「大地よ…傷つき苦しむものへ…力を与えたまえ…」
レオンから発された光が、クララとドロップを包み、傷を癒した。程なく一人と一匹は、頬を赤く染め、傷一つない事を互いに喜び合った。レオンは自身の火傷も瞬時に治した。そこへドロップがすり寄ってきた。
『キュー♪(レオン、大好き♪)』
「調子いいぜ、ドロップ!」
「ありがとう。レオン…さん」
クララもレオンに深く頭を下げた。レオンはクララの側に立ち、破損した柱を指差した。
「元気になってよかったな、クララ!それよりさ、あの柱…直せるか?」
クララは眼鏡のフレームを上げて、柱を凝視した。
「直せると思います。ただ、私一人では少し難しいです…え?」
レオンはクララの右手を、自身の左手で握った。クララは思わぬ展開に唖然とした。
「じゃ、一緒にやろうぜ、クララ!」
(て、手を繋ぐんですか…ええと…)
「え?だってこうした方が、力が二倍になるじゃん?クララ、魔法教えてくれよ」
クララは左胸に自身の左手を当てて、レオンを見上げた。
「【時よ。止まりし時よ。その歩みを再び刻め】です。レオンさんは右胸に右手を当てて下さい。そして、一緒に唱なえましょう…行きます」
二人は繋いだ手を柱に向け、目を閉じて詠唱した。
『時よ。止まりし時よ。その歩みを再び刻め―』
レオンのテノールと、クララのソプラノの織り成す詠唱がオレンジの帯となり、柱を包み、見事に修復した。同時に辺りは夕暮れと化した。二人は箒に乗り、アカデミーへ舞い戻った。
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