<緋色の猫>


「会員証を見せてくれ」
「…会員証?私たちがそのようなものを持っていると思うか?」
「会員じゃない…?な、何者だ、お前たち!
 用のない奴はさっさと帰れっ!」


当たり前と言えば当たり前の展開。
一行は入り口に差し掛かった時点で二人の門番と口論になった。


「密売組織はこの奥だな?」
「お、おいっ、犬が喋ったぞ…っ」
「密売組織はこの奥か、と聞いているんだ」


有無を言わせぬウルグの声にこれ以上ごまかしきれないと思ったのか、二人は素早くナイフを取り出した。
素人でない事は確かだが、長い事共闘を続けてきた3人の前ではほんの少し訓練しただけの
ナイフ使いが二人では、大した脅威にはならない。


「さっさと帰らねぇと、痛い目見るぞっ……!!」
「あら…私たちと戦うつもり?」
「なっ…!!こ、この女、銃持ってやがる!」


シャイアがゆっくりと銃をかまえ、静かにたずねた。
見張りの男達はシャイアの動向を警戒しながらも…戦わないつもりはないらしく、
機敏に銃口から逃れて両脇にいたウルグとニールに向かってナイフを振りかざした。
そして、勢いよく切りつけようとして………。


「………ふぅ。」
「畜生!出せ!出せーっ!!」


あっという間の出来事だった。
まず始めにウルグに向かっていった男が顔面を派手に引っかかれてのたうちまわる。
ほぼ同時に、もうひとりの男は機敏なニールに背後を取られ、あっけなく蹴り倒されていた。
シャイアがその瞬間を逃すはずもなく。
いつもはモンスターに向けられるはずの捕獲弾が火を吹き、網に絡め取られた男二人が
こうして虚しくわめきちらしている、という次第だ。


「貴方達は運がいい。…戦う前に、気絶するだけで済むのですよ。
 痛みも、極力抑えてあげましょう…貴方がたは単なる見張り、ですから」
「き、気絶っ!?ちょ、ちょっと待ってくれ…う、動けない相手に暴力なんて、卑怯な…」
「卑怯、ですか?罪のない女性を売買することと比べても…?」
「ひっ!」


それまでずっと目を閉じていたニールがほんの少し目を開いて怒りを露わにすると、
意外に根性のなかった見張りたちはすっかり怯えてしまった。


「ウルグ、シャイアさん、先に進んでいてください。
 彼らに眠ってもらったら、私もすぐ追いつきますので」
「了解した」


「ぎゃーーーーーっ!!」


数秒後、「痛みを抑える」という言葉からは程遠い二つの悲鳴がウルグとシャイアの耳に届いた。







それをさかのぼる事数時間。
「彼」は囮の家を訪れる前にある場所に立ち寄っていた。


「…仕事はいいのか」
「休憩中だ。ニールのような事を言うな」
「……」


最も一緒にされたくない人物の名を挙げられて、レインは盛大に顔をしかめた。
自分よりも年若い銀髪のエルフは、肩をすくめて振り向く。


「それで、用件は何だ。わざわざアカデミーまで出向くくらいだ、助けが必要なんだろう?」


助け、という単語に不快そうな表情を示したものの、レインは別段訂正する事もなく続けた。


「今夜、ベガスの人身売買組織を潰す。
 依頼主の要望で皆殺しにするわけにも行かなくてな。組織の奴らの処分を任せたい」
「人身売買か。仮にヴァンの人間も被害にあっているのだとしたら放置は出来ない。
 だがベガスはヴァンの領外だ。勝手に兵士を乗り込ませるわけにもいかないだろう。」


冷静に答える国務大臣に、賞金首が告げた。


「心配するな。依頼主であるベガス領主から犯罪者を引き渡された事にすればいい」
「そうか…ヴァンが関わる大義名分は用意済み、ってことか。
 いいだろう…、セレエにかけあってくる」
「実行は真夜中だ。遅れるな」


用件だけ告げて飛び去る賞金首を見送りながら、
すっかり正義の味方に染まっているじゃないか、とヴァーシスがつぶやいた事を言われた本人は知らない。


Back?

Next?


頑張ってます、レイン。あっちこっち飛び回って仲間を集めたり人を攫ったり♪
挙句「正義の味方」にされてたりするんですが…(笑)
そしてあれだけ書かない書かないと言っていたにもかかわらずやっぱりちょっと活躍してしまう神父さん。
趣味全開ですいませんー(笑)

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