018:異国 -2-




再生できませんでした
「雪の降る日に」By VaLSe様
OLD WOODS HUT URL:http://valse.fromc.com/
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 たどり着いた先は、文字通り「花園」だった。
 とても小さかったが。







 それは屋上庭園だった。
 真白な花の植えられた、20セルト四方の小さな庭園。
「小さいな」
「昔はでかかったんだ」
「お前が小さかったんだろ」
「いや、実際もっと広かったんだ。あっちの屋上も、そっちも、みんなこうだったんだぜ。何で狭くなってんだ…?」
 首を傾げるサンジを尻目に、ゾロは小さな庭園に足を踏み入れた。
 柵らしい柵もない代わりに、ほとんど人の入った形跡もなかった。けれども草花はきちんと手入れされており、雑草も引き抜かれていた。名も知らぬ白い花が、庭園をまるで雪のように覆っている。
「綺麗なもんだな」
 ぽつりと漏らした言葉に、まるで自分が誉められたかのようにサンジが笑った。
「だろ? どうしても来たかったんだよな」
 風に向かって立ち、両腕を広げる。
「こうしてると、雲の上にいるみたいに思えてさ。飛べるような気がしたんだ」
 建物の縁に立ち、両手を風に向かって広げ、まるでそれを掴もうとするかのように握り締める。
 サンジはとても嬉しそうだった。
 強い向かい風に舞い上がる髪もマントも気にすることなく、ただまっすぐ前を見つめて嬉しそうに話す。
「馬鹿みたいにはしゃいで。そこの縁から落っこちそうになったりしてさ。…あの頃は、ガキだったんだなぁ」
 そう呟きながらも、サンジは両腕を閉じる気配はまるで無い。
 幼い頃の事を思い出すと、どうやら人はその時の自分に還るらしい。
 今は金髪でも、青い瞳でもないサンジだったが、ゾロには幼いサンジが同じように両腕を広げてはしゃぐ様子がありありと想像できた。
 きっと、あの明るい金色の髪を強い風に揉みくちゃにされながら、それでも鳥になった自分を想像して大きな声で笑ったのだろう。誰の目も気にすることなく、心から。
「今は違うのかよ」
 少し茶化すようにゾロが言うと、サンジは笑いながら応えた。
「違わねぇな。けど、そう言うテメェも俺と大して変わらねぇだろ」
「違いねぇ」
 ゾロはどしどしとサンジの隣へ行くと、真似て両腕を広げて立った。
 強い風に、一瞬このまま本当に飛び立てそうな錯覚に陥る。けれど、ゾロはもう幼い子どもではない。人間には空を飛ぶことはできないのだと分かっている。それでもこうして手を広げて全身に風を感じていると、自分は幼い子どもではないが、「大人」ではないのだとも思うのだった。
 ――中途半端だな。
 幼い頃は早く大人になりたいと思っていた。けれど、今の自分は果たして大人だろうか。そもそもあの頃思い描いていた「大人」とは、一体どんな生き物だったのだろう。
 ゾロがボーっとそんな事を考えていると、突然背後からドンと背中を押され、目の前の絶壁に向かってつんのめった。
「うをぉ!?」
 何とか踏みとどまり、何事かと振り返ると、サンジがニヤニヤしながら右手を突き出し、左手でゾロのシャツの端を掴むというポーズで構えていた。
「マリモどっきり作戦大成功」
 どちらからともなく吹き出し、やがて腹を抱えて笑い出す。
 笑いすぎたサンジがゴホゴホとむせ、そんなサンジをゾロはまた大いに笑った。
 足元の白い花たちが、それに合わせるように一斉に揺れた。



 ひとしきり笑った後、2人は並んで空を見上げた。
 明るい都市の光で、星はほとんど見えなかったが、夜半の風はあの晩…サンジがゾロに子守歌を唄った晩と同じ匂いがした。
 白い花は微かに甘い香りを漂わせながら、静かに2人の足元で揺れていた。



 異国の夜は、彼らを優しく迎え入れた。
























「お、お、お前ら、何者だ!?」

 年若い少年の声が、風を裂いて投げかけられるまでは。



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