<緋色の猫>
「原石…だな」
「えっ…?」
「ちゃんと加工すれば綺麗に光るって事だよ」
「……嘘を、言わないで」
部屋に入ってきた仲介人が、値踏みするように私を見た。
その手には、黒くて頑丈そうなケースを抱えている。
「あいにくお世辞を言うような人間じゃないんだ、僕は。
それに…一応、本業では宝石なんかを扱ってるからね。目は肥えてるんだ。
…そうだな、ガーネットか…いや、ルビーだな。髪もまとめたほうがいい」
私を見ながら、自称宝石商は黒いケースを開ける。
その中には色も大きさも少しずつ違うたくさんの宝石が詰められていた。
いくつか箱から取り出して眺めてから、その男は赤くて大きい石を選び出した。
「これが似合う。ちょっとまぶしいけど我慢して」
「えっ…?」
仲介人が私に向けて片手を挙げると、その指にはめられていた指輪が急に光った。
光はそのまま私を包む。まぶしいくらいだった。
「あ…」
光が消えた後、鏡の向こうにいたのは私のようでいて私でないような存在だった。
露出の多い、白い絹のドレス。
綺麗に結われた髪に、銀色の髪止めがついている。
少し歩きにくいけれど…ヒールのついた銀色の靴。
それから胸元に、さっき男が選んだ赤い石をあしらった、ネックレス。
あまりにも…私らしくなくて。
思わずうつむくと、仲介人が声をかけてきた。
「上出来だね。…そろそろ行こうか、競りが始まる」
「うえっ!?こんな狭いトコにこんなデカい奴置いとくなよ〜…。」
アレクが文句を言うのも無理はない。
3人並んで歩いたらそれだけで一杯になるような狭い通路を完全に封鎖するような巨大な獣が
鋭い目でクリス達3人を睨んでいるのだ。
「なんていうか…俺、こんな感じのヤツ、ノルダで見た事ある気がするんだけど…」
「……………あっ」
隙を見せずにナイフを構えながら、クリスがぼそっとつぶやいた。
クリスとアレクに守られるようにして立ちながらしばらく考え、エストスはようやくそれがなんであるかを思いだした。
赤い巨体。
首の数が普通の生き物より多い。
いかにも獰猛そうな目つき………。
「あーーーっ!!アップルちゃん!」
「グルルルル……」
アレクが叫んだのに呼応するように、巨大アップルちゃんもどきがうなり声を上げた。
そして否応無しに戦闘体勢へと突入する。
「俺、ノルダが無事かどうか心配なんだけど……」
「同感だ」
赤い目のエストスがため息混じりに返すと同時に、巨大アップルちゃんもどきとの戦闘が始まった。
Back?
本当は頑張ってジェラを飾りたかったんです。
だけどわたしの文章力ではコレが限界で…(汗)
それから後半部分は今回とっても書きたかった場所のひとつです。
いや、気になってたんですよ…あの依頼をクリアした時から。
アップルちゃんが育ったらどうなっちゃうんだろう…って。ちょっと怖いです。(笑