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制作者:真アルティメットアーマーさん #3 Meeting / 会議 エックスは目の前で両腕を交差させると、静かに一言呟いた。彼の体は光に包まれ、直後に濃紺色の髪とジャンパーを着用した姿に戻った。 そして、真紅の鎧を身に纏ったまま、地面に腰を下ろしながら黙りこくってしまっているゼロに声をかけた。 「とにかく、報告と事後処理をしよう。他のことはこれからだ」 「……ああ……」 頷くはものの、ゼロは立ち上がらず、そのまま座り込んでいた。 「……ゼロ?」 「あ……ああ……そうだな……」 おぼつきながらながらもようやく反応したゼロ。 エックス同様、ゼロは黒いロングコートの姿に戻った。 エックスはジャンパーの小窓から携帯電話を取り出しながら、ゼロの顔をじっと見つめていた。 (ゼロの奴……何かへんだな……) そんなことを考えていると、エックスの視線が自分に注がれていることに気づいたゼロが、 「おい! 何、人の顔をじろじろ見てんだ! さっさと連絡しろ!」 と、どついてきた。エックスはしぶしぶと頷くと、携帯電話のボタンを押し始めた。 そのあとで、ふと足元に目を落としたゼロに、ひとつのアクセサリーが目に入った。 ‘G’を象った文字をぶら下げたそれは、先程死に絶えたクロウ=マグナスが身に着けていた物だった。 「これは……?」 それを拾い上げ、象られた‘G’の文字を訝しげな表情でゼロは見つめていた。 ネオ・イレギュラーハンターベース。 日本の首都、東京に存在するもので、数年前のシグマ大戦・ユーラシア墜落事件等の後にと今までに二度以上立て直しているイレギュラーハンターの総本部である。 エックスとゼロの二人の姿はハンター司令部の部屋にあった。その他にも、二人程の姿があった。 一人はケイン。もう一人の黒のスーツに白色のワイシャツとネクタイを身に着けている二十代くらいの茶髪の青年の名はシグナス=ランカスター。彼は引退したケインに代わってイレギュラーハンターの指揮を執っている総指揮官である。 「一週間前に起きたあの事件。上層部はあの事件をたいしたことだとは思っていないらしいな」 ゼロがシグナスに訊いた。 「その通りだ。事件自体がそれ程大きいものではないらしいからな、本部にあるお前達の部隊しか着手させていないのだ。他の部隊の者達には、現在の任務を優先させろとの直接命令があったそうだ……」 シグナスがゼロに言った。 「成る程。相変わらず気にいらねぇ、年寄り達だ」 「仕方ないじゃろ? 人間年とれば頑固になるというし。わしやシグナスにも意見をいう権利がないからのぉ」 よくいうぜ……人をさんざん脅迫しやがって……お前も奴等と同じだ、とゼロは言いたかったが口喧嘩では負けることが目に見えているので、口をはさんだケインに対し黙っていた。 「それにしても、お前達の部隊だけでは片付けられないのか?」 シグナスがエックスとゼロを見渡した。 「現段階じゃ何もわからん。だが、その内そうなるかもな……そう簡単には片付けることは無理だな」 エックスは静かにゼロの話を聞いていた。 ゼロと一緒に闘ったのは事実だが、クロウ=マグナスと名乗る男が何故あの場に現れたのか、まだ何もわかっていなかったのである。 「……まさかシグマじゃないだろうな……前にシグマが復活した時に似たような手口があったわけだし……」 エックスは思いついたことを口に出した。 「……いや、シグマとの関連はないだろう……多分ありえん」 ゼロが断言すると、シグナスが眉間にしわを寄せた。 「では一体誰が……」 「その前にひとつ訊きたいことがある。じじい。こいつが何だかわかるか?」 ゼロはズボンのポケットからアクセサリーを取り出すと、ケインの前にぶら下げた。 「……いや、わからんな。これはどうしたんじゃ?」 ケインがゼロに問う。 「一週間前の事件の時に俺とエックスが闘った奴が持っていたんだ。クロウ=マグナスがな」 「ちょっと見せてくれないか?」 口を挟んだシグナスは、アクセサリーを手に取ると‘G’を象った文字の部分をじっと見た。 「G……グリーブか」 シグナスが呟いた。 「グリーブ? なんじゃそりゃ?」 ケインとエックスとゼロは、聞いたことのない言葉に顔を見合わせた。 「前に耳にしたことがあるんですが、どうやらイレギュラー認定を下され、イレギュラーハンターに恨みを持っている者達が集まっている小組織だったと思います。ただし、数年前のことですけど」 シグナスがケインに説明しているのをエックスとゼロも聞いていた。聞き終わったエックスがゼロに尋ねる。 「そういえば、クロウ=マグナスとか云う奴。昔、イレギュラー認定を下されていたんだろ?」 「そうか……。‘グリーブ’が関係していたのか……じゃぁ……あいつも……」 ゼロが低く呟く。 「ゼロ。お前は何を知っとるんじゃ?」 ケインの問いにより、ゼロは両腕を組みながらケインの方へと顔を向け、口を開く。 「おい、じじい。 あんたは八年前の事件を覚えているか?」 (八年前?) エックスは記憶を探った。だが八年前といえば、シグマ大戦が始まる一年も前の話だ。シグマ大戦が始まる半年程前にイレギュラーハンターに入隊した自分には知らぬ話だ。 レプリフォース革命事件が終結してから職についたシグナスにも知っているはずがない。 エックスはケインの口が開くのを待っていたが、だが、そのケインも思い出せないようだ。 「……すまん。忘れてしもうたらしい」 ケインが申し訳なさそうにゼロに謝った。 ゼロは溜息をつくと、 「ったく、いくら昔だからだってイレギュラーハンター内部で起きた事件くらい覚えとけよ。これだから年寄りは困るぜ」 するとケインが額にしわを寄せ、「わしゃ、年寄りなんじゃ! 仕方ないじゃろう!」と悪態ついた。 「……カノン=エドワースを覚えているか?」 誰かの名だろうか、ゼロの話を聞いたケインの表情がやや、蒼ざめはじめた。そして顔をしかめながら考え込んだ。 「カノン=エドワース……あやつか! あの事件じゃな!」 やっと思い出したか……このくそじじいが、と言いたげなゼロの横でケインは興奮気味に言った。 「そうか……生きておったとは……しかも‘グリーブ’に所属しておるとは……これはかなり厄介じゃな」 ケインは厳しそうに表情をしかめる。 エックスとシグナスは完全に蚊帳の外である。どちらにしろ、後でゼロから話してもらえるだろうと思い、エックスは何も言わずに黙っていた。 「じじい、あんたに‘グリーブ’のアジトが何処にあるか調べられるか?」 「う……うむ。しかしわしだけで出来るかどうか」 自信なさげにいうケインにゼロは眉を吊り上げた。 「必要なら上層部にコネなりなんなり出させてCIAにも調査協力を要請させろ! 奴はもう動き出している。時間はないんだ!!」 感情的になって怒鳴るゼロにエックス、ケイン、シグナスは体を振るわせた。 「どうしてあんなに感情的になったんだ? 何だか最近変だぞ」 ハンターベースにある建物の屋上でゼロは寝ていた。となりにエックスが座り込み、、晴れた冬空を見上げていた。 「事態は一刻を争われる。イレギュラーハンターとして当然のことじゃねーか」 ゼロは当たり前のことの様に言った。 「……今回の事件がか?」 「……多分な……」 「そうか……」 エックスは頷く。それからふと思い出した様に、ゼロに訊ねた。 「なぁ。八年前の事件って何だ? それに、カノン=エドワースって誰なんだ?」 「そういやお前にゃ話してなかったよな……」 ゼロは一息つくと、エックスの問いに答える為に口を開いた。 「……八年程前、イレギュラーハンターだった一人の男があろうことか、イレギュラー認定を懸けられた。ハンター上層部の誤認でな……無実の罪ってやつさ。だがその男は、自分をイレギュラーとして抹殺する為に来たハンター達を惨殺し……逃走した……。もちろんそれで今度は正式なイレギュラー認定が下された……いくら無実だったからといって仲間を惨殺する奴に同情する奴はいなかった。その男の名は……カノン=エドワースと云って……俺の数少ない友だったんだ……」 声を震わせながらゼロは話す。エックスは静かに聞いていた。 「そして今回起きた事件……それは‘グリーブ’と云う組織が関係している……クロウ=マグナスが死際にいって言っていただろ? 俺のダチもその組織にいるとな……。つまり、奴がいるんだ。あいつには、もう罪を重ねさせるわけにはいかない……カーネルの様にさせない為にも、ただ一人の友として俺が罪を償わせなきゃいけねぇんだ」 ゼロが熱心に語る。エックスは目を閉じながらじっくりと話を聞く。 「こいつはな、たった一度のチャンスなんだ。最初で最後の、再び話せるな!」 「……わかったよ。好きにしろよ」 そこまで言われて断わるわけにはいかない。溜息を交えながらエックスは呟いた。 「あっ、エックス隊長」 第十七精鋭部隊の部隊室に戻ったエックスに、一人の隊員がエックスを呼んだ。彼の名はカイル=フォートン。部隊の中でも数少ないA級ハンターである。 「何だ? カイル」 ソファーに腰を下ろしながら、エックスは用件を訊いた。 「Drケインからの連絡なんですけど、CIAに協力を要請したところ、向こう側が容認してくださったとのことです」 普段は口うるさいただの老人だが、こういうことは舌を巻くほど早い。さすがケインである。 「そうか。Drケインに礼を伝えといてくれ」 「わかりました」 カイルは頷くと部屋を出て行った。 「‘グリーブ’……か……」 眉間に皺を寄せながら、一言呟いた。 | ||
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