<< top << text << novel |
制作者:真アルティメットアーマーさん #2 Matter / 事件 エックスとゼロ、そしてクリスは爆心地へと走っていた。 (この爆発は爆薬によるものじゃない。エネルギーの衝撃波によるものだ!) 爆心地の周辺から爆発の際に生じる薬臭がしなかったことことにエックスは気づいていた。 「事故か事件か……」 ゼロが後方で走りながら呟いた。 「事故でしょうか?」 クリスがエックスに訊く。 「さあな。とにかく急ぐぞ!」 そこは荒れ地と化していた。爆発の影響で倒れた建物は原型を留めてなく、血が飛び散った跡があった。無残にも頭・腕・足等の肉片が散らばっていた。おそらく、爆発発生時に逃げ遅れ、まきこまれてしまったのだろう。 まるで地獄絵図の様な光景だった。常人が目にしたら失神してしまうだろう。しかし彼等はイレギュラーハンター。今までの大戦ではこのようなことは日常茶飯事だった。しかし、それでいても気分が悪くならずにはいられない。 エックスはクリスに、 「クリス! 君はこの周辺で爆発に巻き込まれた人達の中で生存者がいたら救出してくれ!」 「わかりました!!」 クリスは頷くとエックスとゼロから離れていった。 「酷いな……」 エックスは辺りを見渡しながら呟いた。 「こりゃ、事故とは云えないな……一体誰がこんなことを……」 ゼロが目を細めた。 その直後、二つの刃状のエネルギーの塊が自分達へと放たれた。エックスとゼロはそれぞれを左右に跳んで避けた。エネルギーの塊が地面に衝突し、大爆発が起こった。 気付くのに一瞬でも遅れていたら、多大な傷を負っていただろう。 「何者だ!」 ゼロが刃状のエネルギーが放たれた場所へと鋭い視線を向けた。自分達以外にこの場に誰かがいる。 やがて、爆発の影響によって漂っていた煙から一つの影が現れた。影の主がエックスとゼロに訪ねてきた。 「貴様等はイレギュラーハンターか?」 「そうだ」 ゼロは冷静に返答した。 「なるほど。わざわざ出向う手間が省けたぜ。ここで暴れているだけでそっちから来てくれるとはな……」 「ここでこんなことをしていたのはお前かっ?」 エックスは多くの人々を殺されて感情的になっているのか、語尾が高まっていた。 相手の姿を肉眼で確認できる程度まで、煙が薄くなってきていた。そして煙が消えた時、一人の男の姿があった。赤く短い髪を逆立たせた筋肉質の男だった。赤黒い鎧を身に着け、右手に刃渡りがゼロのゼットビームセイバー以上あるサーベル型の大型ビームセイバーを手にしていた。刃の色が橙色に輝いている。男の左目の上から下まで深くえぐれた様な傷跡があった。 「そうだと言ったらどうする?」 男が挑発するように返す。 「貴様っ!」 エックスは緑色に輝く瞳で男を睨む。だがゼロに、落ち着け、と止められた。ゼロが男の顔を見た。 「何処かで見た顔だと思っていたが、貴様は昔、大量殺人を犯し、イレギュラー認定を受けて逃亡した……」 ゼロは一息つくと、口を開いた。 「……クロウ=マグナスだな?」 男……クロウ=マグナスは口元に笑みを浮かべた。 「俺のことを知っているとは光栄だな。シグマが反乱を起こす前のことだから忘れちまっていると思ったんだがな」 「あいにくだがな。貴様のイレギュラー認定は、今も継続中なんだよ」 ゼロが返すと、クロウは首に下げている‘G’を象ったアクセサリーをちゃらちゃらと鳴らした。 「俺もあんた等を知っているぜ。金髪のあんたは世界最強のイレギュラーハンター・紅き鬼神、ゼロ=オメガだろ? それからそこにいる濃紺色の髪のあんたは、蒼き救世主とか云われているロックマンエックス。どうだ? 当っているだろ?」 クロウが得意そうに言う。 「貴様の目的は何だっ」 エックスがクロウに尋問する。 「俺はイレギュラーハンターによって長い間、逃亡するはめになっちまったんだ! あんた達に直接恨みはないが、俺の復讐という目的上、邪魔すんなら殺らせてもらうぜ!!」 クロウのビームセイバーから橙色に輝く刃状の光がエックスとゼロのそれぞれに向けて放たれた。二人は再度跳躍しそれを避ける。光が炸裂し、その衝撃波が降りかかる中でエックスは両腕を翳し、一気に叫んだ。 「鎧化(アムド)!」 エックスの身体から服越しに輝きが生じ、次の瞬間、彼は蒼い鎧に身を包んでいた。 ‘鎧化(アムド)’。それは脳内にある戦闘時の鎧のデータを具現化し、身に纏うことが出来る術である。見ると、ゼロの方でも同じ様にして真紅の鎧を身に纏っていた。 空中で左腕を前に差し出すエックス。直後に左腕の装甲がバスターへと変形し銃口から数発の光弾が撃ちだされ、クロウへと襲い掛かっていく。しかしクロウはビームセイバーもろとも自分を回転させ、光弾を全て跳ね返した。光弾は空中にいるエックスの左右の胴を掠り跳んでいった。 (やはりそうか。あんな大型のビームセイバーを使っているってことは、防御も計算してるってことか……) 地上に着地と同時に左腕のバスター状態を解除しながら、エックスは苦苦しげに舌打ちする。 エックスの攻撃によって、クロウが回転返しをしている隙を突き、ゼロがクロウの頭上へと移動した。この回転のせいで周りにしかクロウの眼が向けられていない隙を上手くついたのだ。ゼロ専用のビームセイバー、ゼットビームセイバーを抜き打ちざま、クロウの頭上目掛けて斬りかかった。すると、瞬時に回転を止め、ビームセイバーでゼロの攻撃を受け止めたのだ。予想外の展開にゼロは多少驚いた。 クロウのビームセイバーが輝きはじめ、次の瞬間、ビームセイバーから刃状のエネルギー波を放った。 (何っ!?) エネルギー波を受け止められず、真紅の鎧に刃状の切り傷が刻み込まれた。 「ぐあっ!」 思わずのけぞるゼロだが、精神を総動員し、怯むのを抑えた。 「死ねぇぇい!」 クロウがゼロの方へとビームセイバーを一閃した。橙色の閃光がゼロの体を横閃する。 「くっ……」 激痛にゼロは呻いた。剣閃は深くなかったが、それでもゼロの真紅の鎧を横一文字に開き、血が飛び散った。後方へとのけぞったゼロにビームセイバーを振り上げ、クロウはゼロの上半身と下半身を切断しようとした。 「させるかぁ!」 エックスの叫び声と共に、右腕を変形したバスターから次々と光弾が放たれ、大半がクロウに直撃した。 「ぐぉぁっ」 クロウは思わず唸った。さすがに振りかぶった状態から態勢を立て直すのは、無理だったようである。クロウはエックスの方へと、 「邪魔するなぁぁぁ!!」 と刃状のエネルギー弾を大量に放った。それは一気にエックスへと襲い掛かった。一発……二発……次々とエックスに直撃した。その度に鎧に傷が刻み込まれ、血が飛び散る。 「くそっ……こんなものぉぉ!!」 エックスは避けようとはせず、あえて攻撃の中に突っ込んだ。 「馬鹿めっ! 自分から刻まれに行きやがった」 クロウは不敵な笑みを浮かべた。 「……そうはいくかぁ!」 怒鳴り声と共にエックスが姿を現した。 「何!!? 貴様、今ので殺られたはずじゃ……」 クロウは驚愕していた。先の攻撃の嵐に突っ込み、一直線に自分の元へと走り抜けるとは、思いもしなかったのだろう。 エックスは走りながら、 「ゼロ! いくぞ!」 「おう!」 ゼロは頷くと、クロウへとビームセイバーを振り下ろした。刃状のエネルギー弾がクロウへと突っ込む。そして反対方向からはエックスがバスターを連射した。クロウは前方と後方から一斉攻撃を受け、なす術も無く爆煙に包まれた。 「ハァ……ハァ……」 エックスはバスターを解除して、息をついていた。ゼロは立ち上がって、ビームセイバーを構えて煙の方を見ていた。 煙が無くなると立ち上がることも出来ずに、座り込んでしまっているクロウの姿があった。 鎧は一斉攻撃によって、ボロボロになっていた。 「……ひとつ教えろ。貴様は何故、俺の攻撃の嵐を軽い傷だけで抜けられた?」 クロウに訊かれたエックスは、一息つくとしゃべりはじめた。 「……別に何もしちゃいないさ。ただ直進しただけさ」 「何……」 「下手に避けて傷を負うより、何も考えずに突っ込んだだけさ。その結果、受ける傷が軽くて済んだんだけどな」 エックスの説明を聞くとクロウは、溜息をついた。 「フ……そんなことで俺が負けちまうなんて、ざまぁねぇな」 ゼロは、右腕に持っていたビームセイバーをクロウの顔へと突きつけた。 「これでお前に闘うだけの力は残されていまい。おとなしくお縄につくんだな」 「そうだな。ちゃんと決りはつけないとな……」 クロウの意外な言葉にエックスは驚きながらも、立たせるために腕を貸そうとした。 だが、クロウは自分のビームセイバーを手に取ると、自分の胸へと突き刺した。 「ぐう……ぐお……」 ビームセイバーが鎧を突き抜け肉体を貫いた。その途端、血がものすごい勢いで吹き出た。その光景をエックスとゼロは間の辺りにしながら驚愕していた。クロウが二人を見上げながら、口を開いた。 「……わ……わからない……って顔してる……な……ゴホッ」 口から血を吐きながら続ける。 「あ……後処理……だよ……俺達の契約は……そういう……き……まり……に……なっている……から……な」 「契約……?」 ゼロが訊き返す。 「イレギュ……ラー……ハンタ……に恨みを……持っている者で……契約を……しているん……だ」 「恨みだと? そいつらは!?」 「残念だが……教える……わけにゃ……いかな……い……そういや……アンタのダチも……いるぜ……」 その言葉を聞いた途端、ゼロの顔色が変わった。 「そいつは……まさかアイツか!?」 クロウは笑みを浮かべた。 「奴は……あんたに……会いたがってる……ぜ」 クロウの声が小さくなっていき、息が切れた。ゼロはクロウをゆさぶり、大声で叫んだ。 「おい! アイツは今、どこにいるんだ!? まだ死ぬんじゃねぇ!! 答えろ!」 「おい! ゼロ止めろ!」 エックスがゼロを押さえつけた。 ゼロは掴んでいた肩を離すとその場に座り込んだ。 ゼロの脳裏には八年前に自分の前から姿を消した男が映っていた。自分にとって数少ない友人のある男の……。 (お前は生きていたのか……) ゼロは、今朝見た夢を思い出さずにはいられなかった……。 | ||
制作者コメント 管理人コメント |
<< top << text << novel | << back next >> |