<緋色の猫>


「ああ…言っておくけど僕はレイン側の人間だよ。
 何かあったら僕が君を守る手はずになってるから、安心してくれて構わないよ。
 もっとも…あのレインが見込んだ相手なら、自衛の手段くらい持っているんだろうけど」


金髪の男が立ち止まって、廊下の途中にあるドアを開けた。
豪華な装飾とシャンデリアの小部屋には、白いドレスが置かれていた。


「じゃあ、あれに着替えて。終わったら僕が似合う宝石を見繕ってあげるからすぐに出てくる事。いいね?」


白のドレスなんて着られない、そう抗議する前に私は部屋の中に押し込められていた。
3分で出て来なかったら部屋に押し入るよ、というさっきの男の脅し付きで。


「………」


ため息が、こぼれた。
ロマシアにいた時から、真っ当に生きる事なんてあきらめていた。
ロマシアがなくなってからもそんな事を望むつもりはなかった。
死に場所を探して…でも、大きくて優しい生き物に、命を助けられて。
これからは平穏に暮らせるかもしれないと、少しだけ、夢を見ていたのに。

望みは、絶たれた。
世界一の賞金首と呼ばれる、あの男の手で。

…私はこれから、誰とも知れない金持ちの男に、この体を売り飛ばされるらしい。
いくらなんでも…ため息くらい、つきたくなった。


「そろそろ準備できたかな?」


ドアの向こうから仲介人らしきさっきの男の声がする。
私はもう一度だけ諦めをこめてため息をつくと、似合わないドレスに袖を通した。







「…エストス、大丈夫?」
「う、うん…大丈夫だよ。ちょっとだけ、怖いけど…。」
「任せとけって〜♪俺様だってついてるし、なによりエストスには愛しの王子様がいるだろ〜?」
「お、お、王子様って…あ、アレクっ!!」
「えっ……そ、そうだね…。アレクもクリスもいるし、ファウストだって…」
「そ、そうだよなっ…(俺よりファウストの方が頼りになるか…で、でもっ…まだ俺にだってチャンスは…!)」


血の匂いのする階段を降りると、そこはクリスがレインと一戦を交えた「裏の」闘技場だった。
レインに指示されたとおりに入口とは正反対の壁を丁寧に探ると、はたしてそこに隠し扉があった。


「おっ、さっすが俺♪トレジャーハンターのアレク様にはこんなもん隠してないのと同じだぜっ!
 …さ、行くぜ〜♪」


隠し扉を3人がくぐった瞬間、がしゃりと重い音がした。
振り返ると案の定、ドアがぴったりと閉じている。


「おいおいおいおい、ここってただのアジトへの通路じゃねぇのかよ〜?」
「どうやら…日頃は使われていない裏口のようだな。一部の人間だけが緊急時に使うのだろう。
 それも…仲間の誰かを犠牲にしても構わないほど切迫した時に限って、な」
「ファウスト…どういう意味だ?」


少女の顔をした【魔族】が、進行方向をまっすぐ指差した。その口元には好戦的な笑みが浮かんでいる。


「来るぞ…血に飢えた獣が、餌を求めて」


Back?

Next?


さて、もうお気付きの方も多いでしょうが、仲介人の彼…わたしのオリジナルキャラではありません。
ちゃんと本編に出演しているあの人です♪
レイン偏重ってこの間書いたばかりなんですがむしろ彼偏重っぽいですよね(笑)
それから日頃報われない可哀相な主人公。
今回は見せ場もある予定(あくまで予定)だから頑張れっ♪

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!