暗く、鬱蒼と茂った森。月は雲に隠れ、あたかもレオンの父が非業の最期を遂げたときの空のようだった。
「フフフフフ…ここも随分と略奪の限りを尽くしたな。そろそろ移動をするかな」
そうつぶやいた男は真っ黒な衣装に身を包み真っ黒なフードで顔を隠している。邪悪な、ギラギラとした鋭い眼光が不気味だ。
彼もかつては人々を幸福にするべく魔法力を身につけたはずなのに、この男はいつ悪魔に魂を売ったのだろう。持てる力を悪用して、悪逆非道の限りを尽くしていた。
レオンの父はこの男を倒すべく臨んだのだが、不意打ちにあい、あえなく力尽きてしまったのだ。
「待て」
ギラギラした眼光の男の前に一人の男が立ちふさがる。父の形見のガウンに身を包んだレオンだ。
クララは木陰から心配そうに見ている。
「誰だ貴様は。怪我せぬうちに立ち去ったほうが身のためだぞ」
男は目を血走らせながら低い、しゃがれた声で威圧する。
「俺は…お前に父親を殺された息子、レオンだ!」
レオンも負けじとにらみつける。
「レオン?その衣装…ハーッハッハッハ!覚えておるぞ。俺が倒した魔術士の坊主だろう?雰囲気からすると賢者になったばかりだな?図星だろう。
そんなケツの青い賢者が金剛賢者の俺に勝てるとでも思ってるのか?悪いことは言わん。今すぐ立ち去れ。」
男はレオンを完全に見下している。
「そんなもの…やってみねぇとわからねぇ!いざ!勝負しろ!」
レオンは父の形見のガウンを脱ぎ捨てる。
「フン。むざむざ犬死にを臨むか。ならば容赦はせぬぞ」
男も書を取り出し、詠唱を始める。
一人、二人…男の分身が五人作られる。そして六人は丁度六芒星の形の布陣を取った。
「行っくぜぇ!」
レオンは怯まず突っ込んでいった。


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