5月8日



PM 6:11 -Nami-





 8つ目の駅の名前は、秋野。

 秋野駅で、私たちは電車を降りた。
 このあたりは海のすぐ近くで、海水浴シーズンになると大そう賑わうのだけれど、今は人通りも少なく、駅前は早くも静かになっている。
 駅から5分ほど歩けば、ルフィの家だ。
 私たちはどちらからともなく手を繋ぎ、点々と街灯の灯った道を歩いた。
「24時間営業のスーパーがあるから、そこで買い物しよう!」
「何を買ってけばいいの?」
「えっと、家のほうに大体揃ってんだ。ないのはニンニクとバナナだなー」
「なんかスゴイ取り合わせね…」
 他愛もない話をしながら、通りを歩く。
 …こういうのって、何か、いいなぁ。
 時間を気にしなくてもいい。
 人目をはばかることもない。
 のんびりのんびり歩いてるだけなんだけど、それがこんなに嬉しい。
 通りの向こうに煌々と輝く建物が見えた。あれが24時間営業のスーパーだ。まるで、コンビニのように自分の存在を強烈にアピールしているようにも見 える。
「買い物買い物ー」
 ルフィは楽しそうに店先に積んであるカゴをとると、先に立って中に入っていった。
 この街の相場は、私の実家がある街の相場と大体同じくらいだ。でも、海が目の前の分、やっぱり魚が安い。それが妙に嬉しくて、こっちに来たばかり の頃は魚ばっかり食べていた記憶がある。…実家じゃ鮭や鰯、秋は秋刀魚ばっかりだったもんね。
 勝手知ったるといった感じでルフィは店内を巡り、次々品物をカゴに放り込んでいく。
 ニンニクとバナナは分かるとして、卵やキャラメルはどうするつもりなのだろう? …まさかカレーに入れ…ないといいなぁ…。
「何か食べたいのあるか?」
 お菓子コーナーでそう言われて、私は両脇の棚に詰まれたスナック菓子に目をやった。
 品揃えが微妙という評判だけれど、お菓子は結構いろいろ取り揃えている。
 銘柄の中に、昔駄菓子屋でいつも買っていたスナックを見つけ、カゴに入れさせて貰った。
「でっかい袋のヤツだとなかなかなくならなくていいんだよな」
 ルフィが言う所の“なかなか”はとても短い。部室でみんなでお菓子を摘んでいるときにルフィがやってくると、さっきまで山盛りだったお菓子が奇術でも かけられたみたいに――ドロン、だ。チョッパーなんていつも被害にあっている。
「あと、カラムーチョとサラミとキャラメルコーンと…」
 次々にカゴに放り込まれていくお菓子に、段々と不安になってきた。
 カ、カレーよね?
 今日の夕飯はお菓子じゃないわよね?
 疑問渦巻く私を尻目に、ルフィは100%オレンジジュースとサイダーをカゴに詰め、颯爽とレジへ向かったのだった。



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