<緋色の猫>


「しかし…妙だな」
「どうしたの?ウルグ。」


見張りという見張りをことごとく蹴散らして進みながら、ウルグが疑問を口にした。
通ってきた道には網に絡まったり麻痺したり気絶したりした人間がごろごろ転がっている。
逃がしてはいけない、しかし連れて行くには人数が多すぎる。
ならば動けなくする以外に方法はないのだが、やはりその光景は凄惨だったりする。


「何故ブラック・レインはわざわざ我々を正面から突入させたのだ?
 クリスとアレクが一緒にいる時点で裏口を固めるような隠密行動には向かない事くらい、
 承知しているはずだが」
「そうね…エストスはともかく、あの二人じゃ見つけてくださいって言ってるようなものだわ」
「え、えっ、み、見つかっちゃうの!?大丈夫かなぁ〜、みんな…」
「大丈夫よチェグナス。ファウストだってついてるんだから」
「そ、そうだよね……多分。」


「おい、いたぞ!」
「なんだ、犬と女と…アイツ、目が見えないんじゃないか?」
「いや、武器を持ってるかもしれん、油断するな。」
「心配いらねえって、2人と1匹くらい、ちょろいちょろい…」


曲がり角から飛び出してきた男3人を見て、ウルグがため息をついた。
「その慢心が身を滅ぼすのだ」…とでも説教したくなったのだろうか。
尽きない敵に苦笑を浮かべ、ニールが声をかける。


「貴方がたに償いや真っ当に生きる事を説いても……おそらく、時間の無駄でしょう。
 痛みによって初めて気付く事も、少なからずありますし…ね」
「なんだと、意味わかんねえ事ほざきやがってよ!」


言葉の意味が分からずとも、馬鹿にされていた事は分かったのか。
3人の中で一番若く、体格のいい男がニールに向かって突き進んだ。
それにならうようにして他の二人もそれぞれウルグ、シャイアに向かっていく。

…無論、その後どうなったか確かめるまでもないのだが。


「……ふぅ。早くアレク達と合流できるといいわね」
「ええ…少し、急ぎましょうか」


ぐったりとのびてしまった男達を尻目に、3人はさして疲れた様子も見せずに進んでいく。








「ふぃ〜、死ぬかと思ったぜ」
「…はぁっ…、あ、アレクがっ、回復、しないからだろっ」
「悪りぃ悪りぃ。エストスがいるからいいや〜、とか思ってたんだけどさ、
 そういや戦ってたの、ファウストだもんな〜」
「ごっ、ごめんねクリス!今、回復するから……」
「あ、ありがとう、エストス…っ」


氷河に削られでもしたような大きな傷が壁のあちこちに増えている。
焼け焦げた跡、巨大で鋭い爪が食い込んだようなへこみもかなりの数が確認できる。
…まさしく、死闘とでもいうようなものだった。


「おそらく最初はもっと小さかったのだろう。だが巨大化して手がつけられなくなった。
 あいつはそれを知っていて俺達を裏に回らせた…ということだろうな」
「ちっ、レインの奴〜、繊細なこの俺に肉体労働させるなんて〜っ!」
「(よく言うよ、アレク…。)」


傷の手当てと体勢の立て直しを終えた3人は、迷う事なく通路の奥へと進んでいく。
しかし程なくして出くわした小部屋に入った途端、突然の変調が彼らを襲った。


Back?

Next?


またしても暴力全開…一体どうしたんでしょう。いつものあの人らしくない(笑)
なんだか進む速度が遅くて…(汗)ジェラが売られる前にたどりつけるのかしらこの人たち…。
まだもう少し続きます。見守ってやってください♪

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