおかしいことに気がついた悠司が顔を上げて言った。
「だって、先生がいぢわる過ぎるんですもの」
 しゃくりあげながら亜美は返事を返す。だが、その一方で薄目を開けながらこっそりと悠司の様子をうかがうのも忘れない。
半分ほどは恥ずかしくて仕方がないので、演技ではない。
「ごめん。ちょっと調子に乗り過ぎたな。少し休んでいてよ」
 悠司はゆっくりと立ち上がって、指についた粘液をどうするか少し悩み、
亜美の見ている前で自分の口を開けて指を中に突っ込み、まるでフェラチオでもするかのように音を立ててしゃぶり、吸った。
 その悠司の仕草を見た亜美の股間に、火をあてられたような衝撃が走った。
 漏らしてしまった……。
 もちろん小水ではなく、愛液だ。まさか自分が潮を吹くだなんて思ったこともなかった。
一時間足らずで、快楽を知り尽くしたはずの自分の体が、更に貪欲になってゆくのが恐ろしかった。

 どこまで飛んでいけるのだろう?
 どこまで堕ちてしまうのだろう……。

 恐れる一方で、お腹の底に鉛のように張りついているような負の感情を楽しむ自分がいる。
 恐怖の感情すら快楽へと転じてしまう自分がいる。
 張り裂けそうな苦しさが、快楽を倍にもしているようだ。
恥ずかしいから、気持ちがいい。こんなことをしたくないから、気持ちがいい。
禁忌を破る事が快楽に繋がっている。
 亜美は自分の股間に手をやり、無意識に自慰を始めていた。
 その間に悠司はデジカメからカードを抜き、パソコンに増設してあるスロットに入れるとマウスを操作して画像の転送をする。
 このまま待っているのかと思っていると、悠司は次にビデオカメラを手に取った。
最新型ではないが、パソコンに直接データを転送できるデジタルビデオだ。
亜美には見覚えがない物だが、どうやら大学の知り合いあたりから借りてきたようだ。
 椅子に手を突き、前のめりになっている亜美にレンズが向けられた。
 無言の誘いに、亜美はほぅ……と息を吐き、ゆっくりと足を広げ始めた。
 体の奥から、じくじくと小さな虫が這い出てくるようなムズ痒さと、
頭まで心臓になったのではと思うほど、胸が高鳴っている。
 セミの鳴く声と扇風機のモーターと風切りの音だけが室内に満ちている。

 言葉も無く、亜美はかかとを椅子の上に乗せてM字型に足を開いた。まるで蛙が今から飛び出そうとするかのような格好だ。

(見られている……)

 カメラは股間を写している。
 もっと上を見て欲しい。おっぱいでもなく、顔を見て欲しい。私の顔を撮って欲しい。
 言葉に出せない想いを込めて股間を熱心に撮影している悠司の頭を見つめるが、
超能力など持っていない彼女の気持ちが彼に伝わるはずも無かった。
 亜美の想いも知らずに熱心にビデオ撮影をしている悠司は、広げられている珊瑚色の肉洞の奥に、
暗がりの中から時折、ちらりちらりと顔を覗かせる物があるのを見つけた。
「亜美ちゃん、ほら、見てごらん。これは何かな?」
 カメラの液晶画面を反転させ、亜美の方に向けた。
「な……にって……えっ?」
「この奥に見えるのは何だろうね」
「それ……は、その、あの……」
「あの?」
 悠司は自分の方に突き出しているような格好の彼女の股間の溝に、空いている右手の指を深く差し入れた。
「先生っ! いやあっ!」
 いきなり深く挿入されて亜美は声を張り上げそうになり、あわてて折り曲げた自分の人差し指を歯で噛んで堪えた。
女性のものとは違う無骨で大きな指が無遠慮に亜美の中をえぐってゆく。
「せ、せんせぇ。つめ……爪切っています、か?」
 亜美は薄く歯形がついた指を離して言った。指で奥をまさぐるだけではなく、
膣口の裏側に指を突き立て、ほじるようにする悠司の中指と人差し指の動きは、熱い淫液をほとばしらせる。
「ちゃんと切ってるよ。亜美ちゃんのあそこを傷つけたりなんかしないから」
「それなら……んふぅっ!」
 膣口の上、クリトリスの裏側に近い部分に曲げられた指が蠢いている。
指が動く度に、でたらめな量の莫大な快楽信号が彼女を襲う。
「んんん、やぁぁぁぁんっ! せんせ、だめぇっ!」
「凄い。指でも気持ちいいよ。ざらざらしてて、締めつけてくる……」
 亜美の抗議もお構い無しに、悠司は亜美の中で何かを削ぎ落そうとでもするように指を動かす。
指が動く度に、亜美は電撃でも食らったように体を跳ねさせ、甘い声を上げる。
 ああ、見られてる。見られている。自分の奥の奥、普通ならば決して見られない場所を初めて見られている。
 しかも、指だけで達せられようとしている。
 左手はビデオカメラを持っているので、右手だけで広げられている膣口は、
ともすれば悠司の指を絞め殺そうとでもするように収縮している。
これでも悠司はかなり指の力をこめているのだ。
 淫靡、と一言で説明するのは簡単だ。
悠司の指はとろみのある少し白濁した粘液にまみれ、膣は両脇から前に回された手によって脚を広げられ、
指を挿し込まれて大きく左右に広げられている。
クリトリスはとうにカバーから顔を出し、時々悠司の手が触れる度に、亜美に小さな悲鳴をあげさせている。
 冷静に見える悠司が憎らしく思えた。
 彼が持っているハンディビデオの液晶には、恥じらいながら、
溢れる官能に戸惑いを感じつつ、乱れるのを懸命に押さえようとしている姿が映っている。
鏡でもなく、後で見直すビデオの映像でもない生の自分の客観的な映像は、とても新鮮に感じた。
 さっき画面に映っていたのは、子宮口だった。
 リラックスしきっていないとそこまで見えないのは、過去の経験からわかっている。
今まで彼女のそれを見たことがあるのは、亜美の姉である観夜と、義兄の雄一郎くらいのものだ。
つまり、家族以外で彼女の子を宿す部分を見たのは悠司が最初ということになる。
 いつの間にか指の動きが止まっているのに気づいた亜美は、不思議な笑みを浮かべている悠司を見つめた。
「亜美ちゃん、実はね……」
 悠司が体を寄せて、耳元で囁いた。
「ほら、あそこにカメラがあるのがわかるかな? あのカメラはインターネットで全世界に向けて今の光景を放送しているんだ」
 確かに悠司が指した場所には、小さな丸い形のビデオチャット用のカメラがあり、
コードを伝ってパソコンのUSB端子に接続されていた。
 亜美の背中に粟が立った。
「どうしたんだい? 寒いのかな。こんなに鳥肌立てちゃって」
 鳥肌の感触を楽しむように悠司は彼女の腕に手のひらを這わせる。
「亜美ちゃんのいやらしいオマンコやお尻の穴、もちろん顔までばっちりと世界中の人に見られていたんだよ」
 息苦しい。
 呼吸ができない。
「い……いやぁっ!」
「抵抗したってむだだよ。だって、もうライブで放映されているんだからね。
さっきの写真も、何人がダウンロードしたかわからないね。
きっと、君のきれいなオマンコを見ながら、シコシコやっている人がたくさんいるよ」
 足が震え、体の力が抜けてしまい、悠司に体を預けることになってしまう。
 頭が真っ白になってしまって、まともな考えがまとまらない。
「あ……いや……だめなのぉ……せんせ、だめ……」
 胸が熱くなったと感じた瞬間、堰を切ったように目から熱い飛沫が頬を伝って胸まで滴り落ちてゆく。
 涙が止まらない。
 つけたままの眼鏡が涙で曇り、濡れてゆく様を見た悠司が慌てて言った。
「嘘! 嘘だよ。ごめん、亜美ちゃん。そんなことしてないよ。繋がっているなんていうのは嘘。
あのカメラは故障しているし、それに……亜美ちゃんを他の人なんかに見せてたまるか」
 そう言って亜美の顔を自分の胸に抱きしめた。
 Tシャツを通して、彼の体臭が亜美の体に染み込んでゆくようだ。
 見られないで良かった。
 確かに亜美の父親がこんなことを知ったら、猟銃で悠司を撃ち殺しかねないだろう。
きょうだいの中で、一番可愛がっているのが次女の亜美なのだ。
結婚をしないでいつまでも家に居てくれと本気で言うくらいだし、
なによりも、たかだか小学校を卒業したばかりの娘に、独立した部屋が欲しいとねだられただけで、
敷地内とは言え、あの豪邸を建ててポンとプレゼントするような親バカである。
これを親馬鹿と一言で片付けるのも問題があるような気もするが。
 だからというべきか、今でも父は、自分が処女であると信じて疑っていない。
いや、娘が性的なことはなに一つ知らないと思い込んでいる。まさに箱入り娘であり、掌中の珠なのだ。
 その一方で、亜美の心の中には別の感情もあった。
 本当は恥ずかしかったのではない。
 あまりの快感に、興奮し過ぎていただけなのだ。
 もちろん、今までに裸体を見せたことが無いわけではない。
 しかしそれは、自分の裸を見て興奮してゆく人の心の移り変わりが面白かっただけで、単なる前戯の一手段でしかなかった。
自分では興奮などしたことがなかった。
 なのに今は、唯一人、目の前の男性に見られているというだけで痺れ、濡れてしまう。
 こんな事は初めてだ。本当に何もかもが新鮮な体験だ。
 まだ挿入もされていないのに、深い満足感がある。
 涙を流すことさえ心地好い。快感だ。体の中に溜まったどす黒い塊が洗い流されるようだった。
 涙を流し続ける亜美に、悠司は抱きしめながら言った。
「ごめん。本当に悪かったと思っているから、泣き止んでくれないかな。なんか俺、極悪人みたいだな」
 亜美は返事を返そうとして、頭に閃いた言葉を悠司に言った。
「……じゃあ、私のお願いを一つだけかなえてくれます?」
「そうだね。一つだけなら……ああ、でも無理なお願いは無しね。それと、あまりお金がかかるようなのは勘弁して」
 亜美はくすりと笑い、首を左右に振った。
「私、早く先生が欲しいんです。先生も、脱いでくださいますか?」
「それが亜美ちゃんのお願いかな」
「いいえ。……秘密、です」
 眼鏡を外して涙を拭い、ついでに手元にあった箱からちり紙を取り、眼鏡のレンズを拭き始めた。
 悠司は、全裸の少女が眼鏡を拭いている光景に奇妙な興奮を感じていた。
おっぱい星人にメガネっ娘萌え属性の彼にとってはたまらないシーンだ。
「亜美ちゃん、眼鏡を外さないんだね」
「だって、先生の顔が見えなくなってしまいますもの」
「ねえ、亜美ちゃん。その、先生……ってのはよしてくれないかな?」
「でも……」
 亜美は口ごもった。
 どうしても、悠司さんとは呼べない。呼んでしまったが最後、自我が崩壊してしまいそうな気がするからだ。
 自分は確かに女性ではあるが、心の中には男の部分がある。これは確かだ。
その人格は、都築悠司の記憶を持っている。彼女は悠司という存在など知らなかったし、多重人格でもないようだ。
亜美と悠司の二つの記憶と人格が奇妙に混ざり合い、一つの体を共有している。
 しかし、目の前の人は間違いなく都築悠司であり、実体を持っている。
 どちらが本当なのだろうかと問えば、彼女の前にいる男性以外には有り得ない。
では、今自分の中にある男性は、自分の妄想の産物なのだろうか?
 レンズをきれいにし終わった亜美は眼鏡をかけ直し、深呼吸をする。
 今の自分の疑問を口に出そうとしたが、やはり言えない。代わりに口をついて出たのは、別の台詞だった。
「先生のペニス、なんで勃起していないんですか?」
「勃起って……」
 ストレートな台詞に言葉を詰まらせるのは、今度は悠司の番だった。
 悠司は頭を掻きながら言う。
「いや、あの、あんまりにも夢のようでさ。興奮するより先に、疑っちゃうんだよ。でも、実は……その」
「もう、一回射精してしまった……でしょう?」
 身を乗り出し、ジーンズの上からさする亜美の指先に感じる、じっとりと指を濡らすほどの湿りと、
股間から漂う青臭い臭いが全てを物語っていた。
「うん、まあ、そうかな」
 亜美は椅子から降りてひざまずき、突っ立ったまま所在無げに天井を仰いだ悠司のズボンのボタンを外した。
 トランクスの前面がまるで、おねしょでもしたように濡れている。汗と青臭い匂いが股間からたちこめている。
下着を触ると、染みはまだ熱かった。
 亜美は居ても立ってもいられなり、その下のトランクスごと一気にズボンを下にずり下ろした。
「うわっ! ちょ、ちょっと亜美ちゃん!」
「まあ!」
 亜美は思わず声を上げた。
 内側にはねっとりとしたおびただしい量の粘液が、ペニスだけではなく、陰毛や袋に至るまでこびりついていた。
ゼリーのような小さな塊が、射精をしてからまだ間もないことを物語っている。
 恐ろしく大量の精液だ。トランクスの前面にべったりと粘塊が張りついている。
指で布地を拭ってみると、指に糊状の精液がたっぷりとこびりついた。
 亜美の視線はまるで磁石で吸い寄せられた方位磁石の針のように、男のシンボルと呼ばれる部分に向いてしまう。

(悠司さんの、剥けていて色が濃いわ……私のおくちに入るかしら?)

 萎えてなお存在感のある陰茎に、亜美の芯が疼く。
 亜美は悠司の、まだ柔らかい粘液まみれの亀頭にキスをした。悠司のペニスがあっという間に大きくなってゆく。
ほんの少し、雁首に引っ掛かっていた包皮が、みるみるうちに引っ張られて余りがなくなっていった。

(ああ……おっきい……)

 つやつやの先端は、灼熱の熱さを秘めていた。
 かつて自分が持っていた部位を目の当たりにして、亜美はただうっとりとしてしまう。
頭の片隅が疑問と警告を発するが、精液への渇望が亜美を酔わせる。
妊娠したい、この人の子を孕みたいという欲望が彼女を突き動かす。

(私、変態だ。自分のおちんちんを舐めて喜んでる……)

 口の中いっぱいに広がる塊を思い切り噛み締めたら、きっと大量の精液が口の中に広がるに違いない。
この中にあるのは血液ではなく、精液なのだ。身体中の水分が全て精液になってしまうほど、注いで欲しくてたまらない。
 自分の口の中を圧倒するように太く大きくなってゆくペニスを、亜美は目を細めて見つめる。
 美味しいエキスをくれる男のシンボル。

(自分……自分の? ううん。私、女なのに……どうしておちんちんがあるだなんて……何か、おかしい……)

 頭の中が熱で朦朧としているようだ。
ぬるりとした少し苦い粘液の味が口の中に広がるにつれて、思考はさらに錯乱状態に陥ってゆく。
なかなか大きくなってくれない口の中の物に少しいらだちを感じ、顔を後ろに引くようにしながら、
わざと大きな音を立てて引き抜いた。
 気持ち良くなってきたのにお預けをされた悠司は、眉をしかめて亜美の方を見る。
そして亜美は、悠司に見せつけるように自分の指にこびりついた精液を、舌を伸ばして舐め、
続いてフェラチオをするように口の中に突っ込み、しゃぶった。
 ペニスが一層いきり立ったのを見て、亜美はくすりと笑った。
「先生の、えっち」
「笑わなくてもいいだろ」
「お口でして欲しいですか?」
 返事をする代わりに、悠司は亜美の顔に両手を伸ばした。
 だが亜美は手の間をすり抜け、胸を股間にすり寄せた。
柔らかな乳房の感触に、悠司のペニスは一瞬にして限界まで張り詰めてしまった。
「うわっ……も、漏れそう」
 亜美の方も、耳元で心臓が鳴っているようだ。頬が熱くなり、呼吸が苦しい。
 股間の架空のペニスが固くなり、亜美の心を突き上げる。
 セックスが、したくてたまらない。
 だが、それを止める強力な抑制力も自分の中に存在する。
頭の中にもやがかかったような状態だが、思い出せない何かが彼女の行動を縛っているのだ。
 亜美は胸を押しつけながら右手を股間にやり、熱く濡れそぼった谷間に指を差し入れる。
指はすぐに根元まで沈み、かき回すようにしながら、
左手で義兄の雄一郎より長く、たくましいペニスを、大きな胸の間に挟んだ。
「うふっ。先生のおっきいから、ほら……」
 あごの下に顔を覗かせる亀頭に、亜美は舌を伸ばす。
 伸ばした舌で尿道口をちろちろとくすぐると、悠司の体が跳ね上がる。
「柔らけぇ……亜美ちゃんのおっぱい、凄く気持ちがいいよ」
 パイ擦りをしながらオナニーをする巨乳美少女の姿は、悠司の琴線をかき鳴らしたようだった。
 完全に寝転がり、天井を見上げて胸の柔らかさを楽しんでいた悠司は、不意に動きが止まったのを感じ取り、起き上がった。
 亜美の手にはいつの間にか、細い綿棒が握られていた。
「これで先生をくすぐらせてください」
「え?」
 悠司が問い返すのも待たずに亜美は素早くしゃがむと、悠司のペニスを握り締めて尿道に綿棒の先を押し当てた。
「痛い! ちょ、ちょっと亜美ちゃん。何やってんの」
「尿道をくすぐっているんですわ。先生、暴れると尿道が血まみれになってしまいますよ」
 亜美は右手につまんだ綿棒を左右にねじりながらゆっくりと挿入しつつ、悠司の敏感な場所を愛撫することも忘れない。
そして左手はペニスの根元と睾丸を握り締めている。逃げようとすれば握り締め、激痛を与えて動くことを許さない。
悠司はたまらず膝を折り、そして目に見えない手でねじ伏せられたように床に寝転がってしまった。
 時には舌や胸をも使い、悠司が腰を引こうものなら陰嚢までやんわりと握り締めて動きを縛る。
まるで、展翅板の上に載せられてピンを打たれた昆虫のようだ。
「ああ……亜美ちゃん、痛い……痛いよ」
 悠司は脂汗を浮かせて喘ぐ。
亜美は彼の苦痛に歪む顔を満足そうに眺めながら、雁首などの敏感な部分を指でさすり、快感と苦痛を同時に与えてゆく。
 この人は……こいつは、私に無い物を当たり前のように持っている。
 だから、憎い。
 故に――いとおしい。
 失ったもの、最初から無かったものへの渇望が亜美を揺り動かしている。
 十数分かけて、彼を決して萎えさせずにじっくりと時間をかけ、
ついに綿棒は片方の先、5ミリほどを残して全て茎の中へ収ってしまった。
「うふふ……先生の尿道のバージンは私がいただきました。どうです。気持ちいいですか?」
 股間に這いつくばるようにして、亜美が顔だけを上げて悠司の顔を見上げる。
 彼女の手はカリの裏側を指先でこすり、綿棒を軽く指で叩いている。
 やがて痛みが薄らいでゆき、体の深い所、今まで感じたことのない場所から強烈で不思議なパルスが発生し、悠司を貫く。
ペニスが跳ね上がり、射精をしたような感覚が断続的に彼を襲うが、しっかりと亜美に握られているので動けない。
 小さく奇妙な声を上げながら、悠司は亜美の責めに耐え続ける。
 十分以上も尿道責めをしてから、亜美は粘液でどろどろになった綿棒をゆっくりと引き抜いた。
「う……はあぁっ!!」
 綿棒が完全に引き抜かれたと同時に亜美がペニスを咥えると、間髪を入れずに射精のトリガーが引かれ、
悠司は口の中に精を放出してしまった。
 何度もペニスが跳ね、どろどろのマグマが亜美の喉を汚す。
 噴出がおさまってからも亜美は咥えたまま離さず、最後にストローでシェイクでも吸うかのように
尿道に残ったザーメンを吸い出し、半勃ち状態のペニスをようやく口から離した。
 背中がぞくぞくする。
 すぐにでも吐き出して口をゆすぎたいという欲求と、
もっと彼の精を味わってから自分の体に取り込みたいという渇きにも似た感情が亜美を揺さぶる。
 左右に揺れる竿を舌先で袋から先端までなぞってから、体を起こした悠司の目の前に顔を持ってゆき、口を開いた。
 頭の中が再び真っ白になり、股間が熱くなってゆく。
「ふなぁ……」
 意味不明の言葉をあげた亜美は、悠司が舌の上に溜まっている精液を見たのを確認してから口を閉じ、
唾と混ぜ合わせながら痺れる苦い液体を味わう。
それから少し顔を上げ、ゆっくりと口の中のものを胃の中へと送り込んでゆく。
 三回も飲み込むと口の中には何も残らない。
それでも唾を溜めて、残った精を洗い流し、悠司に見せつけるようにして喉を鳴らす。
 柔らかくなっていた悠司のペニスが、精飲する少女の姿を見て復活した。
 それを見て亜美は、自分の頭蓋骨が割れたような気がした。
 何か大事な物を、自分は失ってしまったのだ。取り返しのつかない事をしてしまった……。
その一方で喜んでいる自分もいる。まるで心が二つに割れてしまったようだった。
「酷いよ、亜美ちゃん」
 自分の精液を余さず飲み干した、呆然としている少女の目を見ながら悠司は言った。
「気持ち良く……ありませんでした?」
 しばらくして、ようやく亜美は返事を返した。
「痛かった」
「うそですね」
 今度はすぐに言い返した。
「何なら、後ろのバージンでも良かったのですけれど」
「後ろって……あ、アナル?」
「正確にはアヌスですけれど。でも、先生はお尻に慣れていないようでしたので、無理にしても切れて大変でしたから」
「切れるって……」
 ちに点々がついた一文字が彼の脳裏に浮かぶ。
「ん? 『先生は』って、まさか、亜美ちゃんは……したことあるの?」
「ええ。私、後ろも気持ちいいと思いますよ」
 熱で溶けた飴玉のようなうるんだ瞳で、亜美は悠司を見つめる。
「そうか。亜美ちゃん、バージンじゃないんだね」
「残念ですか?」
「うん」
 まだ精液にまみれている唇は、自ら光を放っているかのようにぬらぬらと輝いている。
「では……私が初めて心を捧げる人になってください」
 亜美が少し顔を傾け、唇を求めてきた。
 悠司に近づいてきた顔からは、化粧品の薄い香りと、精液の匂い。そして嗅ぎ慣れない良い匂いが漂ってくる。
 亜美の体臭だった。
 発情した彼女からは、麝香(じゃこう)のような動物的な香り……男を惑わすフェロモンにも似た濃厚な匂いが発散されていた。
 頭がくらくらする。
 さっきまで自分の汚い部分を咥えていた上、たっぷりと精液を出してしまった口とキスをするのには、抵抗があった。
顔を引き、無意識に顔を背ける。
 キスをしてくれないのを感じた亜美は、悠司のペニスを柔らかく握り締め、指を動かした。
「ふぉっ!」
 柔らかく温かい指が少し動いただけで、さっきあれほど放出したはずの精液が勢いよく飛び出して、
彼女の縦長のへそのあたりにべっとりと張りついた。
「先生、まだ、こんなに濃いのが出せるんですね。嬉しい……」
 これだけ出せばとっくに枯れ果ててもいいはずなのに、腹の底にはまだ大量の欲望がたぎり、
噴火を今か今かと待ちわびているようだ。
その証拠に、亜美が先端の割れ目を指でほじくるたびに、少量ではあるが小さな噴火が彼女の身体を汚し続けている。
 ようやく噴出はおさまった頃には、亜美のへその上から秘めた部分にいたるまで、
ヨーグルトでもかかったような大量の精液がへばりついていた。
 その粘液を指ですくい、まずは口に運んだ。
「苦いです」
 と言ったが、彼女の顔は美味な砂糖菓子でも食べたような笑みを浮かべている。
 もしかしたら美味しいのかもしれないという考えが一瞬頭の片隅を駆け抜けたが、
亜美の行動でそんな考えは瞬時にして吹き飛んでしまった。
 亜美は最初は悠司のほっぺたに。
次は目尻から耳の方へ精液にまみれた指を動かし、くびれたウエストから下へ滴り落ちている白濁液を何度も指ですくい取り、
鼻筋やあごまで、歌舞伎役者の隈取りのように化粧をほどこしてゆく。
 たとえ自分の出したものとは言え、顔につけるようなものではない。
すぐにでも洗面所に行って洗い流したかったが、亜美の指が催眠術にでもかけたように動けなかった。
 顔に精液を擦りつけるられるのを、悠司は身動きもせずに見守っている。
 指が胸までなぞり終え、顔についたザーメンが乾き始めると、亜美は指で描いた線を舌で舐め取り始めた。
「くすぐったいな」
「んふ」
 亜美は嬉しそうに鼻を鳴らし、子猫のように小刻みに舌を動かしながら、ていねいに乾いたミルクを舐めとっている。
 今までどんなにセックスをしても、亜美はどこか満たされなかった。
 それなのに、自分を犯す……いや、自分に犯されるようで胸の奥が妖しく熱くなっている。
 期待と嫌悪という逆方向のベクトルを持つ感情が亜美の理性を狂わせている。
 ここまで乱れるのは初めてだった。
 頭の中は、セックスの事で一杯になっている。
血液の流れ、心臓の鼓動、呼吸にいたるまで、全ての生命の営みがセックスの為に亜美をつき動かしているようだ。
 悠司の顔につけたザーメンを舐め終わる頃には、すぐにでも挿入して欲しいという考えで頭の仲が一杯になっていた。
 亜美は黙って体を後ろに倒し、万年布団の上に横たわった。そして悠司の顔をじっと見つめる。
 すぐにでもセックスをしたい。
 しかし、自分の口から言い出す事ができない。
 恥ずかしいからではなく、漠然とした恐怖が彼女の言葉を縛っているのだ。
 悠司の方も迷っていた。
 処女ではないのはわかっている。それどころか、かなり性経験は豊富なように思える。
 だが、例え家庭教師と言えども、教え子に手を出すわけにはいかない。
 それなのに、悠司の中で、何かが引っ掛かっていた。
 いつ頃から教え、いつ家庭教師を辞めたのか、はっきり思い出せないのだ。
 頭の中にもやがかかったような状態で、記憶が定かでない。
 どこが変だとは指摘できないが、確かに何かが狂っている。彼に残った理性が、これ以上亜美に触れるのを拒んだ。
 ところが体を離そうとした悠司は、起き上がった亜美に勢いよく引き寄せられた。
 とんでもない馬鹿力だ。あまりの力の強さに、悠司は一瞬、呼吸困難に陥る。
そのまま唇を吸われ、舌をねじ込まれる。
 迷いが一気に吹き飛んだ。
 据膳食わぬは何とやら。これだけの美少女が自分を求めているのだ。悠司の中から迷いが消えた。
亜美を布団に押し倒し、足の間に体を割って入れる。やや抵抗されたような気がしたが、もう我慢ができない。
 へそに張りつきそうなほど反り返ったペニスを右手でぐいと押し下げ、少女の股間に狙いを定める。
 幾重にも重なりあった淫靡な肉の花から、ひと雫の蜜が、薄墨色のアヌスの方へと流れていった。
先端を花びらにこすりつけると、亜美の方ももどかしげに腰を動かす。
 写真を撮った時が五分咲きならば、今は満開だ。胎内の圧力に負けた媚肉が花びらを押し広げているのだ。
 もう一度狙いを定め直し、何度射精したかも忘れてしまったペニスを、亜美の中へ押し込んだ。
 ぬめやかで桜色の可憐な花弁に、赤黒い杭が射ち込まれてゆく。
 挿入された瞬間、処女ではないのに強烈な痛みが彼女を襲った。

(ああ……頭がぴりぴり痺れる)

 体に押し入ってくる熱い塊は、まるで全身を貫く杭のように亜美の喉元まで突き通されるようだった。
 体が真っ二つに裂けてしまったようだった。
 しばらくの間は、痛みで声も出なかった。
「くっ……か、はぁぁあっ!」
 亜美の口から、小さな吐息が漏れる。
 まるで息ができなかった。肺までペニスで串刺しにされたように、体の中から酸素が押し出されてゆく。
 ゆっくりと時間をかけて、奥の院まで押し込む。
 カリの裏側まで柔らかな肉襞が絡みつき蠢く。
 すぐにでも射精してしまいそうだったが、なんとか耐えられた。脳のしわまで気持ちよさが染み渡ってゆくようだ。
 いや。気持ちいいなんてもんじゃない。極上だ。
これ以上の相手には巡り合えないという確信にも似た想いが彼の心を満たしてゆく。
 悠司は酸素不足の金魚のように、口をはくはくさせて喘いでいる亜美に口付けをして、酸素を送り込む。
 歯を磨いていたっけ? と、場違いな考えを脳裏に浮かべつつ、甘い唾液と絡みついてくる舌を貪った。
歯と歯がぶつかり合う、まるで初心者同士のキスのようだが、これは違う。
 相手の血肉を貪り食らおうとする獣のような口付けだった。
 唾液が口の端からだらだらと流れ落ち、顔の周りを汚してゆく。
不快な感じは全く無い。むしろ、男の唾液が媚薬のように亜美を狂わせてゆく。

(今、私は、自分とセックスしてる……)

 その言葉が持つ矛盾(パラドックス)も、今の彼女には理解できない。
 亜美の中で、何かが大きく壊れた。
 しかし快楽にうち震える今の彼女には、自分が失った物に思いを馳せる余裕など微塵もなかった。
 体を重ねあい、唇を合わせながら二人は一個の生物と化し、体液を振り絞り始めた。
 部屋の中に、押し殺した低い歓喜の声が床を這っていった……。


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